引き継ぐことを意味する言葉で「承継」のほかに字の前後を変えただけの「継承」というのがあります。どちらも引き継ぐ意味において違いはなくても、その意味するところに大きな差があるようです。M&Aのように金銭的取引によって行う無機的な引継ぎに対して「事業継承」と言ったような用いられ方をされており、これに対して精神、属性、人間のつながりを伴う引継ぎのときに「承継」が用いられています。
任期満了で退任し、取締役会で選任された新しい社長が、限られた任期を勤めるようなケースでは承継と言う言葉は馴染まないでしょうし、たくさんあるプロジェクトのなかで前任者が力を入れてきたものを引き続き推し進めて行こうとするときは、部分的に「継承して行く」と言ったような使われ方があるりますが、会社全体を継承してゆくとは言いません。
そこで「承継」の言葉を勝手に定義付けてみると、「主に中小企業のオーナー経営者や個人事業者が、事業を家系ごと引き継ぐようなときに使われ、昔風に言えば家業を引き継ぐと言った意味合いの強い言葉」となるのではないでしょうか、承継には事業資産や長年にわたり築き上げられてきた伝統・技術が一つの属性をもつて脈々と引き継がれて行くところが「継承」と異なる点でしょう。
こうみてゆくと承継と言う言葉には深い意義を感じられるものはないでしょうか。余談から始まりましたが、この文章に関係するお話を進めるにあたって、意味があるかと思います。
事業承継は経営上最大の課題
事業の長い道のりには平坦な道ばかりはなく栄枯衰勢の繰り返しかもしれません、これを50年100年のスパンで眺めるとき、脈々と引き継がれいる企業にもいくつもの節目があり、この節目と節目の間にも沢山の会社が姿を現しては消えています。中小事業者にとって、事業承継は大きな節目となるものであり、これが境となってさらなる隆盛を極めるものもあれば、消えて行かざる得ない要因になるものもでもあるのです。
経営者は早くから後継育成に備えなていかなければなりません、事業の厳しさ、技術などを叩き込んで行く必要があるからです。後継者の育成は経営者にとって大事業の一つである所以です、これを立派に終えることによって一代の経営者の任務は完結すると言えるでしょう。
三国志の主人公で蜀の国を創立した劉備元徳は、軍師の諸葛孔明を後見に指名して息子を託しまし、死ぬ間際に、息子がその任にあらずと見たときは、いつでも代わって国の経営に当たるよう言い残したと言う有名な一節がありますが、事業の後継者育成はそれほど真剣な大事業と心得るべきでなのです。