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五十嵐 北斗
株式会社HOKUTO
1994年生まれ。 2018年中央大学商学部卒業。 2016年に創業し、「より良いアウトカムを求める世界の医療従事者のために」をミッションに、医学生向けの国内最大の研修病院口コミメディア「HOKUTO resident」、医師向けの臨床支援アプリ「HOKUTO」を運営。
株式会社HOKUTO
株式会社HOKUTOは、医療×ITスタートアップであり、「より良いアウトカムを求める世界の医療従事者のために」というミッションに取り組んでいます。私たちは医師の負担を軽減し、患者さんに対応する時間を増やすため、医学情報へのスムーズなアクセスを可能にするアプリの開発などに取り組んでいます。また、製薬企業には医薬品情報を医師に適切なタイミングで提供する機会を提供し、医療業界全体のアウトカム向上に貢献しています。

起業から現在に至るまでの事業変遷

―まず、起業からこれまでの事業変遷について教えていただけますか。

株式会社HOKUTO・五十嵐 北斗氏(以下、社名・氏名略)::もともと学生時代に会社を作り、今に至った経緯があります。医療領域で会社を始めたきっかけは、私の親戚に医師が多く、また高校の友人が医学部に進んだことです。このことから身の回りの人の課題を解決するサービスを作りたいと思い、2017年に医学生向けの就活サイト事業を始めました。

―事業を始めるにあたり全国を回られたご経験があるということですが、その理由やその時の感想などを教えていただけますか。

元々、医療領域でサービスを作り始める前の段階で、いくつか事業を行っていましたが、顧客のニーズを把握していなかったことが原因でうまく行きませんでした。 そこで、顧客の声を聞くことが重要で、サービス作りの前に集めるべきだと考え、全国の医学生に話を聞くことを決めました。

―具体的にはどのようなアクションをとりましたか?

最初は私の友人や親戚が北海道の医学部にいたので、そのネットワークを利用しました。その後、医学部の部活動のネットワークを使って、他の大学にも紹介してもらいました。同時に、Twitter(現:X)を通じて情報を発信し、後半になると「自分の大学に来て欲しい」という声がネット上から寄せられるようになりました。最終的には、沖縄の琉球大学まで行くことができました。

―それは一人でやられたのですか?

はい、当時はそれしかやることがありませんでした。しかし、その時の経験が今の事業につながっていると感じます。全国を回りネットワークが作られたことで、事業の認知度も高まりました。

―現在も医療領域でのサービスを展開しているのでしょうか?

はい。最初に始めたのは医学生向けの就活メディアですが、現在我々の中心になっているサービスは医師向けのアプリケーションです。この根底を支えているのは当時全国を回った時に出会った医学生の方々の存在です。当時は医学生だった方々が、現在は医師になり、我々のサービスを使ってくれているといった状況です。

―そうなのですね。最初は医学部生向けだったということですが、医師向け、製薬会社向けの二つの事業をどのように展開されていったのか、サービスに対してどのような想いがあるのかを教えていただけますか。

今行っている医師向けのサービスは、医学生の数が多く集まったからこそ、「医師になっても使い続けていただけるようなサービスを拡張したい」と思い始めました。それにより、提供できる価値を届けられるお客様の数が増えていき、その先に広がっているマーケットも大きくなっていきます。そのようなところから医師向けのサービスを始めました。実はこの考えは製薬企業向けのサービスにも繋がっています。

製薬企業向けのサービスが生まれたのは、医学生向けのメディアがあったからこそです。 医学生向けのメディアがあったからこそ、医師向けのアプリケーションを作ることができ、そのアプリケーションに医師の数が多く集まることで、製薬企業様向けのサービスを提供できるようになりました。それぞれが繋がって現在のサービスの形が生まれています。

―なるほど、それぞれのサービスが連鎖的に繋がるような状態を意図的に作っていったということでしょうか?

その通りです。医師向けのサービスにおいては「臨床現場で素早く医師に情報を届けること」、製薬企業向けでは「製薬企業側から医師に製薬情報をオンライン上で届けること」を大事にしています。

事業戦略と強みについて

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―三つの事業を展開していると理解しましたが、基本的には医師からの依頼ではなく、製薬企業のプロモーションの支援を通じて収益を得ているというモデルであっているでしょうか?

はい、その通りです。

―なぜ製薬企業から収益を得るというモデルを選んだのですか?

端的に言うと、マーケットサイズの問題です。国内の医師は約300,000人程度で、その方々から得られる収益の上限はある程度決まっています。そのため、我々が提供するサービスのコンテンツに再投資できる金額も制限されてしまいます。それならば、製薬企業から予算をいただき、大きな予算をもとに、医師の臨床現場で役に立つコンテンツに投資する方が、我々のミッションであるアウトカムの向上に貢献できると考えました。

―製薬企業からの予算を活用して、より良いコンテンツを提供するという好循環を作り出しているわけですね。医学生向けのサービスは病院から収益を得ているのでしょうか?

そのサービスは我々のアプリの一機能で、大きな収益源というわけではありません。どちらかというと、ユーザーの獲得機能として活用しています。

―その機能を通じてユーザーを獲得するという戦略を取っているのですね。 五十嵐さんは自社の事業の強みというところがどのあたりにあるとお考えでしょうか?

我々の強みは、医師向けのアプリケーションが仕事中に使えるという点です。 これまで、病院内でスマートフォンアプリケーションを使うことは一般的ではありませんでした。しかし最近ではスマートフォンを使うことが当たり前になり、その流れに我々が参入できたことが強みと言えます。

―時代の流れをうまく捉えたというわけですね。システムの開発については何か苦労した点や壁はありましたか?

はい、最初は開発能力の高い人材を採用することが難しかったです。しかし、我々のサービスのコンセプトは社会性の高いものであり、医師からの反応率が高いことから、共感して頂くことが増えてきました。最近では多くのエンジニアの方から応募をいただき、思ったタイミングでサービスをリリースできる体制になりました。

―お医者様向けのブランドが高まり、ビジョンに共鳴した人材が集まることで事業が拡大しているわけですね。また、医学生や研修医のシェアが8割という点も強みと言えるでしょう。人が人を呼ぶという状態になっているのでしょうか?

そうですね、医学生の就職活動において我々のサービスがデファクトスタンダード(公的機関からの認証ではなく、市場や企業間によって、業界の標準として認められるようになった規格)になっていると思います。これも強みの一つと言えるでしょう。

― なるほど、そのつながりも強みと言えるでしょうね。

医療業界でのブレイクスルーと成功の秘訣

―過去のブレイクスルーや成功体験の秘訣について教えていただけますか?

ブレイクスルーは、いくつかあります。一つは、顧客の声を徹底的に聞くということです。これは、我々の会社の大きな強みとなっています。医学生向けのサービスや、医師向け、製薬企業向けのサービスなど、全てのサービス開発において、顧客の声を基にしています。これが、我々が提供するサービスの土台となっているのです。

もう一つは、アプリケーションを医師向けに作るタイミングで、外部から新たな人材を採用したことです。それまでの弊社のメンバーだけでは、アプリケーションを作る技術がなかったので、新たな人材を採用しました。

これにより、会社が大きく伸びていきました。それは、約4年前ぐらいのことで、そのタイミングで私の経営者としての考え方が大きく変わりました。それ以降、私自身の役割や仕事の比重は、主に採用に置いています。

―それは素晴らしいですね。それでは、エンジニアなどを採用する際に、どのような魅力付けをされているのでしょうか?

いくつかの施策を打っています。一つ目は、我々の事業の社会性です。これが大きなウエイトを占めています。二つ目は、我々の特徴的なカルチャーと、三つ目は働き方の部分です。我々はフルリモート、フルフレックスを採用しています。これらが、我々に人が集まる要因だと思っています。

―企業文化を作っていくことは大切なことですよね。どのような思いで、どのような会社にしていこうとお考えになられたのでしょうか?またそれに合わせたカルチャーをどの様に作っていこうと考えられたのでしょうか?

弊社ではミッションの達成を最重要課題に位置付けています。ミッションの達成に向けてコミット出来る人材を集めています。そのミッションから逆算した形で、カルチャーが形成されています。

特に医療領域では、エビデンスが重要視されるように「目的合理性が高い人」の方が活躍しやすいのではないかと考えております。

また、弊社では様々な背景を持った人材が集まっています。その人達が率直に意見を出し合い、サービスが生まれています。ですので、オープンな関係性で思ったことを伝えれる人が弊社にマッチしている人材だと思います。

―ミッションの達成を最重要目標としているとおっしゃいましたが、具体的にそのミッションを共有する活動などは行っていらっしゃるのでしょうか?

はい、ミッションもバリューも社内の評価制度に組み込まれており、浸透しています。

医療業界の未来と社会貢献について

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―五年から十年後の思い描く未来構想やビジョンについて教えていただけますでしょうか。

まず、直近の数年で我々の目指しているところは、使っていただくユーザーの数を増やしていきたいということです。特に医師向けのサービスとしては、アクティブに臨床現場で役立つサービスを提供することを追求していきたいと考えています。

また、この業界は今、転換点を迎えています。これまでの医薬品は、胃薬や血圧の高圧剤などのプライマリー領域の医薬品が製薬企業の主力商品でした。しかし、近年はスペシャリティ医薬品、つまり抗がん剤や免疫抑制剤などの特化した医薬品が新しい商品として増えてきました。こうした薬は、大きな病院で専門性の高い医師が中心となって処方するようになっていきます。

そういったスペシャリティ医薬品の時代に突入する中で、我々のサービスは特に忙しい勤務医の先生が何度も開くという特徴があります。そのため、我々のサービスとスペシャリティ医薬品は親和性が高いと考えています。難しく使いにくいスペシャリティ医薬品を、我々のサービスを通して先生方に知ってもらい、実際に活用してもらえるようにすることが我々の目指すところです。

―そうなると、お医者様のターゲットが少し変わってくるというイメージなのですが、どうでしょうか?

そうですね、薬のトレンドが変われば、製薬企業さんがリーチをしたい、情報を届けたい先生の層も当然変わってきます。その層がスペシャリティ領域を処方する可能性が高い先生方ということになります。そうなると今後は大病院や大学病院が中心となってくると考えています。

―なるほど、貴重なお話をいただき、ありがとうございました。御社のご活躍をお祈りしております。

ありがとうございました。

プロフィール

氏名
五十嵐 北斗
会社名
株式会社HOKUTO
役職
代表取締役