データと現場の声で探る不動産市場の今

今年1~3月、コロナ禍以来3年ぶりに行動制限のない繁忙期を迎え、賃貸ではほぼ全国的に業況が改善しました。学生や社会人、留学生の動きが活発化したほか、ファミリー層の住み替えも依然旺盛です。そんな直近の不動産市場を、今回は賃貸を中心にデータと仲介現場のリアルな声を交えながら解説していきます。

目次

  1. 【賃貸】3年ぶりに行動制限のない繁忙期。賃貸の業況DIはほぼ全国的に上昇。
  2. 業況改善の要因は人口の都心回帰。東京は特に鮮明、大阪でも。
  3. 募集家賃は全国的に上昇傾向。東京・大阪など全面積帯で前年を超えるエリアが多数。

【賃貸】

3年ぶりに行動制限のない繁忙期。賃貸の業況DIはほぼ全国的に上昇。

今回も、不動産情報サービスのアットホームが公表している「地場の不動産仲介業における景況感調査」から最新2023年1~3月期の業況を深掘りしていきます。

景況感調査とは、地域に根差して不動産業に携わるアットホーム加盟店を対象に、居住用不動産市場の景気動向について四半期ごとにアンケートを実施しているものです。都道府県知事免許を持ち、5年を超えて仲介業に携わる不動産店の経営層にインターネットで調査し、前年並みを50 とする「業況DI」で数値化しています。
DI=50を境に、それよりも上なら「良い」、下なら「悪い」を意味しており、不動産仲介現場のリアルな営業実感が反映される調査結果と言えるでしょう。

▽首都圏・近畿圏の業況判断指数(業況DI(前年同期比)の推移)

首都圏の23年1~3月期(以下、今期)の賃貸の業況判断指数(DI)は54.8(前期比+11.8ポイント)と大幅に上昇、2014年の調査開始以来初めて50を超えました。近畿圏も、同+7.6ポイントの49.2と大幅上昇し、2期連続のプラスとなりました。業況DIは両エリアとも過去最高値。前年同期比は首都圏で8期連続、近畿圏で4期連続のプラスとなり、回復基調を維持しています。
進学・就職のトップシーズンだけに、特に学生や社会人、留学生といった単身者の住まい探しが活況で、不動産店からも「大学がリモート授業をやめたので新大学生の成約が一気に増えた」「企業が新卒採用を再開しワンルーム系の物件がよく決まった」「留学生が増えた」などの声が多く集まりました。また、売買物件の価格高騰の影響などから、賃貸マンションを求めるファミリー層の動きも依然好調です。

業況改善の要因は人口の都心回帰。東京は特に鮮明、大阪でも。

首都圏では東京(23区・都下)の賃貸の業況DIが過去最高値となりました。その要因となるのが人口の都心回帰です。東京における2020年~2023年(各1~3月計)の年齢別人口移動の推移を見ると、全ての年齢層で前年より転入超過の拡大や転出超過の減少が起きています。特に3月は進学や就職、転勤などのイベントがあるため、若年層(15~29歳)の転入数の回復に大きく影響したと考えられます。東京の不動産店からも「コロナ禍で減っていた地方からの上京組が戻ってきた」「他県からの転勤で東京に来る人が以前より増えた」といった声が多数ありました。またファミリー層(30歳以上と14歳以下の子ども世代)についても、コロナ禍での転出超過が次第に収まりつつあり、「リモートワークが減り郊外から都心への回帰傾向が見られた」「都心のファミリータイプの分譲賃貸マンションが人気」など、都心回帰が業況の回復につながったと思われる声が多く聞かれました。
なお、東京以外の首都圏3県(埼玉・千葉・神奈川)は、全ての年齢層で転入超過となっており、特に今年は若年層の転入超過が増えました。コロナ禍の郊外移住人気が落ち着き、東京から3県への移動は減少しましたが、東京以外の全国各道府県からの転入は増加し、これが賃貸の業況改善につながったといえます。

▽2020 年~2023 年 1~3 月の東京都と首都圏 3 県の年齢別人口移動(転入超過・転出超過)

なお、大阪も東京と同様に、若年層の転入超過とファミリー層の転出超過という構造が見られ、これは大都市に共通する人口動態の傾向といえそうです。大阪の今年1~3月の全年齢層の合計転入数は前年同期比で103.7%と増加しており、不動産店からは「何年振りかに繁忙期らしい勢いが戻った」など、活況ぶりがうかがえる声が多く聞かれました。

募集家賃は全国的に上昇傾向。東京・大阪など全面積帯で前年を超えるエリアが多数。

最後に2023年3月のマンションの募集家賃動向を見ていきます。進学・就職・転勤など、人の動きの回復に伴い賃貸ニーズも高まり、募集家賃は全国的に上昇傾向です(日本地図参照)。
本コラムでも何度かお伝えしましたが、コロナ禍以降の広さを求める動きや分譲マンションの価格高騰を受け、ファミリー向き賃貸物件に注目が集まり家賃の上昇が続いています。一方、シングル向き物件はコロナ禍ではニーズの縮小から家賃が伸び悩んでいましたが、ここにきてニーズが回復し家賃も徐々に上昇し始めました。
コロナの5類移行などにより人の動きは今後も回復を続け、また最近では引越しのピークを避けて住まい探しをする傾向も多いため、そうしたことから賃貸の需要は繁忙期を過ぎても続いていくと思われます。よって、コロナ直後のように家賃が大きく下がるような要素は今のところ少ないと予想します。

アットホームでは、景況感調査や家賃・価格動向など、仲介現場から届くリアルな声とデータの両側面を捉えてレポートしています。皆さまの投資判断のお役に立てば幸いです。

磐前淳子(いわさきじゅんこ)
著者:磐前淳子(いわさきじゅんこ)
アットホームラボ株式会社 執行役員 データマーケティング部 部長。不動産情報サービスのアットホームに入社後、営業職・企画職などに従事。2019年5月、アットホームのAI開発・データ分析部門より独立発足したアットホームラボの設立に伴い、現職。不動産市場動向や業況の分析などを担当し、各種レポートの公表のほか、講演・執筆、メディア対応などを行う。最近の主な講演・執筆テーマに「仲介の現場からひも解く最新の入居者ニーズ」「コロナ禍がもたらした不動産市況の変化」「貸店舗の募集動向」など。