公的年金は破綻しないといえる3つの根拠と正しい備え方
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公的年金の「悲観論」や「破綻論」が根強く囁かれ続けています。どれだけ年金を支払っても将来破綻してもらえなくなるのであれば意味がないとして、現役世代の人たちのなかには年金を支払っていない人が多数います。

こうした懐疑的な見方をしている人たちの言うように、公的年金は本当に将来破綻してしまうのでしょうか。少子高齢化が進むと年金財政が逼迫するのは容易に想像がつきますが、公的年金は制度上、破綻しない仕組みになっています。

当記事では、公的年金がなぜ破綻しないのかについて3つの根拠を示して解説していますが、年金が破綻しないからといって老後が安泰であるわけではありません。破綻を免れたとしても受給額が減ることは必至なので、このことに対する正しい備えは必要です。そこで、公的年金の未来と併せて、それを踏まえた正しい備え方についても解説します。

公的年金が破綻しない3つの根拠

公的年金は破綻しないといえる3つの根拠と正しい備え方
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少子高齢化が進むことで現役世代の負担が増え、将来は公的年金が破綻してしまうのではないかと思われがちです。それならもう公的年金をあてにするわけにはいかないという考えに至りますが、そんな人に対して公的年金が破綻しない3つの根拠を示したいと思います。

マクロ経済スライド

マクロ経済スライドとは、現役世代の負担ばかりを増やすのではなく、受給側の額も調整しながら年金制度を維持する仕組みのことです。平成16年(2004年)の年金制度改正で導入されました。現役世代に過度の負担がかかる仕組みだと不公平感が大きくなるため、それを抑制するために導入されたものです。

最終的に確定した年金負担額の水準から、その時の情勢に応じて年金給付額が決まります。そのため、少子高齢化が進むと受給額が減るのは避けられませんが、年金制度自体の破綻は回避されます。

受給年齢の人たちの社会参加が増加

65歳以上の人たちは、従来であれば年金を受給するだけの世代として認識されていました。しかし今では65歳以上の人たちや女性の社会参加が進んでおり、一概に年金財政を圧迫するだけの存在ではなくなっています。

就労者数が現役世代の総数を超えることはないという図式が変化しているため、年金制度を支える人と支えられている人の比率が今後急激に変わることはないとの指摘もあります。さらに、将来は人口減少に伴って高齢者の人口も減少していくため、こうした人口動態の変化によって年金財政のバランスは健全化しやすいといわれています。

持続可能な積立金規模

公的年金には年金積立金といって、年金の給付に充てられる資金とは別の資金があります。年金積立金は100年計画で運用されており、理論上は少なくとも100年は破綻しないだけの健全性が保たれています。

さらに、この積立金はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によって運用されており、その成績は良好です。GPIFが公表しているデータによると、2001年年度から2022年度までの累積収益額は、約98兆円です。20年少々で約100兆円の資金が増えているのですから、今後もこうした運用成績が続けば公的年金の健全性に資すると考えてよいでしょう。

公的年金が破綻しなくても備えは必要

公的年金は破綻しないといえる3つの根拠と正しい備え方
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上記の3項目で解説したように、少なくとも今後100年間は公的年金が破綻することは考えにくいでしょう。ただし、1つめの根拠で示したようにマクロ経済スライドでは今後年金の受給額が減ることは必至で、老後の資金を公的年金だけでまかなうのは現実的に難しくなります。

サラリーマンには年金の2階部分として厚生年金がありますが、それ以外の自営業者やフリーランスの方々は国民年金基金に加入していない限り2階部分がなく、1階部分のみの受給になります。令和5年度(2023年度)の国民年金受給額は満額でも6万6,250円です。これだけで老後の生活をまかなえないのは言うまでもありません。

破綻はしないものの、備えは必要。これが公的年金に対する正しい認識です。

公的年金にプラスするための資産運用法3選

公的年金は破綻しないといえる3つの根拠と正しい備え方
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公的年金だけではまかなえない老後資金の不足分は、自分で備えるしかありません。現役世代のうちにできることは多数ありますが、そのなかでも取り組みやすく現実味のある方法を3つ厳選しました。

インデックス投資

インデックス投資とは、株価指数など市場にあるさまざまな指数に対する投資のことです。それぞれの指数と連動するように運用されている投資信託やETF(上場投資信託)を購入することで、インデックス投資を簡単に始めることができます。

ご存じの方も多いと思いますが、日本株の代表的な指数である日経平均株価は2023年6月に大きく上昇し、6月13日には3万3,000円台をつけました。それまでの推移を、以下のチャートでご覧ください。

2013年6月頃には1万2,000円台だった日経平均株価が、10年後には3万3,000円台です。実に3倍近く上昇しており、10年前に日経平均株価へのインデックス投資をした人は資産を3倍近くに成長させたことになります。

さらに株価指数連動型の投資信託やETFでは配当が得られるため、投資先のリスクを分散しながら配当収入を老後資金の足しにすることもできます。

高配当ETF投資、REIT投資

先ほど紹介したETFのなかには、高配当銘柄だけで構成された「高配当ETF」があります。配当利回りの高い株式で構成されているため、ETFの利回りも3〜5%程度が期待できます。日本であれば「上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100)(1698)」や「NEXT FUNDS野村日本株高配当70連動型上場投信(1577)」などが有名です。

また、高配当ETFは米国の証券取引所にも有名な銘柄が上場しており、「SPDRポートフォリオS&P500高配当株式ETF(SPYD)」や「iシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF(HDV)」はその代表格といえるでしょう。米国の高配当ETFは経費率(日本でいう信託報酬)がとても安く、この両銘柄はいずれも0.1%未満です。運用コストの安さは長期投資において大きな差になるので、老後資金の備えとして高配当ETFを検討している方は米国ETFも検討の余地があります。

もう1つのおすすめであるREITとは、不動産投資信託のことです。不動産の運用によって得られた収益を投資家に分配する投資商品で、東証に上場しているJ-REITという銘柄群が有名です。2023年6月13日時点のJ-REIT平均利回りは4.1%です。

おおむねJ-REIT全体で4%前後の利回りが確保されているので、先述の高配当ETFと合わせてこうしたJ-REIT銘柄を保有しておくと老後資金の足しにできることが期待できます。

不動産投資

3つめのおすすめは、不動産投資です。先ほど紹介したREITは不動産で運用している投資信託ですが、ここでおすすめするのはアパートやマンションなどを所有して家賃収入を狙う現物の不動産投資です。

初めての方にとって不動産投資は初期投資額が大きくなることに抵抗があるかもしれませんが、銀行などの融資を利用することができるので、数百万円程度の自己資金から始めることも可能です。現物不動産という裏付けがあるため比較的リスクが低く、物件選びを間違えなければ長期的かつ安定的な家賃収入が期待できます。

所有者が定年退職を迎えて本業の収入がなくなったとしても、入居者がいる限り家賃収入が途絶えることはありません。老後のために不動産投資を検討する人はとても多く、「自己資金がある」「融資の審査に通りやすい」などの条件が整っている方は検討の価値が大いにあります。

ここで紹介した3つの方法は、いずれもインカムゲインといって定期的な収入源となることを目指すものです。毎月の年金に5万円、10万円をプラスできる状態を作っておくことで、老後の安心感が得られるでしょう。

(提供:Incomepress



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