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(画像=シバセ工業株式会社)
磯田 拓也(いそだ たくや)
シバセ工業株式会社 代表取締役
1960年生まれ 大分大学工学部エネルギー工学科卒、1983年日本電産入社 開発部にてモーターや電源、モーター検査装置の開発に従事 1999年芝勢興業㈱入社 2005年代表取締役社長に就任 翌年シバセ工業㈱に社名を変更し、ローテクな世界だったストロー製造にハイテク技術を次々と取り入れストローを工業用部品として使用できる高精度な製品へと進化させてきた。
シバセ工業株式会社
創業は1926年に芝勢家が家業として精米・精麦を始め、1949年に芝勢興業㈱を設立して、素麺の製造に乗り出した。二代目社長は、素麺製造からストロー製造に業態を変更し、三代目の磯田社長の時代に飲料用ストローの技術を工業や医療用で使用できるようにした。1本目の柱が飲料用ストローであるなら、2本目の柱は工業用ストロー、そして現在3本目の柱としてモーター検査装置の事業を始めている。社員の幸せのため、永続的な成長を目指すため、常に新しいことに積極的に挑戦している。

―シバセ工業の歴史やこれまでの変遷について教えていただけますか?

当社のルーツは、1926年から芝勢家が営んでいた 精米・精麦の家業です。1949年に素麺を作る会社 (芝勢興業㈱)を立ち上げたのが、シバセ工業の始 まりです。その後、経営難から二代目社長がストロ ー事業に舵を切り、私が三代目としてそのバトンを 受け継ぎました。

―磯田さんが社長に就任されるまでの経緯についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

私がこの会社に入社したのは1999年です。先代社長の芝勢夫妻には子供が出来ませんでした。私の妻が芝勢社長の奥様の姪という縁で事業承継の話がありました。 当地は私の出身地でもあり自分の親もいましたので、前職を辞めて岡山に帰り事業を引き継ぐことにしました。そして、2005年に社長に就任しました。

―就任された当時のシバセ工業の状況はどうでしたか?

二代目社長が手がけていた飲料用ストロー事業は、約95%が大手飲料メーカー1社の下請け仕事でした。 しかし、下請けの仕事はいつ終わるか分からないリスクがあり、実際に私が入社した頃にはその仕事が大幅に減少していました。就任時は、新しい仕事を捜して何とかして会社を立て直さなければならないという状況でした。

―シバセ工業が始まった当初は、開発部門や事務部門が存在しなかったとのことですが、どのようにして会社を立て直したのでしょうか?

新しい仕事を捜すのに必要なのは営業です。営業専属の社員を一人雇うと同時に営業のサポートとしてホームページを立ち上げました。当初ホームページは、飲料用ストロー販促のためのカタログ代わりでしたが、ホームページを通して飲料用以外のストローの使い道の話が入るようになってきました。そこでこれらのストローを「工業用ストロー」と名付けて販売に力を入れるようにしました。医療関係で使われている場合は「医療用ストロー」と呼んでいま す。 ストローといっても、用途としてはパイプやチューブとしての使い方です。ストローと呼ぶのは 、SEO対策として検索ワードを「ストロー」にするためで、ストローの会社が少ないことから検索で上位に来やすくなります。ホームページなど営業に力を入れてきたことで売り上げも増加してきました。

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(画像=シバセ工業株式会社)

―ありがとうございます。次に、シバセ工業の強みについて教えていただけますか?

シバセ工業はストローの事業をしていますが、日本のストロー産業は衰退しています。業務用ストロー では9割が輸入ストローであり、価格が安くなったために日本のストローメーカーの多くが廃業して残り少なくなっています。典型的な衰退産業ではありますが、ストローのニーズとして多品種・小ロット・短納期の要望はあります。全体の1割ほどの市場であっても国産のニーズはあり、ストローメーカーは数社が残っています。そして競合相手が少ない市 場であることから、1番になるのは難しくありません。 さらに工業用ストローや医療用ストローでは、通常の飲料用ストローに比べて高い精度を求められます。他の飲料用ストローメーカーでは、技術的に対応できません。衰退産業でも技術を突き詰めれば、異分野でも使える技術になりますし、競合が少ないことからオンリーワンの会社になることができます。

―なぜシバセ工業にはその技術があるのですか?

私は前職の日本電産(現ニデック)で開発部に所属してモーターや検査装置の開発をしていました。設計や開発といった技術は、分野は違ってもストローの製造設備の改良やストロー外径検査装置の開発などに活かせました。

―素晴らしい経験ですね。そのような技術を持っていた中で、苦労することはありましたか?

ビジネスをする上でもっとも難しいのは売ることです。例えオンリーワンですばらしい技術や製品であ っても買ってくれる人がいなければビジネスになりません。1社依存であった当社にとって、新しい取引先を作ることがもっとも苦労したことです。

―それは大変ですね。そのような状況の中で、どのように営業活動を進めていったのですか?

営業担当者を1名採用しましたが、営業範囲が全国ではとても対応できるものではありません。そこでホームページを立ち上げましたが、ホームページに来てもらう為には宣伝が必要です。しかし、広告を打つお金はありませんので、マスコミに取り上げら れるようにしてきました。マスコミの記事になると無料で大きな宣伝になります。そして、ホームページに来るためには検索ワードが重要で、「工業用ストロー」というワードを作って「ストロー」で検索してもらうようにして、SEO対策に力をいれました。誰でも知っているストローに対して「工業用ストロー」というワードは、何かな?ということでマスコミが記事を書きやすいワードでもあります。 また、中小企業の「下請けからの脱却と再生」もマスコミが記事にしやすいテーマでもあります。経営の状態でさえも、営業のために使えるものは何でも使うようにしています。

――小さなビジネスから始めると言われましたが、小さなビジネスとは具体的にどういうことでしょうか。

営業マンとしては、効率よく売り上げを増やすには大きな注文を取りたがります。しかし、大きなビジネスでは、採用されるのも難しいですし競争が激しく値段も厳しいため利益が得られるかわかりません。ストローは輸入が9割ですので。大きなビジネスということは海外製と競争することになります。一方国産ストローのニーズは多品種小ロットですので小さなビジネスになります。小さな注文であれば、2社購買で比較されることもなく、値切られることもありません。金額が小さければ採用は早くなります。例え1万円の取引であっても、顧客として1社開拓です。営業マンには、「100万円の1社より、1万円の100社」の開拓を指示しました。

―そのような戦略をとることで、成長が見込めると考えられたわけですね。

顧客が多くなれば、取引が継続して、徐々に大きな取引金額になるところも出てきます。それは100社の中で1社くらいかもしれませんが、1000社見つければ10社は大きく育ってくるということです。 大きな果実のなる木を育てるには、まずは種を蒔かなければ始まりません。小さな芽の時からお付き合いしている取引先は、当社を信頼してくれていますので簡単に逃げていくことがありません。

―会社が飛躍的に成長する一番のきっかけは何だったのでしょうか?

関係があるかどうかはわかりませんが、会社のトイレをきれいにしてから会社が成長を始めたような気がします。少なくともトイレの汚い会社は業績が悪いというのはあるようです。今でも業績が悪くなると、私自身トイレ掃除を志願しています。整理・整 頓・清掃・清潔・作法・躾の6S活動に力を入れるのは、営業の為でもあります。

―未来構想についてお伺いさせてください。

シバセ工業の経営理念は「社員の幸せを追求すると同時に、人類社会の進歩と発展に貢献し、永続的に成長する企業であること」です。未来構想は、全てこの言葉に集約されています。「永続的に成長する企業」とありますが、その目的は「社員の幸せ」の ためです。社員が幸せになるには給料も増やす必要がありますが、そのためにはまず会社が永続的に存続する事が必要であり、さらには会社が成長して利益を増やしていかなければ給料も増えていきません。 「人類社会の進歩と発展に貢献」は社員のやりがいです。やりがいの無い仕事では社員もいきいき働けません。社員がやりがいをもって働き、その仕事が社会に貢献し、会社が成長することで社員の給料が増え働く場が継続されることで社員が幸せになる、そういう会社を目指しています。

―積極的に新入社員採用も行われていることも、何か強い思いがあるのでしょうか。

企業の最大の社会貢献は雇用です。人は働く場があってこそ生活が出来て家族を養えます。地域での雇用の拡大こそ、企業の最大の社会貢献になるわけですから、会社を成長させて社員を採用します。地域の雇用を増やすには、この地で会社を成長させる必 要があります。当社はSDGsに力を入れていますが、SDGsの17の目標のうち1番目は「貧困を無くそう」です。働く場があればお金を稼いで貧困から抜け出すことができます。お金が溜まれば余裕が出来て世界に目を向けることもできるかもしれませんので、まず自分たちの働く場を作ることが第一です。

―具体的な業績計画よりも、経営者の強い意思や発言の方が、社員はやる気になることもありますよね。

業績計画は目標です。目標がなければ誰も頑張ろうとしません。ただし実力とかけ離れた計画は無意味です。実力より少し高い目標を立て、社員に目標を達成させるための後押しをするのが経営者の強い意思表示です。 社員は、能力より少し高い目標をクリアすることで自信をつけて成長し、合わせて会社の成長が目に見えることでやる気になってきます。

―最後に、次世代の経営者に向けたメッセージは何ですか?

何のための会社か、一緒に働いてくれる社員をどうやったら幸せにできるかを考える事が経営者には必要です。自己満足の事業や自分の利益しか考えない経営者では、早晩会社は無くなり社員を不幸にします。一人でも社員を雇った以上は責任が生じます。 会社を継続し社員の雇用を続けるために必要な事業を考えます。当社は素麺で始まり飲料用ストローから工業用ストローへと移り変わり、次の経営者は新しい事業を考えるかもしれませんが、全ては社員の幸せのためです。 もちろん社員の中には経営者も含まれます。経営者が好きでもない事業だけを続ける必要はありませんが、好きな事だけやっては事業の成功はありません。特に事業承継をした経営者などは、まずは社員のために今やるべき事は何かを考えます。やるべき事をやった後で自分のやりたい事をやる心構えが経営者には必要だと思います。

氏名
磯田 拓也(いそだ たくや)
会社名
シバセ工業株式会社
役職
代表取締役