株式会社このみアイキャッチ
(画像=株式会社このみ)
相浦 孝行(あいうら たかゆき)
株式会社このみ代表者
人口約3万人の新潟県妙高市にて27歳時に婦人雑貨の小売店から始まる。その後、地元学生からヒントをもらい、制服指定のない学校に通う生徒に向けた自由な制服「自由服」を企画販売。現在は原宿を中心に大阪、福岡など国内店舗と共に、上海にCONOMi Chinaを設立し日本の制服文化が世界のファッションとなるよう邁進している。
株式会社このみ
2000年新潟県妙高市にて創業。学生生活を応援する企業を理念に、学校制服を自由に、かわいく、誰もが憧れるものにしようと考えている企業。既存の概念にとらわれない制服デザインと、3年間安心して着ていただけるクオリティ、これからの時代に合った販売方法ご提供し続けています。

創業から現在に至るまでの事業変遷

―それでは、創業に至るまでの経緯や、会社の成長過程についてお話しいただけますか?

株式会社このみ・相浦 孝行氏(以下、社名・氏名略)::親戚が洋品店を運営しており、一番早く事業を展開するためには、やはり身内の洋品店に参加するべきだと考え、27歳の時にスタートしました。創業は2000年で、当時は親戚が経営していた大阪の店を引き継ぎました。その後、故郷である新潟の妙高市にある、15坪ほどの小さな衣料品店を運営しました。近所の親世代の方々が買い物に来るようなお店でした。

店を引き継いだ後、自分の目標に到達するためには、新たな事業を試す必要があると感じました。その一つが制服事業でした。なぜ制服に興味を持ったかというと、私の母校である地元の高校が制服を廃止していたからです。その事実に気づいた時、買い物に来ていた娘さんが制服がなくなって良かったと言ったのですが、彼女自身は制服を着たいと思っていました。

それを聞いて、私たちは制服をなくそうと散々騒いできたのに、なぜ後輩からそう言われなければならないのかと思いました。しかし、その娘さんが着たいと思っていた制服は、昔のようなものではなく、テレビドラマや映画、CMに出てくるような可愛いものだったのです。その娘さんは高校1年生で、あと3年間しか制服を着る機会がないと言っていました。そこで、私は彼女の夢を叶えるために制服事業を始めることを決意しました。

―それは興味深いですね。では、制服事業を始めた当初はどのように進めていったのですか?

はい、最初は1人のお子さんだけのために、1着だけオーダーメイドで制服を作りました。そのスカートは原価が3万円くらいかかりましたが、1万円で販売しました。私の母が洋服を作る職人だったので、私が材料を手配し、母に作ってもらいました。赤字でしたが、後輩の夢を叶えるためにやったことでしたので、特にビジネスになるとは思っていませんでした。その後、その娘さんが友達を何人も連れて来て、制服を買いたいと言ったのです。

それから、私は制服メーカーから廃盤になった制服や、在庫が余っている制服を探しました。それが事業の始まりでした。当時、インターネットの普及はほとんどありませんでしたが、新潟には自由な制服の学校が2校しかなく、その女の子たちに一通り買ってもらうと、売り上げはほとんどありませんでした。しかし、東京や大阪の学校を調べると、自由な制服の学校がたくさんありました。そこで、私はこの事業が小さなカテゴリーですが、その中で日本一を目指せるのではないかと考えました。

―自身でホームページを立ち上げたと伺いましたが、それはどのようなものだったのですか?

はい、自分で作成したホームページを立ち上げました。そのサイトがどれだけ反響を呼ぶのかは分からなかったのですが、驚くことに、私が住んでいる妙高市という人口3万人の小さな町で、月間120万PVという大きな反響がありました。

しかし、お客様が新潟まで来てくれないので、インターネット通販を始めました。その頃はまだ誰もインターネットでの買い物に慣れていなくて、特に学生はどのように購入するのかさえ知らなかったのです。それでも、春の新入学の時期やゴールデンウィークになると、神奈川や東京から商品を見に来てくれるお客様が増え、この事業を本格的に進めていくことを決意しました。

自社事業の強み

株式会社このみアイキャッチ
(画像=株式会社このみ 原宿店店内)

―続けて、事業の強みは何だと思いますか?

私たちの強みは二つあると考えています。

一つ目は、インターネットの力をうまく活用していることです。2007年に東京で2日間だけ展示販売会を開いたところ、たくさんのお客様が来てくれました。それを見て、翌年から東京に出店することを決めました。

その頃はまだ自社ブランドを持っていなかったのですが、お客様が求めているものと私たちが販売しているものに大きなずれがあることに気づきました。そこで、自分たちで物作りをする必要があると感じ、スカートやブレザーなどは生地から全てフルオーダーで作るようにしました。それが2009年にarCONOMiというブランドを立ち上げたきっかけです。

二つ目は、生地や糸の染めから自社企画で行っている点です。一般的にスカートのデザインには3色や4色が使われることが多いですが、当社では6色を使っています。6色を使うことでデザインの幅が1.5倍に広がるんです。それは、ブラウン管テレビから4Kテレビに変わったような大きな変化と言えます。この強みを活かし、3年間毎日着ても問題ないというユニフォームの品質を作り上げることができており、その品質こそが評価されていると思います。

過去のブレイクスルーや成功実績について

―次に、成功するためのブレイクスルーについて教えてください。

まずは2008年に原宿に出店したことが、大きな転機だったと思います。新潟の田舎から東京へと挑戦し、若者たちが憧れる原宿で勝負をかけました。周囲の人たちは、田舎から大都会で通用するとは思えなかったですが、私たちは挑戦しました。また、出店当初はオリジナルブランドがなかったのですが、2009年に自社ブランドを立ち上げました。

その結果、お客様の95%が自社ブランドの商品を選ぶようになり、商品のバリエーションも増えました。さらに、2009年には外務省から日本のファッションを世界に伝える大使を務めてほしいとの依頼があり、通称「かわいい大使」を1年間務めました。その結果、海外にも日本の制服が伝わり、海外の人たちが日本の制服をかわいいと感じるようになりました。

―なぜ海外、特に中国、香港、台湾の方々に対して事業を展開したいと考えたのでしょうか?

海外のお客様、特に中国、香港、台湾の方々が弊社の商品に大変興味を持って下さっているためです。もちろん、ヨーロッパなど他の地域でも事業を展開していましたが、体型が大きく異なるため、特注で作らなければなりませんでした。そのため、アジアを中心に事業を展開していくことにしました。特に中国を中心に営業活動やその他の取り組みを進めています。ただ、中国で商品を売るためには現地進出が必要でしたが、容易ではありませんでした。

そこで、2018年に「CONOMi China」という貿易会社を中国に設立し、本格的に中国での販売を開始しました。その後、新型コロナウイルスの影響や香港のデモなど、予期せぬ問題に直面しましたが、それでも多くのお客様にご来店いただいています。

―香港やバンコクに駐在していた経験から、中国系の人々が日本の商品に大変興味を持っていることがわかります。しかし、暖かい国では大きな商品はなかなか売れないという課題もあるようですね。

確かに、暖かい国では冬物の売り上げが期待できません。しかし、それでもアジア全体に対して事業を展開していくつもりです。

海外でファッションショーを開催した際、その反響は非常に大きかったです。ヨーロッパで行ったファッションショーでは、多くの取材を受け、外務省の方々からも高い評価をいただきました。また、記者の方々からは、「制服は既成の象徴であり、それを自由の象徴に変えている」という意見をいただきました。

昔から制服を着ながら髪の毛をいじったり、自分らしさを出す努力をするのは、高校生や中学生として楽しいことだと思います。私は、その楽しさは、決められた範囲での自由があるからだと思います。

思い描く未来構想やビジョン

株式会社このみアイキャッチ
(画像=株式会社このみ パンフレット)

―御社の描いている未来のビジョンは何ですか。

日本の制服文化は海外でも非常に人気があり、多くの人々の憧れの存在になっています。しかし、日本の少子化により、学生人口は20年前から比べて半分程度になっています。その結果、学校の生徒数が大幅に減っています。

一方で、現代社会ではLGBTQなどの多様性が求められています。これだけの学校が制服を決めて、他のものを代用できない、選べない時代から、私たちのように様々な種類の制服を持っていて、その範囲の中で選べる制服を広げていきたいと思っています。学生はどんなスカートでも、どんなカラーでも、どんなズボンでもいいという時代に変えていきたいと思っています。

これは、私たちがこれまでやってきたことの延長線上にあるかもしれません。今までは、制服がない人たちに対して、そういう視点で取り組んできました。しかし、制服の需要が減ると、量産できないためコストが上がり、制服が非常に高価になってしまいます。

私たちが提供するカタログには、量産された制服が掲載されています。量産することにより、コストパフォーマンスが高く、それほど価格が上がらない商品を提供できます。このような取り組みを進めていきたいと思っています。

―地方に行くと、その町の洋服屋さんが制服取扱店となっていることが多いと聞きます。しかし、そのような洋服屋さんが10年後にも存在しているかどうかは不明ですよね。後継者問題もある現状を考えると、制服の販売方法にも変化が必要だと思います。

その通りです。私たちは、インターネットで制服を購入できるようにすることを考えています。しかし、中学生や高校生は成長期であり、サイズ選びが大変です。そこで、私たちの経験とIT技術を活用し、サイズアドバイスを提供することを考えています。

例えば、「今の体型は?」「身長は?」「学年は?」「がっちり型か、それともほっそり型か?」といった質問に答えてもらい、それに基づいて3年間着るためにはどのくらいのサイズが適切かを提案します。この機能を持ったECサイトを現在構築中で、今年中には稼働する予定です。

経営者としての心構え

―経営者として、何か特に心掛けていることはありますか?

私たちは新しいこと、前例のないことに挑戦しているので、常に遊び心を忘れずにいたいと思っています。ビジネスだけで、利益を追求するだけではなく、消費者も私たちも楽しみながら仕事を進めることが大切だと考えています。

取り組みとしては、日本制服アワードというイベントを主催しています。これは日本一制服が似合う男女を決めるオーディション・コンテストで、地方の予選から数千人が応募してくれます。最終的には、新学期の前にグランプリが決定し、発表します。このイベントには多くのメディアも注目しています。

現代の社会では、大物芸能人ではなく、自分に近い存在の人々が目標になっていると感じています。つまり、手の届きそうな人々に憧れるということです。そこで、私たちは制服姿の代表を選ぶことで、皆が目指すべき方向を示すことができると考えています。この中で見える人間模様も非常に楽しいですし、参加者の情熱を感じることができ、私たちも一緒に頑張っていきたいと思っています。

プロフィール

氏名
相浦 孝行(あいうら たかゆき)
会社名
株式会社このみ
役職
代表者