日本の大手企業が軒並み、組合の賃上げ要求に対して満額回答をしています。音頭を取る経団連は「物価高をにらんで」とその理由を示していますが、ここまで賃上げの足並みが揃うと何か他に意図があるのではと勘ぐりたくなります。厚生労働省の資料によると1995年を100とした場合、「1人あたり現金給与総額」の伸びは過去20年(1996年〜2015年)でマイナス0.6%だそうです。この傾向は2023年現在でも大きくは変わらないのではないでしょうか。これほどの長期間にわたって給与水準が上がらなかったことの要因と、いま経団連会員企業はじめ日本の大手企業が給与水準を上げようとすることの真意はどこにあるのでしょうか(ZUU online編集部)。
確かに今年2023年の労使交渉は満額回答や早期妥結が続出する異例の展開となっているようだ。その意味では、単純にこの瞬間のスナップショットを「労働者」という視点で捉えれば喜ばしいことだと言える。だがそれは失われた日本企業の競争力が再び高度成長期並みに高まったからではない。むしろ本当の姿は反対であり、その現実を直視し、認められない日本の弱さこそが、長期にわたって給与水準は上がらず、そしてここに来て賃上げラッシュに一斉に走る要因だ。
厚生労働省の資料「近年の経済成長率と賃金上昇率の動向」の内容、一見すると労働分配率が低下し、賃金を引き上げずに労働者を犠牲にすることで企業は収益を稼ぎ、何とかこの国は経済成長をギリギリ維持してきたという説明をしやすいように整えられている。なるほど、だから賃上げが必要だと使うこともできる。
そもそも今年2023年の労使交渉は端から労働組合側にフォローの風が吹いた。たとえば今年の経済3団体の新年祝賀会で岸田首相は企業経営者に対し、「インフレ率を超える賃上げの実現」を要請した。さらに遡れば、夏の経団連「軽井沢会合」でも、「賃上げは次の成長への投資であり、企業の社会的責任だ。3%以上の賃上げを実現してもらいたい」とも訴えていた。