この記事は2023年7月14日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「鉱工業生産指数の基準変更で景気基調判断が「改善」に」を一部編集し、転載したものです。


鉱工業生産指数の基準変更で景気基調判断が「改善」に
(画像=qntn/stock.adobe.com)

(経済産業省「鉱工業生産指数」)

5月31日に発表された4月の鉱工業生産指数(速報値)は、前月比▲0.4%と、3カ月ぶりに低下した。低下したのは全15業種のうち5業種で、9業種が上昇し、1業種が横ばいだった。

例えば、汎用・業務用機械工業が前月比で11.6%、電子部品・デバイス工業が8.9%と上昇したのに対し、生産用機械工業が▲7.4%、鉄鋼・非鉄金属工業が▲1.1%と低下した。

6月20日に発表された4月の鉱工業生産指数(確報値)から基準変更があり、2015年基準から20年基準に切り替わった。鉱工業生産指数の基準年時は5年ごとに更新され、指数は2020年の平均を「100」とした比率で表わされる。「経済センサス-活動調査」を基礎データとして、生産指数の採用品目は、15年基準で412品目あったが、20年基準で408品目に減少した。ウェイトの見直しでは、化学工業などでウェイトが増加した一方、輸送機械工業などでウェイトが低下した。

4月の確報値は前月比0.7%で、3カ月連続の上昇となった。全16業種中、上昇が14業種で、低下は2業種にとどまった。生産用機械工業は前月比で▲6.3%だったが、鉄鋼・非鉄金属工業が0.6%と上昇に転じた。一方、汎用・業務用機械工業が7.8%、電子部品・デバイス工業が6.9%と上昇したものの、上昇率は鈍化した。

6月30日発表の5月の鉱工業生産指数(速報値)は、前月比で▲1.6%となった。鉱工業生産指数の過去データについては、18年1月以降、新基準による系列が作成され、18年1~3月の時点で旧基準との接続を行い、1978年まで遡及した過去時系列の接続指数(注1)が整備された。  鉱工業生産指数について、2018年1月から23年4月までの変動係数(注2)を計算すると、15年基準が0.060であるのに対し、20年基準が0.058となり、20年基準の方がいくぶん変動は滑らかだった。また、20年基準の指数を15年基準の指数で割ると、新型コロナウイルスの影響が出た20年以降では、特に5月が他の月よりも大きいことが分かる(図表)。

鉱工業生産指数等をもとに算出される景気動向指数は、一致CIを使って基調判断を機械的にしている。4月の速報値の景気基調判断は「足踏み」だったが、4月の改定値では、一致CI3カ月後方移動平均の2月と3月が前月差で上昇に変わり、3カ月連続上昇になったことで、景気基調判断を上方修正する条件が満たされ、一番良い判断である「改善」となるサプライズがあった。鉱工業生産指数の基準変更が、景気基調判断の「改善」をもたらしたかたちだ。

鉱工業生産指数の基準変更で景気基調判断が「改善」に
(画像=きんざいOnline)

景気探検家・エコノミスト/宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2023年7月18日号