新型コロナウイルスによる外国人入国者への水際対策が解除され、外国人観光客の増加が顕著になってきました。今後は外国人観光客だけでなく、外国人労働者や外国人留学生の来日増加も期待されます。マンションオーナーにとっては入居者の裾野を広げるチャンスです。そこで、外国人を入居させる場合の注意点について解説します。
コロナが落ち着き、インバウンドが戻ってきた
新型コロナウイルスの感染者数が落ち着き、インバウンド需要が急速な回復を見せています。政府は2023年4月29日午前0時以降、水際対策を解除する措置を実施しました。
これによりすべての入国者において陰性証明書やワクチン接種証明書の提出が不要となりました。また、中国からの直行旅客便での入国者に対する「サンプル検査」も有症状者への入国時検査に変更されるなど、大幅に制限が緩和された形です。この措置により、大幅に減少していた中国からの入国者が今後回復することが期待できます。
そして、2023年5月8日から新型コロナウイルスは感染症法上の位置づけが第5類に変更になりました。5類になると季節性インフルエンザと同じ扱いになり、国民のコロナに対する意識も変わりそうです。
さらに5月5日には世界保健機構(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の終了を宣言しました。今後は世界的にアフターコロナの社会活動が活発になることが予想されることから、外国人観光客もいずれコロナ前の水準を回復することが期待されます。
外国人労働者と留学生の動向
マンションオーナーにとって気になるのが外国人労働者と留学生の動向です。厚生労働省が発表した「外国人雇用状況の届出状況まとめ」によると、2022年10月末現在で外国人労働者の数は182万2,725人で、前年同時期と比べて9万5,504人増加しています。
また、外国人労働者を雇用する事業所の数も29万8,790箇所と、前年比で1万3,710箇所増加しました。労働者数、事業所数ともに届け出が義務化されて以降、最多を更新しています。今後少子高齢化で人手不足が深刻化すれば、外国人労働者を受け入れる事業所はさらに増えそうです。
一方、独立行政法人日本学生支援機構が行った「2022(令和4)年度外国人留学生在籍状況調査」によると、2022年5月1日現在の留学生総数は23万1,146人で前年比1万1,298人の減少となっています。これは留学生の数で最も多い中国人が前年比1万373人減少、2番目に多いベトナム人が1万2,064人減少したのが響いています。
今後は新型コロナウイルスによる入国規制の解除で中国人留学生が再び増加することが予想されますので、マンション経営には追い風になるでしょう。
来日目的別の不動産需要
外国人観光客 | ホテル、旅館、民泊、ウィークリーマンション |
---|---|
外国人労働者(単身) | アパート、マンション |
外国人労働者(ファミリー) | アパート、マンション、一戸建て |
留学生 | アパート、マンション |
来日の目的によって需要が増える不動産の物件形態は異なります。外国人観光客の増加ではホテル・旅館が大きな恩恵を受けます。マンションでも民泊を行い、外国人を受け入れる戦略は可能ですが、物件によっては管理組合が民泊を禁止しているケースがあるので、すべてのオーナーに恩恵が及ぶわけではありません。
一方で外国人労働者と留学生は一定期間定住するので、マンションなどの居住用住宅が必要です。単身の労働者や留学生が一戸建てに住むことは考えにくいので、間取りとしてはワンルームが需要取り込みには有利になります。あるいは家族ごと定住する場合は一戸建てに住む人もいるでしょう。
外国人は築年数など気にしない傾向があり、受け入れてくれる物件数が限られるため設備が充実していなくても入居してくれるというメリットがあります。空室が埋まらなくて悩んでいるオーナーなら受け入れを検討するのもよいでしょう。
外国人労働者や留学生の入国増加はワンルーム物件の空室解消に大きく貢献しそうです。
外国人を入居させる場合の注意点
外国人の需要を取り込むことは必要ですが、入居させるには注意すべき点が多くあります。主に以下の点に考慮して受け入れを検討したほうがよいでしょう。
家賃滞納リスクに注意する
まず家賃滞納リスクに注意しなければなりません。日本に来ても仕事に馴染めず、すぐ帰国してしまうケースも考えられます。入居審査では年収や勤務先、勤続年数などから家賃支払い能力を慎重に見極める必要があります。留学生の場合は学校名やアルバイト先での勤務状況などから判断することになります。
保証人が必要
外国人の入居には保証人が必要です。保証人は日本人になってもらうのが一般的です。労働者の場合は勤務先の上司や人事担当者、留学生の場合は通っている学校の担任や事務局員などになってもらえればオーナーとしては安心できます。また、入居者が保証会社に保証人になってもらうケースもあります。
入居条件やルールを解るように説明する
初めて日本に来て部屋を借りる外国人もいます。入居条件や居住ルールなどは相手が納得できるように解りやすく説明することが大事です。とくに敷金・礼金・更新料は外国人では理解しにくい日本独自のルールなので、丁寧な説明が求められます。
また、人によっては部屋に招いた友人をそのまま住まわせて、いつのまにか同居人になっていたというケースもあるので注意が必要です。
近隣住民とのトラブルに注意する
外国人と日本人では生活習慣が違います。海外では常識であっても日本では非常識になる事柄は多々あるので入居前にきちんと説明しておくことが必要です。とくに外国人は夜遅い時間でも友人を招いて騒ぐこともあるので騒音トラブルになる恐れがあります。
ゴミ出しも日本人ほど丁寧に分別できない可能性が高いです。自主管理の場合は入居者と接する機会があるため、簡単な外国語の会話は身に着けておいたほうがよいでしょう。
外国人入居者向けの保証会社もある
言語の問題などで外国人入居者に対応するのが難しい場合は、外国人入居者専門の保証会社があるので利用するのも1つの方法です。
保証会社の家賃保証システムを利用すると、家賃・共益費・管理費のほか町会費や退去時の原状回復費用も保証してくれます(保証内容は保証会社によって多少異なる場合があります)。また、入居生活で発生するトラブルに際してもオーナーをサポートしてくれるので安心です。
対応できる言語は、英語、中国語、韓国語、ベトナム語、タガログ語(フィリピン)、ネパール語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語など保証会社ごとに決まっています。
入居者の裾野を広げて入居率を高めよう
国際都市である東京では外国人入居者を受け入れることによって、入居者の裾野が大きく広がります。一戸建ての需要はまだまだ日本人入居者が多数派ですが、アパート・マンションでは外国人が住んでいるのが当たり前の時代になりました。
とくにワンルーム物件では今後も外国人労働者や留学生の受け入れが空室解消の有効な対策になりそうです。退去者が出てもすぐに日本人の入居希望者が見つかるような好立地物件は別として、空室がなかなか埋まらない物件であれば、外国人の受け入れを検討するのもよいでしょう。
今後日本の人口が確実に減少することを考えると、マンションオーナーにとって外国人入居者の取り込みは必要不可欠な時代になったといえます。可能な限り外国人入居者を受け入れ、入居率を高めることが求められます。
(提供:Incomepress )
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