この連載の目的は、金融市場での重要イベントの解釈と金融商品の動きをわかりやすく解説することです。市場の動きを左右する重要なイベントとは? 市場はイベントをどのように解釈するのか? そして、いかに反応したか? みなさんの投資に役立つマーケット分析のスケッチになれば幸いです(ロン横浜)。
米4月雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想(エコノミスト予想平均値)を大きく上回り、失業率は歴史的な低水準、平均時給は上昇した。米雇用は引き続き好調だ。インフレの鈍化が一服している現状では、連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を上げる要因ともなりうる。株価は下落してもおかしくないのだが、株式市場はNYダウが546ドル高、債券市場は金利上昇(価格は低下)、日米金利差拡大期待によるドル高と市場はリスクオン(リスク選好)で反応した。なぜ、FRBの利上げに対する警戒感が薄れているのだろうか?
NFPは予想を上回ったがトレンドは下落
米労働省が5月5日の朝8時半(日本時間21時半)に発表した4月の雇用統計では、注目のNFPは前月比25.3万人増と市場予想の18万人を大幅に上回った。失業率は3.4%(前月3.5%)と53年ぶりの低水準(図1)。時間当たり平均賃金は前月比0.5%上昇(前月0.3%上昇)と伸びが加速しており、インフレの一要因でもある賃上げは続いている。
米雇用の底堅さを示すデータだった。米地銀の相次ぐ破綻による金融システム不安で、景況感を示す経済指標に減速が目立ち始めており、リセッション懸念が拡がりつつある。しかし、雇用に関してはコロナ後の人手不足でサービス業を中心にタイトな状況が続いていることを確認した。