投資信託の売却タイミングはどんな時?
投資信託に投資している場合、iDeCoやNISAといった非課税口座(運用益にかかる税金が無い口座)を通じて行っている人が大半を占めるでしょう。非課税口座を使わずに、わざわざ課税口座を使うメリットはないので、当たり前とも言えます。
iDeCoに関しては、投資信託を利益確定のために売却したところで、資金の引き出しは60歳以降になるので、老後資金として活用するタイミングで売却・引き出しをしましょう。60歳から75歳の間で資産の受け取り開始ができます。受け取りタイミングで暴落が起こるようなことがあれば、マーケットの回復を待ってから売却するのが良いでしょう。
次にNISAや課税口座で投資信託に投資している場合の売却タイミングです。投資信託は商品の性質上、長期間保有することで、コツコツと資産を積み上げていくものです。商品によって投資信託の投資先は異なりますが、1本に投資するだけで、複数の資産、地域、銘柄(企業)に分散投資できる便利な金融商品です。なお、短期間の売買で利益を稼ぐ商品ではないことに注意です。
あくまで過去のデータですが、長期投資を15年以上続けることで、元本割れの可能性をゼロに近づけることができるという分析結果があります。『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール著)が有名です。また、金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」でも1985年から2020年の間で長期・積立・分散投資を20年続けると、元本割れしないという分析結果が公表されています。
元本割れをしたくないのであれば、15年、20年以上経ってから売却するのが良いという一つの目安になります。
このほか、売却のタイミングはいくつか考えられます。
投資信託の売却タイミングは
- ライフイベントが発生した時
- 目標金額に達した時
- 資産が2倍になった時
- 運用しながら取り崩す
1. ライフイベントが発生した時
ライフイベントには、結婚、出産、住宅購入、車の購入、子どもの学校入学、親の介護、転職・退職、自分の介護などさまざまあります。
みなさんが長期の資産形成をしている目的は、こうしたライフイベントに備えるためでしょう。お金が必要になったのであれば、その都度、かかるお金だけ、投資信託を売却しても全く問題ありません。
2. 目標金額に達した時
「500万円の利益が出たら売る」「資産が3,000万円になったら売る」というように“目標”を決めておき、その目標に到達したら売却するという手もあります。
目標金額を設けることで、資産の額を確認したり、売却するタイミングを意識したりすることができます。例えば、資産3,000万円まではインデックス型投資信託でコツコツ積み立て、3,000万円に達した後は、高配当株、高配当ETF、REIT、債券などといった定期的に収入が得られる資産へ換えていくという戦略もあります。
3. 資産が2倍になった時
「資産が2倍になったら半分を売却して投資元本を回収する」という方法もあります。この方法だと、売却した後は、増えたお金で運用することになります。仮に残ったお金を全て失ったとしても、投資元本は既に回収しているので、精神的なダメージが軽減できます。
ただ、複利効果をより活かすのであれば、途中で売却はせずに、運用益も合わせて再投資・運用を続けた方が、まとまった資産を築けることでしょう。
4. 運用しながら取り崩す
こちらは、ある程度まとまった資産を築けた後の売却タイミングです。FIRE(経済的自立と早期リタイア)した人や定年後に老後資金を取り崩す人が実践する方法です。
資産を減らしたくないのならば、増えた運用益の範囲で取り崩すという方法があります。FIREの実践ルールに「4%ルール」があります。4%ルールは「生活費を投資元本の4%以内に抑えられれば、資産が目減りすることなく暮らしていける」というものであり、アメリカのトリニティ大学の研究を根拠にしています。
ただ、死ぬ直前までずっと一定の資産を維持することは、有効なお金の使い方ではありませんので、70歳くらいから計画的に取り崩し、自分が死ぬときには「DIE WITH ZERO」になるのが理想的です。
取り崩しを行う際は、運用資産を一気に現金化せず、運用しながら取り崩すのがポイントです。
なお、iDeCoやNISAで損失が出る売却を行ったとしても、損益通算はできないことに注意です。複数の金融機関の課税口座で運用を行っていて、利益と損失が出た場合は、確定申告をすることで損益通算ができます。損益通算で相殺しきれなかった損失は3年間にわたって繰り越して利益と相殺できる繰越控除も可能です。
個別株の売却タイミングはどんな時?
個別株においては、「利益確定・ロスカットルールの設定」が最も重要です。企業の財務諸表をしっかりと分析し、チャート分析を元にタイミングを計って投資を実行したとしても、買った株が値下がりするのは「あるある」です。株価が戻ることを期待して売らないで持ち続けている人は多いのではないでしょうか。
投資の格言に「見切り千両」という格言があります。含み損を抱えた銘柄に対して、損失の少ないうちに見切りをつけることは千両の価値がある、という意味です。ロスカットは、あらかじめルールを決めておき、機械的に実行するのがポイントです。
「買ったときより株価が○円(○%)下がったら売る」と、数字の目安を設けることをおすすめします。成功している個人投資家の多くは、このようなルールを設けています。一方、利益確定も淡々と行うべきです。投資の格言に「利食い千人力」という格言があります。利食い(利益確定)は千人の力を得るのに等しいという意味です。欲をかいて、持ち続けていたら、株価が下がるなんてことは「あるある」です。利益確定ルールも「買ったときより株価が○円(○%)上がったら売る」と、数字のルールを作ります。
「株価が20%上昇したら売却、株価が10%下落したら売却」といった20-10%ルール、30-20%ルールなどがあります。また、投資期間が10年、20年と長く保有することが前提であるならば、利益確定にはルールを設定せず、ロスカットだけルールを設定するという方法もあります。
このほか、個別株の売却タイミングはいくつか考えられます。
個別株の売却タイミングは?
- 経営陣が交代するなどして会社の方向性が大きく変わった時
- 不正会計、コンプライアンス違反が発覚した時
- 配当や優待の方針が変更した時
- 業績が伸び悩み、成長に陰りが出てきた時
- 保有銘柄より魅力のある銘柄が出てきた時
1. 経営陣が交代するなどして会社の方向性が大きく変わった時
会社の顔とも言える社長が交代するタイミングは売却タイミングの一つです。特にカリスマとも呼べる存在が退陣すれば、今後の企業の成長戦略に関わってきます。
カリスマ経営者として有名なのは、例えば、ソフトバンクグループの創業者であり現取締役の孫正義氏、ユニクロで有名なファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏、楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩氏、NIDEC代表取締役会長の永守重信氏などです。
大企業ともなれば、大きな方向転換は考えにくいですが、売却タイミングとして一考の余地があります。
2. 不正会計、コンプライアンス違反が発覚した時
不正会計をはじめとするコンプライアンス違反は世間から厳しく見られるようになっています。メディアやSNSなどによる拡散スピードも早くなったこともあり、ニュースがひとたび出ると一気に株価が急落します。信頼回復及び株価回復には時間がかかることもあり、売却タイミングの一つと言えます。
3. 配当や優待の方針が変更した時
配当や優待の方針変更ですが、改悪となる発表があると、株価は下落します。高配当や優待を目的に投資している方にとっては、売却タイミングの一つです。増配がストップする、減配する、優待が改悪・廃止となるなどは、往々にして業績が悪い時に起こります。ただ、優待を廃止して、配当に力を入れるといった場合は、様子見でも良いかもしれません。
4. 業績が伸び悩み、成長に陰りが出てきた時
そもそも個別株に個人が投資する目的の大部分を占めるのが、キャピタルゲインでしょう。
株価が右肩上がりで成長していくには、売上高や営業利益が右肩上がりで成長していかなければ期待できません。つまり、業績の悪い企業や業績が停滞している企業は株価上昇の期待薄です。売却タイミングの一つです。
5. 保有銘柄より魅力のある銘柄が出てきた時
投資資金が無限であれば、気になった企業に投資がどんどんできます。しかし現実は異なり、投資資金には限界があります。よって、保有している銘柄よりも、業績好調で勢いがある、より魅力のある銘柄が現れた場合は、保有銘柄を売却して、そちらに乗り換えていくのも一つの手です。
投資判断は人それぞれ。やり方もいろいろ
以上、投資信託や個別株の売却のタイミングについて考えてきました。投資行動の参考になれば幸いです。