NFT領域であらたな挑戦を続ける|VERBALインタビュー前編
(画像=Iolite)

アーティストVERBAL氏が率いるファッションブランド「AMBUSH」が、NFT領域であらたな挑戦を続ける

——VERBALさんがNFTやメタバースに触れたきっかけは?

VERBAL:僕はもともとVR、つまり仮想空間でライブを行う可能性を探っていた時に、NFTのユーティリティの部分に着目しました。端的にいえば、そこで閃きが生まれたのがきっかけです。

それまで、NFTやブロックチェーンについては聞いたことはあるけども、何のことかわかりませんでした。暗号資産を売買している人や詳しい人は周囲にいたのですが、あまり自分のやっていることとのつながりを感じていなかったのが正直なところです。

少し過去を遡ると、僕は2012年頃からモーションキャプチャースーツの企画・レンタル事業も行っていました。その当時「Skrillex」が上半身だけでアバターを操作していて、それがオランダ発のモーションキャプチャースーツ「Xsense」だと知り、僕も何台か購入しました。

しかし、当時僕たちがやりたかったことと技術者のできることが国内で一致しなかったんですね。そんな時にさまざまな点で一致したフランスの方と出会い、モーションキャプチャースーツを使ったいろいろな演出を僕が所属する音楽グループ・m-floのライブで実験的に行いました。

その体験やノウハウがきっかけで、「仮想空間のなかでもライブができるじゃん!」と感じましたね。

世界中の人たちと仮想空間のなかでつながれると感銘を受け、ちょうど注力し始めた時に新型コロナウイルスが感染拡大しました。

コロナ禍でフィジカルなライブができなくなり、バーチャル空間の活用を模索していたタイミングで、ひょんなきっかけから友人にNFTを教えてもらいエアドロップしてもらいました。

それが2020年の年末から2021年にかけてでしたね。手にしたタイミングとしては後発組に分類されると思うのですが、そこから「NFTとは何だろう」と興味が湧いてきました。

『これを持っているとトークンゲートされた部屋に入れる』『これを持っているとディセントラランドのような空間でスニーカーを履くことができる』などを知って、「そんなことができるの! ?」と驚きました。

従来のゲームでも似たようなスキームがあるのは知っていたのですが、それを分散型でトレードや分配ができるという発想はすごいなと思いましたね。

アクセスパスのようなチケットにもできるし、おまけを付けることができるなど、可能性を感じました。そこから閃きが生まれ、ハマっていきました。

——同じm-floのメンバーである☆TakuTakahashiさんともNFTについて話しますか?

VERBAL:TakuももちろんNFTが好きで、みている角度は高いなと思います。僕が立ち上げたAMBUSH®(アンブッシュ)というブランドのNFTをエアドロップしたのですが、その際に「最近はカルダノ(Cardano)っていう暗号資産を買ったんだよね」という話が出て、どちらかというと暗号資産投資の方に関心が高いのかなとは感じました(笑)。

特定の暗号資産に関しては詳しいと思うので、今度じっくり話を聞かせてもらおうと思います。

NFT、メタバースでは自分のアバターと周りとの「差別化」を意識するようになる。そのために必要なアイテムが「ファッション」——

——2022年にNFTを発売してわずか2分で完売。何か気をつけたことなどは?

VERBAL:タイミングが良かったということに尽きるかなと。あとは販売までにかけた準備とケアを慎重に行った点は良かったのかなと思いますね。

というのも、日本のプロジェクト、ブランドですので、国内法に準拠する必要があります。エアドロップにしても、行う際にアナウンスをしないと課税の対象になる可能性があるので気をつけました。

VERBAL
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また、「ファッションNFT」という位置付けで行っていましたので、ファッション業界からの注目もありました。NFTやメタバースに対する知識が追いついていない方には直接会ったりZoomなどを利用してウォレットの使い方等を解説させていただきました。

こうしたオンボーディングに加え、既存のWeb3.0領域に属する人たちへの訴えなどが十分にできた段階でリリースできたのも大きかったのではないでしょうか。

あと、僕たちが出したNFTは「POW!® Reboot」というものなのですが、実はAMBUSH®も2008年に「POW!® Ring」というものからスタートしたんですね。

その時とまったく同じデザインのNFTは、特別ブランドというものを意識して始めたわけではなくて、妻でデザイナーのYOONと一緒に「面白いものができたからプレゼントしよう」という発想や流れから生まれました。

「POW!® Reboot」を出す前に99個のNFTをギフティングでエアドロップしたのですが、それがきっかけで「それって何?」「NFTをリリースするの?」といった声もいただきました。そうした反響があった上でのNFTリリースでしたので、流れが良かったのかなと思います。

——「ファッション×NFT」のメリット・デメリットとは?

VERBAL:わかりやすいところでいえば、たとえば類似品が出たとしてもそれがオフィシャルでなければ偽物だと判断できる点はNFTのメリットでしょう。また、デザインの自由度が高い点は貴重だと思います。

ファッション業界にはトラディショナルな部分があって、僕たちがミラノやパリコレなどに行くとある程度お決まりごとみたいなものも存在します。

その点、Web3.0の文脈でのファッションというと、全くあたらしいクリエイターの人たちを迎え入れることになるので面白くなるのかなと感じています。

たとえば、メタバースに入った時というのは重力の縛りを受けないので、サイズ感や面白い形などを表現できると思います。

もともと、ファッションも19世紀中頃まではオートクチュールとレディ・トゥ・ウェアの境目はありませんでした。

強いていえば、お金持ちの人が高額な料金を支払って職人に作ってもらった派手な服と、そうではない人たちが鮮やかでない服をユーティリティベースで、仕事がしやすいから着るというだけで分かれていました。NFTとの関連性でいうと、今はファッションがスタートした時と同様に基準がないレベルだと思いますので、エキサイティングな時期だと思います。

——NFTとファッションを掛け合わせた時の課題を感じる部分は?

VERBAL:やはり複雑なところですかね。どうしてもファッション業界の人に話をしてみてもまだ理解しきれていなさそうだなと感じます。その反面、いろいろな表現を交えたり、さまざまなメディアを通して技術を入れていこうとする方々もいます。

僕自身もそういった方々には極力Web3.0領域の難しい用語を交えないようにして話をするよう努力しています。

Profile│m-floでの活動の他、超豪華ラップグループTERIYAKI BOYZ®、新たにスタートしたクリエイティブユニット PKCZ® 、HONEST BOYZ® のメンバーとしても知られ、独自のコネクションを活かし数多くのアーティストとコラボレーション。Pharrell、Kanye West、AFROJACK など海外のアーティストとも交流が深い。近年はDJとしても飛躍を遂げ、そのスタイルはファッション界からの注目も熱い。デザイナーのYOONと共に2008年にスタートしたジュエリーブランド ”AMBUSH®” ではクリエイティブディレクションを手掛け、これまでに Louis Vuitton (Kim Jones)、SACAI、UNDERCOVERなど錚々たるブランドともコラボレーション作品を発表している。2015年にはファッションニュースサイトBusiness of Fashion にて【BoF500〜世界のファッション業界人トップ500】の一組に選抜。

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