マンション経営では、マンションの築年数によって資産価値や収益性などが変わってきます。これからマンション経営を始めるなら、築年数は何年の物件がよいのでしょうか。本記事では、マンションの築年数と資産価値、賃料、耐震性の関係やマンション寿命について解説します。
マンションの築年数と資産価値の関係
まずは、マンションの築年数と資産価値の関係を確認していきましょう。
築30年で新築時の半分以下に下落する
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の「首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況(2022年7~9月)」によると、東京都区部の築年帯別のマンション成約状況は以下の通りです。
築年数 | ㎡単価 | 資産価値の推移 | 下落率 |
---|---|---|---|
~築5年 | 140.3万円 | 100% | - |
~築10年 | 117.3万円 | 83.6% | 16.4% |
~築15年 | 113.5万円 | 80.8% | 2.8% |
~築20年 | 105.4万円 | 75.1% | 5.7% |
~築25年 | 93.9万円 | 66.9% | 8.2% |
~築30年 | 78.0万円 | 55.5% | 11.4% |
築30年~ | 67.3万円 | 47.9% | 7.6% |
マンションの資産価値は、築5年までを基準にすると築10年で約15%、築20年で約25%下落しています。その後も築年数が経過するほど資産価値は低下し、築30年以上になると半分以下になります。
マンションは個別性が高いため、築年数が経過しても価値が下がらない物件もあるでしょう。しかし、築年数の経過とともに資産価値は下落し、築30年で新築時の半分以下に下落するのが一般的です。
下落率が緩やかになるタイミング
東京都区部の資産価値の下落率をみると、築11~15年が2.8%、築16~20年が5.7%と比較的緩やかです。一方で、築5~10年は16.4%、築20年以降は5年ごとに8~11%程度と下落率は大きくなっています。
この結果から、経年によるマンションの資産価値下落については、「築10年」「築20年」が分岐点となるといえるでしょう。
マンションの築年数と賃料の関係
次に、マンションの築年数と賃料の関係について確認していきましょう。
平均下落率は年率1%程度
一般的に、マンションの賃料下落率は「年率換算で1%程度」といわれています。三井住友トラスト基礎研究所のレポートにおいても、「新築時の賃料を基準に築25年までの賃料下落率を平均すると概ね1%前後になる」との結果が出ています。
もちろん、不動産は個別性の高い資産であるため、物件によって賃料下落率は異なります。しかし、経年によるマンションの賃料下落率をざっくりと把握したい場合は、「1年ごとに1%程度下がる」と覚えておくといいでしょう。
賃料下落には3つのフェーズがある
三井住友トラスト基礎研究所のレポートによれば、築年数の経過によるマンション賃料の下落には「築3~10年」「築11~20年」「築21年以降」の3つのフェーズがあります。「シングルタイプ(18㎡以上30㎡未満)」と「コンパクトタイプ(30㎡以上60㎡未満)」の賃料下落率(年率)は以下の通りです。
築3~10年 | 築11~20年 | 築21年以降 | |
---|---|---|---|
シングル | 約1.7% | 約0.6% | 約0.1% |
コンパクト | 約2.2% | 約0.9% | 約0.7% |
シングルとコンパクトのどちらも、築年数が経過するほど賃料下落率は緩やかになっています。特にシングルは、築21年以降は賃料が下げ止まる傾向にあります。マンション経営では、築20年までの賃料下落をいかに抑えるかがポイントになるでしょう。
マンションの築年数と耐震性
マンション経営には災害リスクがあるため、地震への対策も重要です。ここでは、マンションの築年数と耐震性の関係について解説します。
新耐震基準と旧耐震基準
マンションは建築年によって、「新耐震基準」と「旧耐震基準」の2つに分かれます。
新耐震基準は、1981年以降に建てられた建築基準法の耐震基準を満たすマンションのことです。新耐震基準では、「震度6強以上の地震でも倒壊しない」とされています。
一方、旧耐震基準は、建築基準法に定める耐震基準が強化される前に建築されたマンションです。耐震性が不十分なマンションが多く、大きな地震が起こった場合に倒壊する恐れがあります。
マンション経営で中古物件を選ぶ場合は、必ず建築年を確認して旧耐震基準のマンションは避けましょう。新築であれば新耐震基準を満たしており、建物も新しいため、安心度が高いといえるでしょう。
マンションの寿命は築何年?
マンション経営は長期にわたって家賃収入を得られるのが魅力ですが、何年ぐらい稼働できるのでしょうか。築年数とマンション寿命の関係を確認していきましょう。
法定耐用年数は47年
マンション寿命を判断する上で、まず基準となるのが「法定耐用年数」です。法定耐用年数とは、国が定めた固定資産の使用可能年数のことで、減価償却費を算出する際に使用します。
鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションは、法定耐用年数が47年と定められています。定期的に適切な修繕・メンテナンスを行えば、物理的には47年稼働できると考えられます。
「マンション寿命は100年以上」とする研究もある
国土交通省の資料によれば、固定資産台帳の滅失データをもとに建物の平均寿命を推計した結果、RC系住宅の寿命は68年という結論を出しています。また、RC造のマンションについては、「マンション寿命は100年以上」とする研究もあります。
修繕・メンテナンスを適切に実施すれば、法定耐用年数よりもさらに長く稼働できる可能性もあるでしょう。
マンション経営を始めるなら築年数は何年がよいのか
ここまでの内容を踏まえて、マンション経営を始めるなら築年数は何年がよいのかを見ていきましょう。
長期保有なら新築マンションがおすすめ
長期にわたって保有を続けるなら、新築マンションがおすすめです。
マンション経営で最も避けたいのは「空室リスク」です。物件を購入しても、入居者がいなければ家賃は入ってきません。新築は建物や設備が新しく、人気が高いので、入居者を見つけやすいでしょう。また、しばらくは大規模な修繕が不要で、修繕費用を抑えられるのも魅力といえます。
新築ブランドマンションは資産価値が落ちにくい
新築マンションには「新築」というプレミア価値があるため、一度入居者が住んで中古に変わると、一般的には資産価値が20%程度下がるといわれています。
ただし、資産価値の下落率は物件によって異なります。特に、品質の高い「ブランドマンション」は資産価値が落ちにくい傾向にあります。
経年によって資産価値や賃料は新築時より下がるかもしれませんが、品質の高いマンションを選ぶことで下落率を抑えることは可能です。
短期間で売却するなら新築は避ける
もし短期間での売却を想定しているなら、新築マンションは避けたほうがいいでしょう。
上述したように、新築は中古に変わることで資産価値の下落幅が大きい傾向にあります。そのため、短期で売却すると売却損が発生する可能性が高くなります。新築マンションに投資するなら、安定収入を得ることを目的に長期保有することが大切です。
中古マンションは優良物件を見つけるのが難しい
中古マンションは、築年数によっては資産価値や賃料の下落率が緩やかになります。優良物件に投資できれば、安定した利益が期待できるでしょう。
しかし、中古物件は流通戸数が膨大で、初心者が優良物件を見つけるのは簡単ではありません。物件選びを間違えれば、購入後に資産価値や賃料が下がり、大きな損失が生じるかもしれません。また、なかなか買い手が見つからず、売るに売れない状態に陥る可能性もあります。
長期保有が前提であれば、空室リスクが低く、長く稼働できる新築マンションのほうが成功率を上げられるでしょう。
まとめ
マンションは、築年数の経過に応じて資産価値や賃料が変化します。資産価値は築10年までと築20年以降、賃料は築3~10年の下落率が大きい傾向にありますが、物件選びを工夫することで下落率を抑えることは可能です。
これからマンション経営を始めるなら、品質の高い新築マンションへの投資を検討してみてはいかがでしょうか。
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