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事業継承のタイミングで、企業は下記のような状況に直面する場合が多くあります。

・事業再生を前提として事業承継を行い、初期投資として多額の資金が急遽必要となる。
・事業継承者が不在のため事業譲渡・株式譲渡・合併など策を打つこととなり資金が必要となる。
・安定的経営基盤確立のため資産確保、株取得のため資金が必要となる。

事業継承時には大きな資金が必要となるケースが多く、継承者の頭を悩ませます。中小企業について言えば、日々の多忙な生活のなかで事業継承をスムーズに行うための事前準備が疎かになることは多々あり、先代経営者の突然の死により、保有株式が事業とはまったく関係のない親族に渡るなど、混乱を引き起こす場合もあります。

本稿では、事業承継について、政府系金融機関からの融資制度の情報をまとめました。承継に向けた事前準備の一助になればよろしいかと思います。


政府系融資制度の概要

事業継承に係る政府系融資として、日本政策金融公庫および沖縄振興開発金融公庫より低利融資を受けることができます。また、直接的な融資とはなりませんが、金融機関からの借入金に対して、信用保証協会の保証枠を拡大する制度を利用することができます。

2008年中小企業に対する金融措置が取られ、貸付機関 (当時は中小企業金融公庫、国民生活金融公庫、後に日本政策金融公庫に統合) による後継者個人に対する経営安定化のための制度融資が実施されることとなりました。この措置の画期的な点として、事業の後継者が、自社株式や設備、資産を購入するときに、貸付機関より融資してもらえるという点です。

当該措置は現在も日本政策金融公庫における国民生活事業、中小企業事業カテゴリーのもと供与されております。日本政策金融公庫の国民生活事業、中小企事業については、融資提供条件の詳細は後述します。日本公庫に加え、事業承継に関する資金を金融機関から借り入れる場合に、信用保証協会が通常の保証枠に加え、別枠を提供するサポート体制もあります。


日本政策金融公庫詳細

日本政策金融公庫の融資制度は国民生活事業と中小企業事業の二つに分けることができ、承継に対する融資についても当該カテゴリーのもと融資条件が設定されております。中小企業庁の資料「事業承継における融資・保証制度」を引用すると、融資を受けられる対象者として、

1.会社又は個人事業主が、後継者不在などにより事業継続が困難となっている会社から、事業や株式の譲渡などにより事業を継承する場合。
2.会社が株主から自社株式や事業用資産を買い取る場合。
3.後継者である個人事業主が、事業用資産を買い取る場合。
4.経営承継円滑化法に基づく認定を受けた会社の代表者個人が、自社株式や事業用資産の買い取りや、相続税や贈与税の納税などを行う場合。

以上を指定して、支援対象としております。
国民生活事業、中小企業事業ともに、

・融資限度額について、設備資金7億2000万円(内運転資金4億8000万円)
・貸付機関について、設備資金15年以内(うち据置期間2年以内)、運転資金7年以内(うち据置期間2年以内)
・貸付金利は利用者によって基準金利、特利を設定

保証条件については、

・中小企業事業について、経営者本人の個人保証
・国民生活事業について、保証人、担保等は別途相談となります。

国民生活金融公庫については、以上が融資条件の概要となります。


保証協会別枠制度詳細

信用保証協会はそもそも貸付を行う機関ではなく、中小企業が民間の金融機関から貸付を受ける際の信用を提供する機関となります。通常ですと、普通保険枠で2億円、無担保保険枠で8000万円、特別小口保険枠で1250万円提供していますが、事業承継に関する融資を受ける場合、普通保険枠で+2億円、無担保保険枠で+8000万円、特別小口保険枠で+1250万円の別枠を提供しております。

保証協会をかませることで、承継事業に対する民間企業からの融資審査は通りやすくなりますが、別枠の提供を受ける中小企業は経営証券円滑法に基く認定を受ける必要があります。
保証協会は各都道府県に支部を設置しておりますので、直接ご相談することとなります。


政府系貸付機関以外では?

以上のように事業継承に対する政府系貸付機関、融資制度についてご紹介させていただきました。上記に加え、都道府県、市町村、政府単位での融資制度を整備しているところもあります。

例えば、松本商工会議所が紹介する事例では、長野県融資制度を活用した事業承継の事例があります。個人経営のバレエ教室の事業継承を行うにあたり、パートナー機関である八千代銀行を通じた資金調達、及び商工会議所からの経理指導を受け、バレエ教室事業の継承がスムーズに実施されたとのこと。自営業者は、政府、および地元商工会議所に相談することで、優遇制度、支援制度を十分に把握しておき、もしものための準備をしておくべきです。地元の税理士事務所などに相談することで、実際の事例などの情報を集めることもできるでしょう。