変化の時代における企業の課題解決と持続的な成長を目指す株式会社ヒューマンセントリックス。創業から二十年にわたり、その名の通り人間中心の視点で、企業のプレゼンテーションコミュニケーションを効果的、効率的に実現する動画制作と配信技術を提供し、企業活動のコストを下げ、生産性を上げるというミッションを持って活動してきた。本企画では、その取り組みやビジョンに迫るため、株式会社ヒューマンセントリックスの代表取締役である中村寛治氏にインタビューをする。

(執筆・構成=川村 真史)

株式会社ヒューマンセントリックスアイキャッチ
(画像=株式会社ヒューマンセントリックス)
中村 寛治(なかむら かんじ)
株式会社ヒューマンセントリックス株式会社ヒューマンセントリックス 代表取締役社長
福岡県北九州市出身。1990年より日本サン・マイクロシステムズ、その後1996年より日本オラクルに移籍。西部支社長を経て、2004年6月に、人間中心という企業理念を社名としたヒューマンセントリックスを創業。外資系IT企業の営業現場で培ったノウハウをベースに、企業向け「動画プレゼンテーション」というこれまでになかったサービスを開始。今では、BtoB企業向けビジネス動画のトップブランドになるまで成長した。
株式会社ヒューマンセントリックス
企業が日々の業務で活用できる業務用動画を企画/提案/制作する会社である。世界、日本を代表する2000社以上に5万本を超える業務用動画を制作、配信支援を行っている。 2022年10月より、芙蓉リースグループの一員として、当社技術を使って、企業の社内コミュニケーション強化、及び生産性向上にも努めている。

起業の軌跡と動画制作の秘訣

―まずは、起業を決意されたきっかけや経緯について教えていただけますか。

はい。起業する前は外資系IT企業で15年勤めていました。企業の課題を外資系の製品やテクノロジーで解決することが主な仕事でしたが、その中で、メイドインジャパンのサービスを用いて企業に課題解決策を提供したいと考えていました。

また、企業の課題解決の手段として、システム導入だけでなく、そのシステムの手前にあるコンテンツで企業の課題を解決できるものが多くあり、コンテンツこそ重要なのではないかとも考えていました。

さらに、営業で遠方に出張に行くことも多く、営業効率化の重要性も感じていました。そこで、製品やサービスの魅力を効率的に伝える手段として、動画によるプレゼンテーションが効果的だと考え、2004年にプレゼンテーション動画の会社「ヒューマンセントリックス」を立ち上げました。弊社の創業はYouTubeのサービス開始よりも1年程前で、現代ほど動画サービスが認知されていなかったため、他社の動画制作サービスは数百から数千万円と高単価でしたが、その中で、約50万円という低単価で動画を制作するビジネスをたった1人で始めました。

―どのようにプレゼンテーション動画を作成しているのですか?

まず、前提として私たちの目的は、お客様に製品やサービスの内容を短くわかりやすく伝えることです。そのため、製品担当者に600文字程度でその製品やサービスの内容を整理してもらい、プレゼンテーション素材と話の内容が合うようにプレゼンテーション動画を作成しています。

―ありがとうございます。他社の動画制作コストと比較し、御社が約50万円という低コストで動画制作ができた秘訣は何でしたか?

当時は、プレゼンテーション動画を高価格だったストリーミングサーバーでなくFlash(web上で動画を再生するサービス)を使用し配信していたことが一因です。98%のブラウザにフラッシュのプラグインが入っていたため、どのブラウザでも見れる動画が制作できました。

強みを活かしたビジネス拡大

―御社の事業変遷について、どのような形で事業領域を開拓し、顧客基盤を拡大してきたのか、重要なポイントを含めて教えてください。

はい。まずリーマンショックがあった頃に、動画という媒体は広告の一環だという捉え方から、営業ツールだという考えに変わっていき、事業が拡大しました。その後、東日本大震災やコロナウイルスなど大きな危機を通して、あらゆるビジネスシーンがリアルからオンラインへと変遷するとともに、社会的理解を得ることができ、動画を課題解決のソリューションとしてスムーズに提供できるようになっていきました。

社会全体で大きな危機が生じることで、企業では何らかの課題が生じるので、弊社ではその課題に対して、動画というソリューションを用いて適応してきたことが事業変遷における重要なポイントだと言えます。

―ビジネスの流れの中で、御社の強みや得意分野はどこにあると考えますか?

取引実績と徹底した理念の浸透がまさに弊社の強みです。弊社は大手企業や中央省庁との取引実績が多数あります。大手企業や中央省庁は特に複雑でわかりにくいビジネスを展開する一方、社内外含め多くの人に教育や採用、IRなどあらゆる観点でわかりやすく伝える必要があるという課題を抱えています。その課題解決において、弊社の動画サービスの強みを十分に発揮することができるのです。

また、弊社ではコンサルティングやエンジニア、クリエイターなど約130名の全社員にヒューマンセントリックスのクリエイティブ指針やビジョン、理念の理解をしてもらい、それらを浸透させる部分まで徹底して行なっています。創業当初から、毎週の全体会議で70ページ程度の資料を用い、理念浸透と課題解決のPDCAを回し続けることを徹底して取り組んでいます。

ブレイクスルーから未来へ

―社会的な危機を乗り越えられてきたというお話しもあった中で、過去のブレイクスルーやその背景、秘訣についてお伺いできればと思います。

ブレイクスルーはやはりコロナウイルスの影響により、社会全体でオンライン化が進んだことです。

実は、2022年度に初めての減収を経験するまで、創業以来18期連続増収でした。その減収要因は急速なオンライン化の進行に伴い、動画サービスが急拡大したことにより、反動を受けてしまったことです。

しかし一方で、18期連続増収が達成できた背景として、正しいことをやっていれば、必ず次年度も売上が上がると信じていたからだと考えています。基盤顧客に対して正しいことを続ければ、次年度も発注をいただくことができますし、そこから紹介もいただくことができます。現在も、理念の浸透や常にPDCAを回し続けることなど、正しいことを徹底して行えば、ビジネスは絶対に伸びるという信念を持って実践しています。

―ありがとうございます。次に、5年後や10年後の長期的な視点で、どのような未来構想を考えているのかを教えていただけますか。

私には現時点で大きく3つの考えがあります。

1つ目は、弊社の事業拡大についてです。実は、昨年2022年の10月に芙蓉総合リース株式会社(以下、芙蓉総合リース)様との資本提携を行いました。色々な会社様からお声がけをいただいていたのですが、大手企業様との取引が多い企業との提携により、我々のビジネスがさらに拡大するという事業シナジーの可能性を感じ本提携に至りました。提携からまだ半年程しか経っていませんが、芙蓉総合リース様とのご縁をいただいたことで、ビジネスを大きく伸ばしていくことができるように感じています。

2つ目は、AIの活用についてです。現時点での動画制作は、割合で示すと人が約95%、テクノロジーが約5%と労働集約型になっています。弊社ではその体質から脱却し、テクノロジーを活用して生産性を上げることを目指しています。

具体的には、AI技術を使って生産性を上げることができるかについて検証しています。BtoC領域ではAI活用による動画制作が進んでいますが、BtoB領域でのAI活用による動画制作はあまり進んでいません。

なので、約5万本以上に及ぶ大量の動画データベースを活用し、AIを活用し自動生成型の動画作成による企業の課題解決を目指しています。最終的には、人が約5%、テクノロジーが約95%の割合で動画を制作及び配信し、より豊かで生産性の高いビジネスを実現したいと考えています。

3つ目は、私自身についてです。私は現在58歳ですが、会社には若い人が多く、この先も常にビジネスを伸ばしていきたいと考えています。社会に出てからは約15年間テクノロジーを活用して企業のあらゆる課題を解決してきました。

起業後もまた、約19年間動画で企業のあらゆる課題を解決してきました。IT分野にずっと関わってきた身としては、スティーブ・ジョブス氏が若くして亡くなったことが衝撃的で、将来的には健康やエイジングケアの分野で人々の最も大切なものを解決する究極のソリューションビジネスを目指したいと考えています。

今、重点を置いている取組み

―長期的な構想についてお話しいただきましたが、短期的に重点的に取り組んでいることや業界全体に対する想いがあれば教えてください。

我々のビジネスで重要なのは、顕在的なニーズを引き出すことではなく潜在的なニーズを引き出すことだと考えています。例えば、会社紹介動画や採用動画はレッドオーシャン化しています。その中で私たちは、コミュニケーションで課題解決を目指す「コミュニケーションインテグレーション」という言葉を用いて、お客様の課題解決に繋がるサービスを提案しています。

また、動画を難しく特別なものではなく、通常の業務で使えるものとして「業務用動画」という言葉で、わかりやすく伝えています。競争が激しい動画業界において、過当競争が進み利益が出にくい市場にならないように、「人中心」の視点を持ちつつ、お客様の課題解決に繋がるサービスを浸透させることで、我々が市場を拡大させるような活動を行っていきたいと考えています。

氏名
中村 寛治(なかむら かんじ)
会社名
株式会社ヒューマンセントリックス
役職
代表取締役社長