中小企業のIT人材戦略とは?多角的な視点での取り組みが必要
ここまでの内容を踏まえて、経営資源が限られた中小企業はどのような戦略をとれるだろうか。多角的な視点での取り組みが必要になるため、優先事項を一つずつ確認していこう。
柔軟な視点で採用範囲や採用方法を見直す
IT人材獲得のライバルには、ブランドのある大企業や外国企業も含まれる。そのため、よく見られる従来の採用活動では(求人サイトや求人情報誌など)、優秀な人材に注目されることは難しい。
大企業や外国企業に打ち勝つには、採用範囲や採用方法の抜本的な見直しが必要になるだろう。
<採用範囲を見直す例>
・採用年齢を40代まで引き上げる
・年齢の条件を撤廃し、スキル面で応募をかける
・未経験者や外国人の採用枠を増やす
<採用方法を見直す例>
・求職者に直接アプローチをする(ダイレクトリクルーティング)
・社員や関係者に紹介してもらう(リファラル採用)
・一旦離職した人材を再雇用する(アムルナイ採用)
上記のような方法であれば、広告掲載などに多額のコストをかける必要はない。求める人材像を明確にした上で、採用範囲・採用方法を柔軟に考えてみよう。
働き方を含めた待遇面を改善する
給与や福利厚生などの待遇面は、ほとんどの求職者が重視する情報だろう。そのため、業務に合わせて待遇面を改善するだけで、求職者がもつ企業イメージは変わってくる。
財務的に賃金の引き上げが難しい場合は、政府が推進する「働き方改革」に取り組みたい。例えば、テレワークなどの導入によって働きやすい環境になれば、賃金水準が変わらなくても求職者にはメリットになる。
<求職者にアピールできる働き方改革の例>
・テレワークやフレックスタイム制を導入する
・育児や介護を対象にした時短勤務制度を導入する
・退職者に対して、同一の職務や階級に戻れる制度をつくる
上記のような制度は、既存社員のモチベーション向上にもつながるため、無理のない範囲で導入を検討しよう。
DX化を進めて社内の意識を統一する
上層部を中心にDX化を進めて、社内の意識を統一するのも一つの手だ。効果が分かりやすいツールを導入し、業務負担が軽くなる光景を実際に見せれば、多くの人材がデジタル技術に興味をもつかもしれない。
ただし、部署間での連携が必要なツールや、操作が難しい端末デバイスなどを選ぶと、大きな混乱を招くリスクがある。既存システムとの兼ね合いもあるため、導入するツールは慎重に検討しよう。
業務効率化・コスト削減に取り組む
上記のような施策に取り組んでも、採用・育成できるIT人材には限りがある。十分な人材を確保するハードルは高いため、必要な人材数を減らすことも考えたい。
例えば、運用に多くの人材を割いているレガシーシステム(※)からの脱却は、業務効率化やコスト削減につながる。手が空いたIT人材を他の業務に回し、浮いたコストで新たな人材を採用すれば、人材不足が一気に解消する可能性もある。
(※)古い技術のみで構築された非効率なシステムのこと。