企業名アイキャッチ
(画像=株式会社ワイビーエム)
吉田 力雄(よしだ りきお)
株式会社ワイビーエム 代表取締役社長
1966年、佐賀県唐津市生まれ。1990年九州工業大学卒業。同年4月、㈱吉田鉄工所(現㈱ワイビーエム)入社。1991年2月、代表取締役社長に就任。創業者である祖父の吉田力之助の「製品に魂を入れよ!」の精神を守りつつ、工学の本質は「省くこと」を基本に、高度化かつ簡素化し商品開発を実現。また最新のIT技術も積極的に取り入れ、土木・建設・環境分野のものづくりに邁進する。
株式会社ワイビーエム
1946年創業の研究開発型の環境、土木、建設、鉱山関連の機器メーカー。「地下と水の技術で明日の美しい地球環境づくりに貢献する」という目標の下、開発された製品は国内外で活躍している。中小企業の利点を活かした柔軟性・スピード感・きめ細かい対応で顧客に寄り添いながら、ICTの活用や美しい地球環境づくりへの取り組みも積極的に行い、次世代へ向けて進化を続けている。

―貴社のこれまでの事業変遷について教えていただけますか?

私たちの会社は昭和21年に佐賀県で主に製造業の中でも特に機械加工の会社として設立されました。創業者は当時40歳で、戦前から工場の管理者として働いており、そこから製造業を基本として、故郷で新しいビジネスをスタートしました。

製造業が我々の根幹で、モノづくりを続けてきました。特に穴掘り機械の製造に力を入れており、我々は自社を「穴掘り機械屋」と自称しています。昭和の中期は主に石炭産業がエネルギー産業の中心でした。地元の北部九州にも石炭が豊富にあり、我々は石炭を掘るための道具を加工する事業を始めました。

その後、事業は石炭から土木へと移り、水力発電用ダムの建設に関わるようになりました。さらに昭和の後半になると、徐々に規模が大きくなり、温泉や地熱発電用の蒸気を掘るための大型の穴掘り機械を製造し始めました。

バブル期に入ると、東京で特にウォーターフロント事業が活発になりました。穴を掘ってセメントを注入する「地盤改良ジェットグラウト」という技術を開発し、都市土木事業に進出しました。しかし、バブルが崩壊すると土木建設業界は冷え込み、非常に厳しい状況になりました。

バブル後は事業方針を変え、小型の地盤改良事業を始めました。これは住宅の地盤を改良するもので、阪神淡路大震災がきっかけとなりました。家が倒れないように地盤を固めることが求められるようになったのです。この小型の地盤改良事業が現在の我々の主力事業となっています。

令和に入り、より大規模な地盤改良事業に進出しました。特に国土交通省が推進しているICT地盤改良施工に注力しています。機械の制御から測量まで、ITとGPSを活用した施工が求められています。これが現在の我々の新たな挑戦となっています。

―時代と共に事業の形を変えてきたということがよく分かりました。次に、YBMの強みや成功事例について教えていただけますか?

私たちの強みはバブル経済が終わった後から地盤改良を手がけ、ハードウェアとソフトウェアを一元管理し、融合させてきたという実績です。特に、大手ハウスメーカーから出されるミリ単位の厳しい要求に対しても、精密な機械測量や制御技術を使って、的確に答えることができたことが、私たちの技術力向上の一因となりました。 その結果、土木機械分野においては日本でもトップクラスの地位を確立できています。

―これまでに培ってきた技術が他社との差別化になっているのですね。

そうですね。求められる技術というのはそれぞれの業者によって違うのですが、我々はそのニーズに対応できるようなソリューションを提供しています。特に注目していただきたいのは、セメントを穴に送り込むためのポンプです。このポンプはユーザーのニーズを的確に捉え、その結果として全国の市場でトップシェアを獲得しています。

―ポンプにおいて、どのような点が評価されているのでしょうか?

例えば「水を送る」という表現はイメージしやすいかと思います。しかし、「セメントを送る」というのは、研磨剤が混ざった状態のことを指します。この状態では、パッキンなどを使って水漏れを防ぐ必要がありますが、使っていくにつれて、パッキンがすり減っていくため、我々は摩擦を減らしてポンプの寿命を延ばす技術を開発しました。これが我々の技術力の強みであり、その強みが評価されています。

―それはすごいですね。そのような技術者は定期的に採用されているんですか?

はい、そうです。技術者は我々の業務において非常に重要な役割を果たしています。特に営業においては、技術者が直接お客様のもとに行って、具体的な提案をする必要があるため、技術的な知識を持った人材が必須です。

―これまでに直面した壁や、ブレイクスルーについて教えていただけますか?

やはりバブル崩壊後の建設業の不況が一番大きな壁でした。その時、売り上げが半分に落ち込みました。しかし、そのような状況下で大手住宅メーカーからの要求を一生懸命に実現し続けたことが、今の開発の基盤となりました。 土木の世界ではミリ単位の精度で説明することが要求されます。その中で、お客様のニーズに正確に答えていくことで、評価をいただくことができ、それが不況を乗り越えることができた要因になったと感じています。

―ありがとうございます。他にはどのようなブレークスルーがあったのでしょうか?

東日本大震災の後には地盤の事業で売上が大きく伸び、これは会社にとって大きなブレイクスルーとなりました。ただ、新型コロナウイルスが流行した時期には売上が減少しました。これはコロナではなく、オリンピックの影響です。基礎工事の業界としては、2018年をピークに売上が減少すると予測していました。しかし、現在はコロナ影響で商品が供給できない状況が続いています。

―ありがとうございます。これからの展望について教えていただけますか?

私たちの会社は、2046年に達成したい目標があります。2046年は創業からちょうど100年の節目となる年で、『月で穴を掘る』という目標を達成したいと考えています。

―それは大きな目標ですね。そのために今取り組んでいることなどはありますか?

穴掘りとは、文字通り地下空間を掘り出すことを指しています。私たちは、地下空間を有効に利用する技術を提供し、それによって社会に貢献したいと考えています。もちろん、その過程で地球環境を考慮し、環境に配慮した技術を開発していきます。

現在、私たちは自律型の穴掘り機械の開発に力を入れています。人口が減少する中で、労働力不足を補うためには、自律型が必要です。これまで以上に技術力が求められるようになってきていると思います。

―そのような取り組みは、地球の保全にも寄与するということですね。

はい、その通りです。建設機械は地球を形成する一方で、環境破壊を引き起こす側面もあります。しかし、私たちは地球を壊すのではなく、使いやすい形に変えていくことを目指しています。そのためには、地球環境に優しい技術の開発が必要です。実際に、2040年には現地調査を行いたいと考えている社員もいます。

―それはとても夢が広がる取り組みですね。吉田さん自身、どのような思いでこのビジョンに取り組んでいますか?

私自身、このビジョンに向けて全力で取り組んでいます。地球環境に優しく、人々の生活を豊かにする技術を開発することは、非常に意義深いことだと考えています。

―最後になりますが、次世代の経営者に送る言葉などを頂けますでしょうか?

経営において重要なのは、計画を立てる際に楽観的に構想を立て、 現実に即しもしものことも想定し悲観的に計画し、あとは楽観的に行動するしかないと思っています。 常に坂というものはあります。営業成績としては上り坂も下り坂もあります。しかし、一番気をつけなければならないのは、「まさか」ですかね。

そういう意味ではコロナなどもまさかの世界ですね。このような予測できないところをどう乗り越えていくかが本当の経営者の手腕が活かされるところだと思います。

氏名
吉田 力雄(よしだ りきお)
会社名
株式会社ワイビーエム
役職
代表取締役社長