AIやIoTをはじめ、今では多くの業界がデジタル技術を活用している。その一方でIT人材は需給のバランスが崩れており、すでに数十万人が不足している。なぜ日本は人材不足に直面しているのか、その理由を押さえて中小企業の戦略や対策を考えてみよう。

目次

  1. IT人材不足は最大79万人に達する見込み
  2. なぜIT人材は不足しているのか?日本特有の根深い理由
    1. あらゆる業界でのIT需要の増加
    2. 少子高齢化による労働人口減少
    3. ブラック労働のイメージが広がっている
  3. 中小企業のIT人材戦略とは?多角的な視点での取り組みが必要
    1. 柔軟な視点で採用範囲や採用方法を見直す
    2. 働き方を含めた待遇面を改善する
    3. DX化を進めて社内の意識を統一する
    4. 業務効率化・コスト削減に取り組む
  4. アウトソーシングも有効?気になるコストと活用のポイント
    1. アウトソーシングと社内育成はどちらが効率的なのか?
    2. 全ての業務を外注することは難しい
  5. 高度なIT人材はフリーランスにも多い
  6. 経営が回らなくなる前に早めのIT人材対策を
IT人材不足の危機!中小企業が人材戦争で勝つための急げる対策
(画像=Monet/stock.adobe.com)

IT人材不足は最大79万人に達する見込み

経済産業省の資料によると、日本のIT人材は2015年時点で不足しており、2030年の不足数は最大79万人に達すると試算されている。

時期IT人材の不足数
2015年17万700人
2020年29万3,499人
2023年37万4,564人
IT人材不足は最大79万人に達する見込み
(引用:経済産業省「IT人材育成の状況等について」)

IT人材のニーズは今後も増えると予想されるが、人材供給は2019年から減少する見込みだ。つまり、IT人材の獲得競争はさらに激化するため、採用コストが限られた中小企業はますます苦境に立たされる。

デジタル技術を活用して持続的な成長を遂げるには、早めに危機感をもってIT人材戦略を考える必要がある。

なぜIT人材は不足しているのか?日本特有の根深い理由

IT分野の技術はハイスピードで進化しており、ニーズやトレンドの変化が激しい。たった数年で知識や技術が古くなることもあるため、他業界の人材に比べるとそもそも育成が難しいだろう。

これはどの国にも共通する課題だが、日本特有の理由としてはどのような背景があるだろうか。

あらゆる業界でのIT需要の増加

一見するとデジタル技術とは無縁に思える業界でも、IT化やDX化は進んでいる。

例えば、農業ではロボットを活用した生産、建設業ではドローンによる現場確認のように、デジタル技術はさまざまな業務に導入できる。製品情報や顧客情報などをもとに、AIによる経営分析を行っている企業も珍しくない。

日本には多様な産業があるからこそ、IT人材の需要は急速に拡大している。手軽に扱えるDXツールなども登場しているが、そもそも適切な運用管理や社内教育をする人材がいなければ、有効活用は難しいだろう。

少子高齢化による労働人口減少

日本は少子高齢化に直面しており、2011年からは人口自体も減少している。このままの状態が続けば、あらゆる業界で労働人口が不足することは簡単に想像できる。

中でもIT人材は、高校教育などの育成環境が整っていない。また、IT人材の給与水準が低い影響で、優秀な日本人が海外に流出したり、海外人材の獲得が難しかったりする状況も懸念点だろう。

少なくとも、少子高齢化は2045年まで進むことが予想されているため、IT人材の供給量は伸びないと考えられる。

ブラック労働のイメージが広がっている

国内の労働人口が減少しても、求職者が増えれば状況は改善するはずだ。しかし、IT業界は多重下請けの仕組みが多いため、低賃金かつ長時間労働をしているイメージが残っている。

実態は企業によって異なるが、ブラック労働のイメージが業界全体で払しょくされない限りは、多くの人材を集めることは難しい。