特集『Hidden Unicorn~隠れユニコーン企業の野望~』では、新しい資本主義の担い手であるベンチャー企業のトップにインタビューを実施。何を思い事業を運営し、どこにビジネスチャンスを見出しているのか。これまでの変遷を踏まえ、その経営戦略についてさまざまな角度からメスを入れる。

アクシスコンサルティング株式会社は、2023年3月28日に東京証券取引所グロース市場に新規上場したハイエンド人材紹介事業とスキルシェア事業を2本柱とする企業だ。本インタビューでは、代表取締役社長の山尾幸弘氏に同社の企業概要や日本経済の展望、ユニコーンから上場を経た今後の事業展開などについてうかがった。

(取材・執筆・構成=大正谷成晴)

アクシスコンサルティング株式会社
山尾 幸弘(やまお ゆきひろ) ――アクシスコンサルティング株式会社 代表取締役社長
1962年生まれ。味の素ゼネラルフーヅ株式会社(現 味の素AGF株式会社)にて営業・マーケティング業務を担当。1992年国内系エグゼクティブサーチ会社に入社。IT、製造、通信、サービスなどさまざまな業界、大手からスタートアップベンチャーまで、幅広い企業ステージのエグゼクティブサーチを手がける。同社取締役を経て、2002年アクシスコンサルティング設立、代表取締役社長就任。社会や企業の課題解決、価値創造を推進するハイエンド人材が持つ才能・力を社会の隅々まで届けるため、ハイエンド領域の人材紹介事業、スキルシェア事業の複合ソリューションを確立・展開。
アクシスコンサルティング株式会社
2002年4月、東京都千代田区でアクモス株式会社<6888>のグループ会社としてハイエンド人材の紹介事業を目的に設立された。2009年9月、MBO方式により親会社のアクモス株式会社から独立。2016年6月、スキルシェア事業に参入しフリーコンサルサービス「フリーコンサルBiz」の提供開始。

2022年7月には、スキルシェア事業としてスポットコンサルサービス「コンパスシェア」を提供開始。2023年3月28日、東京取引証券所グロース市場に新規上場を果たし現在に至る。

目次

  1. 人材紹介事業とスキルシェア事業を提供する業界唯一の存在
  2. コンサルティング人材を最適に配置し社会や企業の課題解決や価値創造につなげる
  3. 2023年3月28日に東京証券取引所グロース市場に新規上場

人材紹介事業とスキルシェア事業を提供する業界唯一の存在

―― 最初にアクシスコンサルティング株式会社の事業内容や特長をお聞かせください。

アクシスコンサルティング代表取締役社長・山尾幸弘氏(以下、社名・氏名略):弊社は、2002年4月に創業し20年以上になりますが、現在は人材紹介事業とスキルシェア事業の2つの事業で計4つのサービスラインナップを提供しています。

▼アクシスコンサルティング株式会社の事業内容

アクシスコンサルティング株式会社
(画像提供=アクシスコンサルティング株式会社)

人材紹介事業には2つのサービスがあり、1つ目はコンサルティングファーム向けに特化した人材紹介事業の「アクシスコンサルティング」です。創業時からの事業で実績やブランド、ソリューション、ノウハウが凝縮しており、現役コンサルタントの4人に1人が登録するまでに成長しました。約20年で8万人以上の転職志望者を支援してきた弊社グループの主力事業です。

2つ目は、国内でも草分け的な採用・転職支援サービスの「ケンブリッジ・リサーチ研究所」です。2016年にM&Aによりグループ化しました。こちらは、事業会社向けの人材紹介事業でCxO・経営層やデジタル・DX領域などのハイエンド人材、ポストコンサルに強みを持っています。

スキルシェア事業は、フリーランスや副業によるスキルシェアリングのことを指し、ここでも2つのサービスを展開しています。1つ目は、フリーランスのコンサルタントによる、プロジェクト型で経営・事業課題の解決支援するサービス「フリーコンサルBiz」です。ここでは、高度で高い能力を持ったフリーコンサルを支援すると同時に企業に対しては課題解決を支援しています。

2つ目は、2022年7月から導入した「コンパスシェア」です。これは、現役コンサルタントの副業を支援するサービスであり、利用者目線でいうと経営・事業課題に対して現役のコンサルタントの知見を比較的低単価で活用できるのが特徴です。

―― 同業他社に比べたときの優位性、差別化要因をお聞かせください。

「アクシスコンサルティング」に関しては、大手コンサルティングファームに在籍するコンサルタントの4人に1人が登録する人材データベースを保有している点と登録人材と中長期的な関係性を構築していることが強みです。通常、登録されている候補者とのコンタクトは平均3~4ヵ月ですが、弊社の場合は中長期で伴走しながら支援を継続します。例えば過去3年間の決定者実績の約半数は、1年以上フォローしています。またDXやハイエンドのコンサルの領域において、正社員の紹介とスキルシェア事業の複合型ソリューションを提供しているのは、業界内で弊社だけです。これも大きな差別化要因でしょう。

人材との中長期的な関係を構築していくと、やがて人材が事業責任者となり人材活用に関する相談を受けるケースも出てきています。キャリアパートナーがビジネスパートナーへ変換していくケースです。求職者が発注者となり、企業の課題と人材が求めるキャリアニーズに応じて、各サービスを適切なタイミングで柔軟に提供することで継続的に複合ソリューションを提供できる仕組みを当社では、リカーリングビジネスと定義しています。

コンサルティング人材を最適に配置し社会や企業の課題解決や価値創造につなげる

―― 創業から今日までの変遷をお聞かせください。

2002年の創業時は、コンサルティングファーム向けの人材紹介事業からスタートしました。なぜこの領域に着目したのかは、2000年ごろから始まったERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)の導入や業務プロセス改革などのビジネストレンドに伴う大企業からコンサルティングファームへの依頼が増えたことが関係しています。

これによりコンサルティングファームそのものが業態を変革・拡大する時期に重なったことに注目しました。コンサルティングファームは、あらゆる産業セクターに戦略・IT・組織などのソリューションを提供しており、これらの知見を有するコンサルタントが在籍しています。労働人口が減るなか、コンサルタントを中心としたハイエンド人材の流動性は高まると確信し、これに特化した人材紹介事業を始めました。当時は、競合があまりなく弊社が草分け的な存在だったと思います。

―― ビジネスに転換期はありましたか?

創業当時から「人が活きる、人を活かす。」のミッションを掲げ、人的資本の最大化・最適化・再配置を標榜しており、2016年6月に始めたフリーランスの支援事業「フリーコンサルBiz」への参入は大きな出来事でした。それまでは、コンサルティングファーム向けの人材紹介事業に特化していましたが、時代の変遷、働き方の多様化に伴い、新たな事業を始めたのは転換期だと思います。単一ではなく複合型のサービスに転換したことも今の成長につながっています。

―― 御社のミッションをご紹介いただきましたが、事業運営で大事にしていることはありますか?

弊社は、2022年にコーポレートステートメント「あらゆる課題は、人で解決する。」を新たに策定しました。昨今は、人的資本経営が大変注目されていますが、人材を資源ではなく資本として捉え、日本で不足・偏在する高い専門性と能力を持ったコンサルティング人材を最適に配置することはとても大切です。

社会や企業の課題解決や価値創造につなげたり、その価値がシェアされ循環するような社会を作ったりする必要があると考えています。

▼アクシスコンサルティンググループのリカーリング

アクシスコンサルティング株式会社
(画像提供=アクシスコンサルティング株式会社)

人材ニーズの視点で申し上げると、新卒で入社して定年まで勤め上げる就社の時代はすでに終わり、いまは大転職時代を迎えました。今後は、副業、フリーランスなど働き方の多様化、就ミッションの時代になっていくでしょう。弊社は、こうした時代の変遷に対して課題の解決と価値創造のパートナーとして存在することを大切にしています。

一般のエージェントは、顕在化した求人と求職をダイレクトにマッチングするので即時性があります。一線を画したいのは企業との関係性の構築はもちろん、登録者に伴走しライフタイムバリューに関わっていく所存です。これに取り組む一定規模のエージェントは、弊社以外で他にはいません。

2023年3月28日に東京証券取引所グロース市場に新規上場

―― さらなる成長を実現するために、今後の目標や5年後、10年後に目指すべき姿をお聞かせください。

当面は、既存事業を拡大させていく方針です。現状は「現役コンサルタントの4人に1人が登録している」と申し上げましたが、登録者数を増やすことでコンサルティングをもっと身近に感じていただきたいと思います。コンサルティングファーム向けの人材紹介事業は継続しつつ、国内約360万社といわれる事業会社向けにも正社員やフリーランス、副業といった形でコンサルタントを紹介したいと考えています。

その先は、あくまで構想段階ですがデジタルプラットフォームのグローバル展開などデータベースビジネスを活用した領域を検討して参りたいと思います。またコンサルティングファームやSES事業のグループ化など請負事業への参入、プラットフォームのデータビジネスの延長として「to C向けのビジネス」も考えられるでしょう。

――2023年3月28日には東京証券取引所グロース市場に新規上場しました。今後の展望はいかがでしょうか?

当面は足元の事業計画・成長戦略をしっかりと推進して参ります。またDXやハイエンドのコンサル領域に強みがあり、正社員・フリーランスを含めたスキルシェア事業の複合サービスを供給しているのは、業界広といえども弊社がオンリーワンです。

これを推進することで外部のステークホルダーだけでなく弊社にとっても、さらなる展望が開け、しっかりと役割と責任を果たせると認識しています。そのためこれまで以上に優秀な人材の採用や確保、育成にも努めていく次第です。

―― 話が少しそれますが、今興味・関心のある時事的なトピックはありますか?

興味があるのは、人的資本経営です。経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」や副業・兼業の促進に対するガイドラインでは、働き方の多様化が示されています。資本の最適化や再配置、外部人材の登用など、これらはすべて弊社の事業領域に関わることです。副業や兼業、フリーランスの活用を推進していくことで日本社会の発展に寄与していきたく、弊社は真正面から取り組んでいます。

人材ビジネスの大きな転換期になると思っていますので、人的資本経営についてしっかりと捉え、DX、ハイエンド、コンサルの領域において一翼を担いたいという意味で大変関心があります。

―― 最後にZUUonlineの読者にメッセージをお願いします。

2022年に策定した「あらゆる課題は、人で解決する。」というコーポレートステートメントに弊社の思いや方向性を凝縮しました。今後は、ビジネスと人がつながるB to Pの時代になりますから、そこに向け弊社役職員一丸となり取り組んで参ります。

マーケットのなかでコンサルティングファームやコンサルティング人材の活用は大手企業同士の話であり、活用方法がわからない方もいらっしゃると思います。「高コスト」「よくわからない」という声があることも聞いています。

弊社としては、コンサルティングを身近に感じてもらい、課題解決の手段として検討していただけるよう、もっとわかりやすく透明性を高め展開していきたいと思っておりますので、ぜひご活用いただけますと幸いです。国内総DX化といわれ課題待ったなしの状況下、正社員採用のご紹介はもちろんフリーランスや副業もご活用いただき、日本経済を前に進める一翼を担いたいと考えています。そんな弊社の今後に、ぜひ注目してください。