車購入は期待通りに節税できるか
先述したように車の購入代金は、一定の場合を除いて減価償却費として費用計上することが税法で決められている。減価償却とは、簡単にいうと「購入した費用を数年間に分けて費用として計上すること」だ。減価償却の方法は「定額法」と「定率法」の2つあり、いずれかを選択して所轄税務署長に届け出をした方法で処理する。各償却方法の特徴は、以下の通りだ。
- 定額法:毎年の償却額が一定
- 定率法:はじめの年ほど償却額は大きく、経過年数に伴って減少する
各償却額の計算は、税法で定められた耐用年数に応じた償却率を用いて計算する。
新車の場合
耐用年数は、車両・用途などによって異なるが、経営者が通勤・移動などで使うような普通乗用車の耐用年数は6年だ。例えば、定額法で処理する場合、車の取得価格に償却率を乗じて償却額を計算するが、耐用年数が6年の場合の償却率は0.167となる。仮に1,000万円の車を購入した場合、1年あたりの減価償却額は167万円(1,000万円×0.167=167万円)だ。
中古車の場合
中古車の場合は、経過年数を考慮する必要があるため、耐用年数が新車に比べて短くなるのが特徴だ。具体的には、以下の計算式を用いて耐用年数を計算する。
- 中古車の耐用年数=(耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2%
例えば、2年落ちの中古車(乗用車)の耐用年数は以下の通りだ。
- (6年-2年)+2年×0.2%=3.6年≒4年(1年未満の端数は切り捨て)
耐用年数4年の場合、定額法の償却率は0.250だ。仮に1,000万円で車を購入すると1年あたりの減価償却額は250万円(1,000万円×0.25=250万円)となる。
購入タイミングには注意
年度の途中で購入した場合には、購入した月から期末までの月数で按分することになる。例えば、先の新車の例で、3月決算の会社が1月に購入した場合、167万円を12で按分した額の2ヵ月分のみ計上できるというわけだ。決算が近くなって「利益が出そうだから購入を考える」というケースもあるだろうが、購入のタイミングには注意してほしい。
社用車を購入するときに検討すべきこと
こうしてみると新車に比べて中古車のほうが節税効率は高い。しかしそもそも法人名義で車を買って節税することが、経営上本当に良いかどうかというと難しい。節税以外にも考慮すべき点が多々あることは知っておいて欲しい。
事業への効果があるか
まずは、車を買うことで事業にプラスの効果があるかどうかだ。例えば、業務効率や業績、従業員へのモチベーションなどの向上につながるか。もし経営者用の高級車を買うことで従業員の士気が下がるようなら他の方法で節税を検討するのが良いだろう。
キャッシュフローが悪化しないか
社用車購入によってキャッシュフローが悪化しないか必ず検討しよう。現金でもローンでも、購入費用の支出と回収にはタイムラグがある。目先の節税だけを意識せず、数年間にわたるキャッシュフローもシミュレーションしてみよう。
将来的に車をどうするか
新車でも中古車でも社用車として購入すると固定資産として計上するが、減価償却しながら資産価値が落ちていく。特に中古車の場合、資産の低減速度も早い。ずっと節税し続けたいなら、また買い換えが必要となり、キャッシュフローにも影響する。これらを総合的に考えながら購入の是非を検討することが必要だろう。