企業名アイキャッチ
(画像=株式会社サトウ産業)
佐藤 明郎(さとう あきお)
株式会社サトウ産業 代表取締役
1964年新潟県出身。工場勤務で気性の激しい父におびえ、やがて対立しながらも勉学に励み、自分の手で国を変えたいという志をもつようになる。早稲田大学教育学部卒業後、積水化学に入社が決まるも父親が病を患い、母親に呼び戻されて新潟へ帰る。父の会社で働くが親子間の不和により心身のバランスを崩して挫折、辞職を決意。2000年、妻とともに不動産会社「ヴィーダ」を創業。しかし、その後もことあるごとに両親と対立し、受難は続いた。2007年にサトウ産業の代表取締役社長に就任。2011年、代表取締役会長である父が退職。残された負債は7億円に上った。2020年に経済産業省より地域未来牽引企業に選定される。2021年、東京証券取引所東京プロマーケット上場を果たす
株式会社サトウ産業
『柔軟』『奇抜』『大胆』をキャッチフレーズに時代の変化に機敏に対応。 高層ビル、大規模商業施設等、建築物の構造体である柱、梁、それらの付帯製品等の設計、製作を手掛けており、国土交通大臣によるHグレード鉄骨製作認定工場を擁しております。 2021年10月に東京証券取引所 東京プロマーケット市場に上場。多様性を強みとし、誰もが平等・公平にチャンスが与えられ、活躍できる会社づくり、人づくりを目指しています。

―初めに、御社の事業の変遷について教えていただけますか?

株式会社サトウ産業は、1974年に私の父が設立しました。最初は解体工事やブラインドなどを手掛け、地元の総合建設業、建築業としてスタートしました。その後、鉄骨の加工も始め、この総合建設業と加工業で30年以上、事業を続けてきました。

―二つの事業を進めていく中で大変だったことなどはありましたか?

両事業をお互い支え合っていた中で起こったリーマンショックですね。これには大きな影響を受けたと思います。

リーマンショックの頃、バブル崩壊後の経済下で地元の仕事は極端に減少しました。その結果、2011年には約2億円の赤字を出し、約7千5百万円の債務超過まで落ち込みました。金融機関も支援をしてくれなくなり、業者も離れていきました。それにより、100円で買えたものが200円になるなど、価格も上昇しました。

社員は40人から50人近くおり、、離れていく人も多くいましたが、残ってくれた社員のためにも、何とか生き残らなければならないと考えました。 そうして苦労した結果、現在では売り上げは、去年30億円、今年は40億円ほどを見込んでいます。 ウクライナの戦争など、様々な要因で事業環境は厳しいですが、それでも、景気は上向きになっていると感じる人が増えてきました。今年の後半から、ある程度の規模には戻ってくると感じています。

企業名アイキャッチ
(画像=株式会社サトウ産業)

―そういった厳しいこともあったのですね。過去から現在に至るまで、この業界の動きはどのようになるのでしょうか?佐藤さん、地元の総合建設業が将来的に縮小するという見方をしていますが、具体的にどのような方向性を予測していますか?

地元の総合建設業には、多くの若者が新卒で参入しています。しかし、頭を使い、体を使い、気を使う総合建築業の現場は、非常に厳しいと感じています。

―それは厳しい現状ですね。そんな中で、今の若い人たちはどのように感じているのでしょうか。

私たちは基本的に昔からこの業界にいますが、バブルの頃から本格的に参入した関東の方々が中心となっています。組織の再開発、ビルの設計など、大きな商業施設の建築に力を入れています。例えば、流通の倉庫など、建物の骨組みの仕事に大幅にシフトしています。

―ありがとうございます。リーマンショックなどの危機を乗り越えた御社には、なにかしらの強みがあると思われるのですが、その御社の強みについて教えていただけますか?

社員を大切にしていることが、一番の強みとしてあげられますね。我々の会社は約49年の歴史があり、現在は80名弱の従業員が在籍しています。リーマンショック時には景気が悪く、仕事が全て停止しましたし、社員の士気も低下しました。 その経験を通じて、「失った金はなんとかなるけど、離れていった人の心は戻ってこない」ということを痛感し、社員を大切にしなければならないということを学びました。 そして、生産性を上げるためには、地元の現場での人間力が必要だと考え、地元の高校を卒業した人々を中心に採用してきました。

―素晴らしいですね。そういった取り組みの裏で成果として出てきている部分はありますか?

時間が経つにつれて、彼らが今の会社の中心になりつつあります。サトウ産業の中で彼らが主導権を握るようになってきます。 彼らは、長期間働きたいという意志を持っており、バイタリティもあるので、会社に活気をもたらしてくれています。

―人を大切にすることを学び、採用や社員との向き合い方を変えた結果、成功へとつなげることができたんですね。大きな成長を遂げる秘訣は何でしょうか。

既存の枠にとらわれず、フレキシブルで創造的な思考を持つことです。 私たちの会社は、若い社員が多く、失敗を経験しながらも進化し続けています。私が常にスタッフたちに、このことを伝えており、その結果、大胆なアイデアが生まれていると考えています。

また、成功のためには冷静さと挑戦の心構えも必要です。私の人生も、失敗と成功を繰り返しながら経験を積み重ねて、その結果が今のサトウ産業を成功させていると自負しています。

―ご自身の経験にも基づいたことが成功の鍵となっているのですね。先程、人を大切にすることが必要だとおっしゃっていたのですが、地域や周りの方々の支えも重要だったかと思います。それに対し、地元のコミュニティで何か特別な活動を行っていますか?

先程の点になるのですが、地元のコミュニティに貢献するため、地域の新卒の若者を毎年採用しています。地域全体として見ると、高校卒業後の進学率は85%を超えています。 しかし、その中には経済的な理由で進学が難しい若者もいます。私たちはそういった若者たちに対して、もし進学できる環境があったら何をしたいのか、どんな職業に就きたいのかを必ず尋ねます。 そこでは、様々な夢を聞くことができますが、現実は厳しく、高校生活を送りながらアルバイトをして生計を立てている者も多いです。

私たちは少しでも彼らの夢を叶えるために、学びの機会を提供したいと考えています。大学卒業者と同等の知識を持つことで、彼らがコンプレックスを感じることなく働けるようにしたいのです。

―そのような貢献経験を踏まえて、将来の未来構想についてどのようにお考えですか?

いろいろと考えていますが、2年前から新たな事業として特定の分野で優秀ながら、自力では活動できない人々を支援するための基金のような事業の計画を立てています。そのために、資金を集めていく予定です。 私の目指すのは、『社会全体が利益を享受できるような事業』です。 そのため、地域社会にとって有益な事業を展開することを目標としています。 このビジョンのためには、日本で優秀な人材を育成し、それらの人材が世界で活躍することが必要だと思います。そしてそのためには、留学生を含む多くの人々に対して、新たな視点を提供することが必要だと考えています。

企業名アイキャッチ
(画像=株式会社サトウ産業)

―新たな視点とは具体的にどのようなものですか?

私たちは日本で活動していますが、世界で活動する視点を持つことが重要だと考えています。そのような視点を持つことで、自分が行けるところまで行きたいと思いますね。

人間の欲求は底なしなので、特に地方に住む若者たちが夢や希望を持つことが重要だと考えています。そのため、私たちは若者たちに対して新たな視点を提供し、彼らが夢や希望を持つことを支援しています。

―これからの経営者たちなどへの支援は考えていますか?

次世代の経営者たちがステージに立つことを支援しています。 私が30年以上にわたって書き続けているブログがあります。そのブログには私の経験や考え方が詳細に書かれているので、それが他の人たちの参考になればと思っています。

―素晴らしいですね。今回いただいたお話から、人を大切にすることの重要さと、それが起点となって成功をおさめている御社のことがよくわかりました。貴重なお話をありがとうございました。

氏名
佐藤 明郎(さとう あきお)
会社名
株式会社サトウ産業
役職
代表取締役