不動産投資をする上で考えなければならないことは、投資目的と資金規模によって、投資すべき国や物件の種類が変わるということである。
収益をあげる事を投資目的とするのであれば、一般的に下記の2点があげられよう。
①キャピタル・ゲイン(転売目的)狙い
② インカム・ゲイン(賃貸収入目的)狙い
また、個人が投資として考えられる数千万円から数億円程度までの投資なのか、それとも企業の投資規模である数億円から数十億円程度規模なのか、ファンドや機関投資家の投資規模である数十億円から数千億円程度規模なのかによっても変わってくる。今回は、個人が投資を行うことを前提として、数千万円から数億円程度までの投資について、各投資目的に応じて、どのような国のどのような物件が今の状況では投資妙味があるのかを考えてみたい。
キャピタル・ゲイン狙い
ここ10年程度、東南アジアに対する投資が非常に盛んに行われた。東南アジア諸国に対して投資が行われてきた理由は以下の3つである。
(1)将来的な経済成長が期待でき、不動産価格の上昇も大きく期待できる。
(2)経済成長とともに為替が強くなることも予想されるので、不動産価格の上昇のみならず、為替上昇の効果も合わせて得られる可能性が大きい。
(3)価格が安く、投資額が比較的少なくても区分所有マンションを購入する
ことができる。
ただし、ロングステイをすることを目的として日本人に非常に人気のあるマレーシアのマンション価格は、現在3LDK、70~80㎡で3,000万円程度となっており、東京の都心5区を除いたマンションの平均価格に非常に近い所まできている。このような状況を考えると、マレーシアへの投資及び、同様に、フィリピンやインドネシア等への投資についても投資妙味は少ないと考えている。
また次の投資対象と言われるミャンマー、カンボジア、ラオス等については、外国人の不動投資に対する法整備が十分には整っていないのが現状であり、日本の大手上場企業が開発する案件等を除いては、投資することはまだまだリスクが大きいと考えている。アメリカでは、シェールガス効果から、テキサス州の経済が非常に潤っており、人口も増加している。アメリカの不動産会社は、テキサス州の不動産へキャピタル・ゲイン狙いに投資しないとの勧誘を積極的に行っているようであるが、キャピタル・ゲイン狙いは少し無理があると考えている。従って、日本を含めてキャピタル・ゲインを狙っての投資は非常に難しい状況にあると考えている。
インカム・ゲイン狙い
インカム・ゲインでは、日本と米国が面白いと考えている。日本では、東京の中野区、江東区、墨田区、江戸川区、北区、板橋区等の築10年程度までのアパートで、表面利回りが7.5%以上ある物件。アメリカでは、人口流入が激しいテキサス州、ジョージア州等のアパートで表面利回りが8.0%を越えるようなアパートメント等が狙い目である。
居住用賃貸不動産の空室率は、日本では、東京の23区で12.02%(2014年7月期・TAS賃貸住宅レポート)であり、アメリカ全体で、7.50%(2014年6月期・Census Bureau)となっている。アメリカの人口流入が大きい州の中心的な都市では、空室リスクを考慮する必要が殆ど無い状況であり、安心して投資ができる。
東南アジアでは日本人は高級物件に投資を行うことが一般的で、新築時は外国人に貸せれば良い利回りになるかもしれないが、現地の人の所得は未だ十分ではないので、中長期的な賃貸計画を作ることは難しいと考える。
(提供:不動産online)
深井 豊(ふかい・ゆたか)CFP、証券アナリスト、宅地建物取引主任者
ウェルスプランニング株式会社代表取締役、住宅ローンFP相談センター代表。ドイツ銀行で日本株PFをグローバルに提供、またヘッジファンド等で日本株の運用に従事。その後UBSで超富裕層に対するコンサルタント経て、ウェルスプランニング株式会社を設立。会社URL:
http://www.weplan.co.jp/