「肉汁餃子のダンダダン」を全国に130店舗以上展開する株式会社NATTY SWANKYホールディングスの代表取締役社長、井石氏に、企業のビジョンとその成功の秘訣について伺った。2011年に東京都調布市で始まったこのギョーザ居酒屋は、「肉汁焼餃子」を主役に、ゆっくり餃子とビールを楽しめる業態を創りたいという理念の下、老若男女問わず多くの顧客を引き付けてきた。特に、20代、30代の女性客が多く、若い女性も気軽に楽しめる空間を提供している。井石氏が自身の座右の銘とする"餃子とビールは文化です。"という言葉が、彼の事業に対する情熱と誇りを表している。
2001年11月 有限会社ナッティースワンキー(現 株式会社NATTY SWANKYホールディングス)取締役 就任
2007年10月 当社 取締役社長 就任
2017年6月 株式会社swanky(現 株式会社BORA)設立 代表取締役 就任(現任)
2018年1月 当社 代表取締役社長 就任(現任)
座右の銘:餃子とビールは文化です。
餃子居酒屋創業者・井石さんが語る、お店の誕生秘話
冨田:今日は対談ありがとうございます。IPOのタイミングは2019年の3月と理解していますが、そこから約4年経ちました。創業が2001年とお伺いしていますので、そこから上場までのプロセスと上場してからのプロセスもあると思います。 この事業の変遷について、まず最初にお伺いできればと思います。
井石:2001年に創業した時は、最初にラーメン屋を立ち上げて、本当に小さい10席ぐらいのお店でスタートしました。その後、ダイニングバー、バルなども展開し、10年で4店舗を展開していました。
当時、私が経営していたダイニングバーは個人店のような小さいお店で、繁盛はしていましたが、展開するような規模には至っていませんでした。それでも社員が増えてきたので、活躍の場を作る為に、展開が可能なお店を作らなければならないと感じていました。お店は客単価が4,5千円程度で、普通の居酒屋よりは少し高級になっています。客層はほとんどが20代後半から30代の独身の方々でした。しかし、0歳から100歳までいるはずの街で狭い層しか来てくれないお店ではダメだと思い、次のお店は幅広い世代の方々が利用できるお店にしようと考えました。
冨田:そこでどのようなお店を思いつかれたのですか?
井石:実は私は餃子が大好きで、自宅近くの調布で美味しい餃子が食べたいと思っていました。しかし、周りには中々そういったお店がなく、もし美味しい餃子屋さんがあればこの街にとって良いだろうなと考えお店を作ろうと考えました。加えて、当時の餃子の食べ方はラーメン屋さんのサイドメニューや中華料理屋さんでチャーハンと餃子という形が一般的でした。そのため、ゆっくり餃子を食べながらビールを飲める居酒屋のようなお店が少ないと感じ、餃子居酒屋を作ろうと思い至りました。 そこで、2011年の1月に創業10年目で現在の業態が誕生しました。 その頃、検索もしてみましたが、他には同じ業態のお店はないのではないかと思っていました。
冨田:その頃からどんどん繁盛したのでしょうか?
井石:はい、2014年から2015年にかけて、月1店舗くらいのペースで出店を始め、どの店舗も本当に繁盛していました。 その後、3年後の上場を見据えて、2016年から上場準備に取りかかることを決めました。
冨田:では実質的に、餃子中心の居酒屋はダンダダンさんがパイオニアということですね。そういったお店が拡大していったのは、ほかにも日本にあったのでしょうか?
井石:当時、検索や調査する限りではなかったと思います。
冨田:私も餃子が大好きで、餃子を中心に食べられる居酒屋は、その頃から一層広がったと思っております。その様な餃子居酒屋のブームを作って下さって本当にありがとうございます。
株式会社NATTY SWANKYホールディングスの強みとは
冨田:次に、株式会社NATTY SWANKYホールディングスの自社事業の強みは一体どのようなところにあるか、社長にお考えを伺えますでしょうか。
井石:弊社の一番の強みは、やはり餃子の味だと思います。餃子は基本的にどこで食べても美味しいと思いますが、その中でも、我が社の餃子にファンが多くいてくださるのは、やはり味だと思います。また、高品質な餃子を大量生産するのはとても難しいですが、それができていることも強みだと思います。
冨田:メニューのレパートリーは豊富ですよね。
井石:そうですね。元々私たちが表現したかったのは中華料理屋ではなく、日本の焼き餃子がメインの居酒屋のようなお店です。実際、最初は餃子という文字が看板に書いてあると、お客様からはラーメンやチャーハンが求められていました。しかし、あえて置かずに餃子オンリーのスタイルが良かったと思います。
冨田:確かに、餃子を食べるとビールやハイボールが進んでしまいますね。これは元から皆さんのイメージがあったのでしょうか?
井石:そうですね。お客様がどうしてもイメージする「餃子食べるとお酒が進む」という感じを、わざと表現していくことでそれが強みとなりました。また、「餃子とビールは文化です。」というキャッチコピーも作り、看板にもしました。
冨田:私自身、 FCになってもクオリティが担保されていると感じます。飲食業界では拡大するとクオリティが下がることが多いですが、どのようにして維持されていますか?
井石:そうですね、店舗展開するのは比較的容易ですが、クオリティを維持しながら続けるのが難しい点です。歴史が物語っていますが飲食業界の企業が、急速な店舗展開をした結果、数年後に業績が悪化するケースもあります。それは、人の成長が出店に追いつかないという点が一番大きいです。そこをうちでは気を付けながら店舗展開をしています。
冨田:なるほど、フランチャイズについてはどのように取り組んでいますか?
井石:フランチャイズについては、誰でもやってもらえるわけではなく、飲食店を数店舗運営している人や資金力や人材のリソースが揃っている企業に厳選してやってもらっています。
井石社長が考える経営判断で重視していることとは
冨田:いろんな経営判断がこれまでにもあったと思いますが、経営判断をする上で最も重視していることは何ですか?
井石:当社の経営理念は「街に永く愛される、粋(いき)で鯔背(いなせ)な店づくり ~期待以上が当り前、 それが我等の心意気~」です。上場企業として難しい部分もありますが、目先の短期的な利益を求めるのではなく、5年、10年、20年としっかり利益を出し続けるブランドになるために、正しい経営判断を常に頭に入れています。
冨田:社長のこれまでの経験や店づくり、事業の変遷については非常に一貫性が感じられますが、社長自身の経営者としてのルーツや、これまでの経験から積み上がった強みについて教えていただけますか。
井石:実際に創業するまでの私は、飲食店で働いたことはなかったのですが、飲食店が好きで、毎日のように訪れていました。食事も好きで、お酒も好きだったので、お客さんとしての目線で、どうしてこんな風にしないのか、なぜこのようなサービスを提供しているのかといったことを考えるタイプの人でした。そういったお客さんとしての目線が、強みとして培われたと思います。
冨田:いろんなお店に行くときは、やはり現在だとさらに目が肥えて見えてしまうのでしょうか。
井石:そういうときはありますね。客観的に見なければならない時はしっかり見ていますが、普通に食事を楽しんで、後から振り返ることもあります。例えば、おいしいと思ってお金を払った後に、なぜおいしいと感じたのか、楽しかったのか、といった理由を考えることが結構あります。最初から客観的な視点で見ると、意外と気づかなかったりします。
これからの株式会社NATTY SWANKYホールディングスのテーマについて
冨田:これから御社が関わるべきテーマやビジネスのテーマは何だとお考えですか?
井石:関連してくるテーマとしては、まず一番はやはり人手不足ですね。これは私たち自身に限らず、サービス業をはじめとする全ての業種に影響を与える問題です。この問題をどう解決していくかが、成長できるかどうかの境目になる最も大きな課題だと考えています。 実際、大手企業でもフルタイムで営業できていないお店が増えています。大手の回転寿司でも、ゴールデンウィーク中に人手が足りないためテイクアウト専門店にすると発表していました。このように人手不足はかなり深刻な問題となっていると思います。
冨田:人材不足が今後切実な問題になることを非常に感じさせられました。井石さんが今後、株式会社NATTY SWANKYホールディングスで構想している大きなプロジェクトや目標について教えていただけますか。
井石:当社は現在、肉汁餃子のダンダダンという一業態で展開しており、去年から関西進出を始めて130店舗ほど展開しています。うち79店舗は東京都にあります。まず一つの目標は、全国にもっともっと広げていくことです。特に関西は、関東の半分ほどのマーケットがあると見込んでいます。また、ブランド力をどうやって上げていくかも大切なテーマです。価格競争に巻き込まれずに、より付加価値の高いブランドへと育てていくことを目指しています。
これは飲食業界で安売り合戦が激しいためで、利益を出さなくても良いと考えるお店も多いからです。しかし、そういったお店と価格競争をするのは不可能です。 そこに巻き込まれないように付加価値をつけて、ブランド力を上げることが大切だと考えています。
全国展開した後は、海外に出店していくことも検討しています。欧米でも認識が広がっており、英語の「dumpling」から、「GYOZA」で認知されるようになっています。チャンスが広がっていると感じています。
冨田:なるほど、餃子という商品はまだまだ可能性が広がっていくマーケットなのですね。
井石:そうですね。餃子はまだまだ成長の余地があると思います。
ZUU onlineユーザーにメッセージ
冨田:最後に、ZUU onlineや他の外部サイトに配信された本記事を見る投資家の皆様や株主候補の方たちに向けて、井石さんから一言メッセージをお願いします。
井石:はい、我々は「肉汁餃子のダンダダン」でまだまだ成長できると思っており、全国展開、そして世界展開を目指していきます。もし、展開する中で接客サービスや商品クオリティの低下があれば、すぐに僕たちに教えていただきたいと考えております。我々の使命は、QSCを維持向上しながら展開することなので、全力を尽くして取り組んでまいります。
冨田:株主優待として1万円分の食事券が年2回贈られるとのことですが、これは非常にすごいことではないでしょうか?利回りとしては非常に高いと思います。
井石:確かにリターンは結構なものですが、本当にうちの餃子を食べて株主の皆様にブランドのファンになってもらいたいという意図もあります。株主の皆様に喜んでいただける良い優待だと思っています。
冨田:本日はありがとうございました。
- 氏名
- 井石 裕二(いせき ゆうじ)
- 会社名
- 株式会社NATTY SWANKYホールディングス
- 役職
- 代表取締役社長