1984年生まれ、岩手県出身。東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻後期博士課程にて、スーパーコンピュータの為の最適化コンパイラ技術を研究。AI/IoT技術を利用して物理世界をデータ化する事業にチャレンジしたいという想いから、大学を中退し2015年にIdein株式会社を設立。2018年には半導体大手の英ARM社から「ARM Innovator」に日本人(個人)として初めて選出された。
これまでの事業の変遷について教えてください。
私は元々大学でコンピューター科学を研究していました。非常に熱心に取り組んでいたのですが、諸事情で大学で研究を行うことのモチベーションが下がってしまいました。その経験から、やりたいことを突き詰めていくために自分で会社を作ることを決めました。「ソフトウェア化された世界を創る」というビジョンを掲げ、あらゆる現実空間の情報をデータ化する仕組み作りに取り組んでいます。 研究・開発を行い続け、5年かけてプロダクトを開発しました。現在では、ファミリーマートさんなどで大規模なデータの収集にそのプロダクトを活用頂いています。私のやりたかったことが徐々に現実になりつつあります。
一番感銘を受けた書籍とその理由を教えてください。
湯川秀樹氏の「目に見えないもの」というエッセイ集です。この作品は彼の様々な興味や反省を深く掘り下げたものです。通常の学術書では感じることの難しい感動や視点を与えてくれ、人生をかけて何をするかということを考えさせられた本です。
特に印象的だったのは、'物質と精神'というセクションです。そこで湯川氏は物理学の範囲を超えて、人間が生命と物質をどのように区別し、精神という概念をどのように認識しているかという問いについて語っていました。その哲学的な洞察に非常に感銘を受けました。また、'真実'と'未来'という詩も、私にとって深い感銘を与えるものでした。この詩は、「複雑に変化する世界において'真実'と呼べるような変化はほんの少ししかなく、しかしその'真実'こそが'未来'において現実になるのだ」ということを言っています。昨今、世界の経済や情勢が大きく変化していますが、重要なものを見極め、それが現実になるのだという信念を持つということが経営者として重要だと考えています。
専門的に物事を徹底的に突き詰めた人は、世の中の様々なことが普通の人とは異なって物事が見えてきます。私は湯川氏の、物理学を突き詰めたからこそ生まれてくる発想や信念を持っていることに感銘を受けました。
経営において重要としている考え方を教えてください。
自分独自の視点に基づいて新たな価値を生み出すことです。私は専門性を深く追求し、その過程で獲得した特別な視点や信念を原動力にして事業を進めています。例えばAIに注目した際に、私はそのAIの裏側で動いているコンピューターやソフトウェア、通信や消費電力など知らない人が多い部分の仕組みを理解しています。この知識を使って、他の人が見えないような専門的な視点をビジネスに活かしていくことができます。
人々が見ていない世界を見つめ、その中に眠る価値を見つけ出し、それを具体的な形で顕現する。そういったことこそが、企業がさらに高い成長を遂げるための鍵であると信じています。
最後に、御社の未来構想や従業員への期待について教えてください。
私たちの未来構想は、物理的な世界を全てデータ化し、そのデータを分析・予測し、新たな価値を生み出すことです。そのデータが身の回りのシステムやサービスの基盤となるインフラを作ることを目指しています。ソフトウェアの世界において1番重要なインフラの部分を作り、私たちがいなければ成り立たない世界を作っていきたいと考えています。
これを実現するために、全ての社員には、このビジョンに共感し、個々の能力を最大限に発揮して、私たちでなければ実現できない課題に挑戦してほしいと期待しています。また、その過程で個人の専門性・強みを磨き、個々の視点から新たな価値を発見し、組織全体としての成長を促進してほしいと考えています。
- 氏名
- 中村 晃一(なかむら こういち)
- 会社名
- Idein株式会社
- 役職
- 代表取締役