

築年数はマンション価格の決定に大きく影響します。このことに関する理解不足は、購入や売却時の交渉に不利となるため注意が必要です。この記事では、築年数とマンション価格の関係に加え、賃料やマンションの寿命についても解説します。
目次
1.マンション価格は築年数ごとにどれだけ下落するのか?

まずは、市場で取引されているマンションの築年数と資産価値の関係を確認していきます。
1-1.築年数別の売却価格
東日本不動産流通機構が公表しているデータによると、首都圏の中古マンションの1㎡あたりの単価は、築30年ごろまで一定の割合で下落し、31~35年頃に底打ちする傾向が見られます。

1-2.築年数別のマンション価格の下落率
新規に売り出されたマンション(新規登録物件)の平米単価を基準に、築0~5年を100%とした場合の下落率を確認すると、築10年で約16%、築20年で約35%の下落が見られます。さらに築26~30年で半分以下となります。
築年数 | 価格 | 平米単価 | 下落率 |
---|---|---|---|
0~5年 | 7490万円 | 134.86万円 | ー |
6~10年 | 6393万円 | 112.79万円 | 16.37% |
11~15年 | 6226万円 | 100.20万円 | 25.70% |
16~20年 | 5654万円 | 87.66万円 | 35.00% |
21~25年 | 5199万円 | 77.42万円 | 42.59% |
26~30年 | 3672万円 | 58.97万円 | 56.27% |
31~35年 | 2356万円 | 47.69万円 | 64.64% |
36~40年 | 2779万円 | 59.18万円 | 56.12% |
41年 | 2810万円 | 56.25万円 | 58.29% |
マンション価格は個別性が高く、築年数が経過しても価値が下がらないどころか購入時よりも高い金額で売却できる場合もあります。しかし、一般的には築年数の経過とともに資産価値は下落する点は理解しておきましょう。
1-3.市場で取引されている物件の平均築年数
2024年の首都圏の中古マンション市場では、成約した物件のうち30%以上が築31年以上の物件となっています。

2024年の成約物件の平均築年数は24.53年、新規登録物件の平均築年数は30.22年となっています。トレンドとしても平均築年数は上昇基調にあると言えます。

2.築年数以外でマンション価格を形成する要素とは?

築年数とマンション価格には一定の相関性があることは間違いありませんが、マンション価格を形成する要因は築年数だけではありません。ここでは、築年数以外でのマンション価格を構成する主な要素を説明します。
2-1.立地
立地は入居者の集めやすさに大きな影響を与え、価格にも反映されやすい傾向があります。首都圏では特に、駅からの距離が重視されます。
2-2.面積
基本的に面積が広くなるほど物件価格は上がります。面積が違う物件の価格を比較する際には1㎡あたりの単価がよく使用されます。
2-3.間取り
単身者はワンルーム、子どもがいる夫婦は2LDKといった具合に、マンションは間取りによって入居者のターゲットが変わります。エリアによって間取りの需要は異なりますが、学生や若い会社員が多く住んでいる首都圏はワンルームタイプの需要が安定しています。東京都の予測によると、1世帯あたりの人員は2020年の1.92名から2045年には1.79人に減少する見通しで、ワンルームタイプの需要はますます拡大することが予想されます。
参考:「東京都世帯数の予測」の概要(東京都庁)
2-4.管理状態
管理状態が悪いと、大規模修繕等が必要となるリスクが高まり、価格が下落しやすくなります。一方で管理状態が良い物件は比較的安心して購入することができるため、物件価格を維持しやすくなります。
3.価値が落ちにくいマンションの条件とは?

マンション価格の主な決定要因を踏まえた上で、ここからは築年数が古くなったとしても価格が下がりづらいマンションの特徴を解説します。
3-1.好立地である
入居の需要が安定しており、銀行からの借入れもしやすい好立地物件は、価格が下落しづらい傾向にあります。首都圏では特に最寄り駅から徒歩10分以内であることや、主要駅へのアクセスが良いことが重視されます。また再開発エリアなど、周辺環境が向上しているエリアも価格が維持されやすくなります。
3-2.管理状態が良い
古くなった設備を適切に切り替えている物件は、経年劣化の影響を抑制することができます。購入する専有部分の部屋だけでなく、エレベーターやエントランスなどの共有部分もきちんと確認するようにしましょう。
3-3.マンションにブランド価値がある
デベロッパーがブランドシリーズとして建設している「ブランドマンション」は、立地選定や建物の品質管理の基準の高さが一定程度担保されていることが期待でき、価格が落ちにくい傾向にあります。
3-4.新耐震基準を満たしている
マンションの耐震基準は、1981年を境に「新耐震基準」と「旧耐震基準」に分かれます。
新耐震基準は、1981年以降に建てられた建築基準法の耐震基準を満たすマンションのことです。新耐震基準では、「震度6強以上の地震でも倒壊しない」とされています。
一方、旧耐震基準は、建築基準法に定める耐震基準が強化される前に建築されたマンションです。耐震性が不十分なマンションが多く、大きな地震が起こった場合に倒壊する恐れがあります。
建築年が1981年前後で建物の耐震基準に大きな違いがあることを認識し、新耐震基準を満たした安心度が高いマンションを選択するようにしましょう。
参考:住宅・建築物の耐震化について(国土交通省)
3-5.修繕積立金の管理に問題がない
大規模修繕は一般に12年周期に行われます。1回目、2回目と資金的な問題なく大規模修繕を重ねているマンションは修繕積立金を適切に管理されていると考えられやすくなります。
3-6.設備の更新が適切に行われている
更新が適切に行われている設備は突発的な修繕リスクが低く、入居付けにも良い影響を与えます。そのため、中古であっても安心して購入されやすく、資産価値が落ちにくい傾向にあります。
4.適切に管理されているマンションの寿命は長い

4-1.マンションの法定耐用年数
マンションの寿命を判断する上で、一つの基準となるのが「法定耐用年数」です。法定耐用年数は、国が定めた固定資産の使用可能年数で、減価償却費の計算に用いられます。
鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションは、法定耐用年数が47年と定められています。
しかし、47年を超えても、マンションの寿命が尽きるとは限りません。
4-2.マンションの物理的寿命
国土交通省の資料によると、固定資産台帳の滅失データをもとに建物の平均寿命を推計した結果、RC系住宅の寿命は68年という結論を出しています。同じく国土交通省の別資料で紹介されている研究例では、鉄筋コンクリ-ト造のマンションの物理的寿命は117年と推定しているものもあります。
修繕・メンテナンスを適切に実施することで、法定耐用年数よりも長く稼働できる可能性は十分にあるといえるでしょう。
参考:
期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について(国土交通省)
「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書 取りまとめ後の取組紹介(国土交通省)
5.家賃の下落率は築20年を目安に下げ止まり傾向

不動産は個別性の高い資産のため、賃料下落率も物件によって異なりますが、一般的に、マンションの賃料下落率は「年率換算で1%程度」といわれています。
三井住友トラスト基礎研究所のレポートによれば、築年数の経過によるマンション賃料の下落には「築3~10年」「築11~20年」「築21年以降」の3つのフェーズがあります。「シングルタイプ(18㎡以上30㎡未満)」と「コンパクトタイプ(30㎡以上60㎡未満)」の賃料下落率(年率)は以下の通りです。
タイプ | 築3~10年 | 築11~20年 | 築21年以降 |
---|---|---|---|
シングル | 約1.7% | 約0.6% | 約0.1% |
コンパクト | 約2.2% | 約0.9% | 約0.7% |
シングルとコンパクトのどちらも、築年数が経過するほど賃料下落率は緩やかになっています。特にシングルは、築21年以降は賃料が下げ止まる傾向にあります。
6.まとめ

マンション価格は築年数の影響を大きく受けますが、管理状態や立地、ブランド力など他の要素次第で価格の下落を抑制することができます。また管理状態が良いマンションは耐用年数より長く利用でき、築20年以降は家賃も安定する傾向があります。価格維持力の強い物件を見定め、購入後は価格に一喜一憂せずに長期保有で家賃収入を得ることがおすすめです。
(提供:Dear Reicious Online)
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