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(画像=みたけ食品工業株式会社)
武内 秀行(たけうち ひでゆき)
みたけ食品工業株式会社会長
1957 年 2 月 2 日生まれ
1979 年 日本大学経済学部卒業
1982 年 みたけ食品工業株式会社入社
1997 年 みたけ食品工業(株) 代表取締役社長に就任
2019 年 11 月 みたけホールディング株式会社 代表取締役社長に就任
(グループ会社:みたけ食品工業(株)、(株)豊年屋、キングフーズ(株)、越後しらたま本舗(株))
2021 年 11 月 みたけ食品工業(株)代表取締役社長退任,会長就任
2022 年 11 月 藍綬褒章を受章(全国穀類工業協同組合理事長として)
みたけ食品工業株式会社
1956年に創業、1959年にみたけ食品工業株式会社として設立されました。
創業当初は上新粉の製造を始め、きな粉、麦茶、ごまの製造を順次開始。2010年には新規に米粉製造設備を竣工し、製菓製パン向けの米粉生産を開始しました。きな粉は業界トップの生産数量を誇り、米粉上新粉も業界トップクラスの生産量です。中でも、米粉パウダー300g はノングルテン米粉認証の第一号を取得しています。創業当初から常に時代をリードした製品・研究開発に取り組み、多数の特許申請を手掛けています。中でも「発酵ぬかどこ」は産官学で取り組んだ特許製品で、発売以来ロングセラー商品として愛されています。

創業から現在に至るまでの事業変遷について

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(画像=みたけ食品工業株式会社 社屋)

―それでは、創業から現在までの流れを教えていただけますでしょうか。

みたけ食品工業株式会社・武内 秀行氏(以下、社名・氏名略)::当社は1959年に設立、私が二代目にあたります。最初の製品は上新粉で、その後、きな粉や麦茶、ごま、もち麦など、家庭用と業務用それぞれで手がけるようになりました。機械化を早期から導入した結果、他の同業者を追い抜くことができました。私が29歳で経営に関わった時には、経営について全く知識がなかったので、自分で考え行動するしかありませんでした。その中で、経営をビジネスゲームとして捉え、研究開発や設備投資を積極的に行う、という考えが当時から現在に至るまで変わらない私の根底にある考え方です。

現在では、税制優遇や一括償却などの制度を活用し、設備投資を行っています。また、人手不足などの問題に対応するためにも、新しい取り組みを積極的に行っています。その結果、食品業界の多くの中小企業が一日あたり8時間稼働製造であるのに対し、私たちは24時間稼働製造を実現しています。これにより、3年で設備の償却が可能となり、その後も利益を上げることができます。

そして、既存の製品だけでは将来的な停滞が予測できてしまうため、新しい制度などが出てきた時には積極的に取り入れています。

―ありがとうございます。また、コロナ禍においてスーパーで小麦粉やパスタを見ることが減ったときに、米粉製品の導入を増やしたということですが、これも新しい取り組みの一環でしょうか?

はい、その通りです。その時に新たに製造した米粉商品は、特に女性や子供に喜ばれました。これにより、販売レベルも上がりました。実は当社が初めて最高売り上げと最高利益を出した時期は、緊急事態宣言が出たばかりの時期でしたが、当社の営業もお客様のところへ訪問することが難しくなっていました。その中で、その時期には、スーパーの棚が空っぽになっていたため、普段なら導入が難しい米粉の商品を多くの店舗で取り扱っていただくことができました。

その結果、当社は多くの商品を製造し、出荷する必要が生じました。営業マンたちは自分たちで売る分を自分たちで製造するという形で、夜勤をしながら工場で製造に携わりました。原料の製造工程から製品包装工程まで製造応援を行い、通常1ヶ月かけて販売される数量を2日間で製造し、即出荷していました。その時期、他社が手をこまねいている中、当社はこの状況をチャンスに生かすことができました。

自社事業の強み

―次に、御社事業の強みについてお聞かせいただけますか?

当社の強みは、原料が米、ゴマ、大豆、大麦の4品を扱っていることで、これらを一緒に販売することで取引先に対し多角的な提案が可能である点です。また、お客様のニーズに対して迅速に対応することができる開発力が当社の一番の強みだと思います。当社の開発部門は全社員の中で一割を占めており、事業規模に対して十分な人数以上の社員が開発に携わっています。加えて、特許も積極的に取得していて、産官学連携も強く、実際に「発酵ぬかどこ」という商品も開発しました。

背景としては、大卒かつ理系出身の社員が多く、研究室との繋がりが強いこと、新しい知識を吸収し、新商品に生かしていくという意識が強いことが挙げられます。

地域に愛されるための秘訣や取り組み

―次に、地域に対する取り組みについて教えていただけますでしょうか。

当社は、埼玉県に本社を置いていますが、活動の大部分は都内で行っています。そのため、埼玉と東京が私たちの活動の中心となっています。その上で、都内でのイベント参加や、産官学連携などのつながりを大切にしています。

具体的には、有楽町駅前でのイベント参加、埼玉県産業技術総合研究所との共同開発、を行っていましたが、現在では国とのつながりも深まってきています。当社がさまざまな穀類を扱う企業であり、だからこそそれぞれの組合とも繋がりが深く、国や自治体との活動も多くなっています。

過去に直面した困難や挑戦

―まさにニッチトップ企業といった形で、注目されているのですね。次に、過去に直面した困難や挑戦、そして、それをどのように乗り越えたかについて教えていただけますでしょうか。

正直、困難は常に存在しています。特に、40年前の高金利時代は大変な経験をしました。金利が約7%と高く、付加価値が低すぎて従業員の給与を支払うこと、企業経営そのものの維持が困難でした。しかし、その後は積極的な設備投資により、24時間体制で稼働するという新たな挑戦を始め、土日にも製造するという取り組みを行いました。このような愚直な取り組みがお客様の信頼につながり、徐々にその困難から抜けることができました。

会社運営には常に悩みがつきものです。しかし、そうした中で、チャンスが訪れることもあります。例えば、他社では実現できなかったことを我々が実現できるかもしれないといった機会です。具体的には、例えば、コロナ禍では、自宅でぬかどこを作るという動きが広まり、その製品がメディアやSNSで話題になりました。それが思わぬ当社の販売数量の伸びにつながり、お客様からの信頼を得ることができたと思います。

私は社員全員に「できない理由を探すのではなく、できる方法を見つけなさい」ということを常に伝えています。これまでの経験から、一見不可能に見えることでも、何とかやり遂げることができると信じています。

思い描く未来構想・ビジョン

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(画像=みたけ食品工業株式会社 アフターシックスコーナー)

―では次に、5年後から10年後など中長期的に思い描く未来構想やビジョンについて教えていただけますでしょうか。

数字目標としては、グループ全体売上100億円を設定しています。そのためには、グループ4社間でシナジーを十分に発揮すること、単に食品を製造するだけでなく、機能性や健康品など価値を持たせることでお客様のためになる食品を作り続けることが重要だと考えています。

そこで、今まで培ってきた自社での商品開発力や技術力をさらに磨いていく必要があると考えています。現状では、コロナ禍による負の遺産や原材料費の高騰により、毎年数社ずつ減っていくような厳しい業界環境の中で、私たちは成長し続けています。これからも、研究を深め必要に応じて積極的な投資を行い、掲げた目標達成だけでなく、事業を通してサステナビリティ推進やお客様のためになる企業であり続けたいと考えています。

次世代の経営者に向けてメッセージ

―では最後に、経営者に対するメッセージをお願いいたします。

はい、重要なことは二つあり、一つは未来を見据えること、もう一つは現状からチャンスを見つけることです。人と接したり、何かを見たりする中でどれだけキャッチできるか、それが重要だと考えています。

そして、そこから得た新しい視点を形にすることが経営者の役割であり、実際に私は、特別に何かをするというよりは、日常生活の中で出会う人々や偶発的な出来事から学びを得ています。自分にとって響くものがあれば積極的に取り入れています。このような日常の学びを大切にしていただければ新たな発見があり、それを事業や組織経営に生かすことができると思います。

―ありがとうございました。

プロフィール

氏名
武内 秀行(たけうち ひでゆき)
会社名
みたけ食品工業株式会社
役職
会長