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(画像=株式会社アイデミー)
石川 聡彦(いしかわ あきひこ)
株式会社アイデミー代表取締役 執行役員 社長
東京大学工学部卒。同大学院中退。在学中の専門は環境工学で、水処理分野での機械学習の応用研究に従事した経験を活かし、 DX/GX人材へのリスキリングサービス「Aidemy」やシステムの内製化支援サービス「Modeloy」を開発・提供している。著書に『人工知能プログラミングのための数学がわかる本』(KADOKAWA/2018年)、『投資対効果を最大化するAI導入7つのルール』( KADOKAWA/ 2020年)など。世界を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN 2019」「Forbes 30 Under 30 Asia 2021」選出。
株式会社アイデミー
アイデミーは、「先端技術を、経済実装する。」を企業理念とする、2014年創業のベンチャー企業です。AI/DXに関するプロダクト・ソリューション事業を展開しております。法人向けには、デジタル人材育成支援のためのオンラインDXラーニングや研修を行う「AI/DXプロダクト」、デジタル変革をコンサルティング型で伴走支援する「AI/DXソリューション」、また、個人領域におけるデジタル人材育成支援として「AI/DXリスキリング」を提供しております。

―まずこれまでの事業の変遷について伺いたいと思います。2014年にご創業されたとのことですが、そのきっかけなどをお話しいただけますでしょうか?

私の場合、サークルを立ち上げるように会社を立ち上げたのが最初の創業のきっかけでした。当時はビジネスを一日でも早く始めたいという強い意志で会社を設立しました。21歳、大学三年生の時に、アイデミーの前身となる会社を設立し、何度かピボットした後に現在のサービスをスタートしました。

―社名の由来にも繋がっていますが、AIとアカデミーに注目したきっかけを具体的に教えていただけますか?

最も大きな要素としては、自分自身の学生時代の経験があります。私は都市工学科に所属しており、大学4年生の際に水処理を専門とする研究室に配属されました。水を浄化するプロセスをAIを使って最適化するという研究に取り組んでいました。

―なるほど、その研究の中で何か課題を感じたのですか?

教授や先輩、同期は水についての専門家だったため、AIやデジタル技術の活用方法について自力でインプットするのにとても苦労しました。どのように学べばいいのか、どのコンテンツがわかりやすくて何が最良の教材なのかもわからなかったのです。

―なるほど、それがAIを使ったサービスを作りたいと思ったきっかけなのですね。

そうです。私が取り組んだのは水処理の分野でしたが、自動車の自動運転や医療の向上、素材の研究など、あらゆる分野でAIの応用が必要とされています。同じような課題が各研究室や事業の現場で出ていることを知り、AIをどこでも活用できるサービスを作りたいと思い、2017年に社名を株式会社アイデミーに変更し、AI/DX人材育成のサービスを立ち上げました。

―最初にサービスを作った際のターゲットはどのような方々だったのでしょうか?

最初は自分と同じような大学院生や研究生、そして若手の社会人をターゲットにしてサービスを開発しました。ところが、実際にサービスを利用している方々の中には、30代や40代のプロフェッショナルな研究者の方も非常に多くいらっしゃいました。それに加えて、会社の経費で受講される方も多かったのです。

―そこから何か変化はありましたか?

はい、個人ではなく法人の方がニーズがあるということが分かり、2018年に法人向けのサービスの展開を始めました。それが大きな転機となりました。

―個人向けのサービスから法人向けに拡張されたというわけですね。その後の事業展開はどのような形だったのでしょうか?

2018年に法人向けのサービスを展開してからは、大きく方向性を変えず、サービス内容の充実に努めています。 我々が展開している事業(AIを学べるということ)は、テクノロジーの時代を生き抜く法人様が、一番初めにぶつかる壁を解決できるということを明らかにしました。しかし、 AIを学ぶというのは、法人にとってのゴールではありません。AIを学んだ人材が活躍して新規事業を作り、生産性を上げたり、業務効率化をして利益性を高めることがゴールです。そのため、我々はまずAidemyというサービスを日本中に広め、それを強みにして次のフェーズのサービスを展開しています。

―新規事業の立ち上げや業務効率化という点では、Aidemyというサービスを用いることで、難しいものではなくなるということでしょうか?

その通りです。私たちアイデミーは、最先端の技術を経済実装するという目的で立ち上がった技術者集団です。社内にはデータサイエンティストが複数在籍しており、オンラインで学習できるサービスもほとんどすべてを自社で開発し、コンテンツもシステムも自社で作っています。ですので、ウェブアプリケーションを作る能力やAIを使ってデータを解析する能力を持っています。お客様もAIやDXといったテーマについてこれまで取り組んでこなかったことがほとんどで、「0→1」を作る能力を求めていると感じています。アイデミー自身の成功体験を少しずつシェアしながら、お客様と一緒に新たな事業を作っていきます。

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―次に御社の事業の強みについて伺いたいと思いますが、一番の強みは何だと思いますか?

弊社の一番の強みとして顧客基盤とサービスの拡大可能性の大きさがあると考えています。顧客基盤という点では、従業員が1,000名以上のエンタープライズが中心となっており、累計で400社以上の導入実績があります。フォーチュン・グローバル500に選出されるような日本企業の70%から導入をいただいており、世界を代表する企業から選ばれていることが、私たちの強みだと考えています。

―大企業のお客様が多いということに関して、このマーケットに参入を考えている会社は多いと思いますが、その中でアイデミーが成功を収めている要因は何だと思いますか?

私たちがAIに特化した教育コンテンツを一貫して作り続けてきたことが大きな要因だと思います。現在、180以上のコースを開設していますが、これは一朝一夕に作れるものではありません。一つ一つ、講師の先生と丁寧に内容を合わせて作り上げてきました。

多くのライバル企業は”研修”を提供していますが、私たちはコンテンツを作る会社です。アイデミーは2017年からAIに特化した教育コンテンツを作り続けてきました。コンテンツの数やその構築方法に、独自のノウハウがあります。 去年は自動車メーカーのマツダさまや食品メーカーのニチレイさまにて全社で利用していただき、今年はキヤノンさまにも導入いただきました。社員規模が10,000名を超えるような企業では、どのコンテンツを選ぶべきか、その選び方が職種や年次、目標に応じて大きく変わります。多くのAIに特化したコンテンツを用意し、それを組み合わせて提案できる優位性、それこそが成功を収めている要因だと思います。

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―人材育成以外の分野において、ニーズに応えることは可能でしょうか?

もちろん、我々が提供したいのは、人材育成だけではありません。人材育成を通じて関係性が構築できるため、次のビジネスチャンスは豊富にあります。まさに今、人材育成だけでなく、プロジェクト伴走型のAIに特化した高付加価値なコンサルティング事業をはじめ、人材育成以上のサービスの提供も強化しています。そういった意味でサービスの拡大可能性も我々の強みの一つと言えるでしょう。

―現在最も関心があるトピックや関心事項とその理由を教えていただけますか?

生成AIというテクノロジーに大いに関心を持っています。特に、2022年の11月頃から、ChatGPTが世界を変えており、AI・機械学習関連の技術のブレイクスルーが目に見えるようになったことが印象的です。 画像生成や音声生成は、エンターテイメント分野でよく利用されており、例えば、可愛らしいキャラクターを生成したり、TikTokの動画を作成したりといった場面で使用されています。しかし、これらの技術はエンターテイメントだけでなく、産業分野の設計開発などでも活用されており、これからもその活用範囲は広がり続けるでしょう。 生成AIの技術は、私たちの見ている世界を大きく変える可能性を持っており、私はその可能性を追求しているところです。

―ありがとうございます。石川さんが思い描いている未来のビジョンについて教えていただけますか?

私たちのミッションは「先端技術を、経済実装する。」ことです。これは、既存の事業をしっかりと成長させることで実現できると考えています。

具体的には、日本の1000名以上の従業員を持つエンタープライズ企業約4000社のうち25%、つまり1000社をお客様として獲得することです。一社あたりの平均単価予想は約5000万円で、売上500億円。営業利益率20%で100億円の利益獲得を目指します。新規事業においては、AIやDXだけでなく、最近注目されているカーボンニュートラルやESG、ネットゼロといった分野の教育コンテンツの提供やプロジェクト伴走型支援に注力していくことも考えています。

―新しい技術や環境に関する教育コンテンツを提供することで、さらなる成長が期待できるというわけですね。マテリアルズ・インフォマティクス領域の取り組み「Lab Bank」についても詳しく教えていただけますか?

マテリアルズ・インフォマティクスは、機械学習やデータサイエンスの活用により、材料の製造方法を予測するなど、材料開発の効率化を図る取り組みです。この分野で研究開発組織が研究にフォーカスするためのデータ活用のSaaSを、我々は新たにリリースしています。これも新規事業の一つとして取り組んでいます。

―ありがとうございます。様々な事業構想についてお伺いさせていただきましたが、特に今、重点的に力を入れていることは何ですか?

私たちの会社では、人材採用が大きな課題となっています。ただ人数を揃えるだけでなく、優秀な人材を採用し続けることに注力しています。これは、今後の成長に向けて重要なポイントであり、私たちが大切にしているアクションプランの一つです。

―なるほど、人材採用に力を入れているのですね。研究開発や新しいシステム開発には大きな投資が必要なのでしょうか。

投資は必要です。特に、人材採用には大きな投資が必要です。採用する職種には、データサイエンティストや研究者なども含まれています。これは研究開発投資の一部とも言えます。また、広告宣伝やコンテンツ制作にも投資をしています。上場前の調達資金とこれからの事業から生まれるキャッシュフローを効果的に活用していきたいと考えています。

―最後に読者の皆様へメッセージをお願いします。

私たちはAIに特化した高付加価値なコンサルティング事業に力を注いでいます。この事業の一年間の成長率もかなり高いものを誇っております。弊社としては、上場はあくまでスタートラインで、これからも様々な挑戦を通じて成長していきたいと思っています。どうか私たちの挑戦を見守り、応援していただければと思います。

氏名
石川 聡彦(いしかわ あきひこ)
会社名
株式会社アイデミー
役職
代表取締役 執行役員 社長