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(画像=西山製麺株式会社)
西山 隆司(にしやま たかし)
西山製麺株式会社代表取締役社長
1958年 北海道札幌に生まれる。1981年 中央大学商学部卒業 大学卒業後はファミリーレストランの会社に就職1983年 西山製麺入社。麺の通信販売事業に従事する。2001年 代表取締役社長就任2013年 ドイツのディセルドルフにSAPPORO NISHIYAMA EUROPE GmbH を設立2014年 アメリカのワシントンD.C.にSAPPORO NISHIYAMA U.S.A., INC を設立。趣味は写真撮影。海外出張時にはコンパクトカメラを持ち歩き、異国の風景を撮影して気分転換をする。
西山製麺株式会社
ラーメン屋台『だるま軒』で製麺部門を担当していた西山孝之は、1953年に西山製麺所として独立。日本で初めて『ウェーブのかかったちぢれ麺』『黄色い卵入りラーメン』を開発し世に送り出しました。同時期に誕生した『味噌ラーメン』と共に全国へと広がりました。現在、西山製麺は約5000軒のラーメン専門店に麺を卸し、アメリカやドイツをはじめとする海外35の国と地域と直接貿易を行っています。

―これまでの経歴について教えていただけますか?

西山製麺の麺造りは、1947年に自家製麺のラーメン屋台からスタート。1953年に製麺部門が独立し「西山製麺所(今の西山製麺)」となりました。1955年頃から札幌ラーメンの特徴である『濃厚なスープ』『フライパンで炒めた調理スタイル』『味噌ラーメン』が誕生し、それらに合わせるために『多加水熟成麺』『ちぢれ麺』『黄色い卵ラーメン』の開発を行い世に送り出しました。

当初は、ほぼ100%ラーメン専門店との取引でした。昭和40年代から全国的な札幌ラーメンの人気に後押しされ家庭用の小売市場、昭和50年代からは北海道への観光客の増加に合わせてお土産市場、昭和60年代からは通信販売市場、その後、平成時代に入ると海外市場へと広がり始めました。

―現在の市場についてはどのような状況でしょうか?

現在、北海道市場が50%、北海道を除く国内市場が35%、海外市場が15%ぐらいの割合になっています。販売先の内訳を見ると、ラーメン専門店などの外食市場が約60%、家庭用や御土産が約40%となっています。

―なるほど、次に、御社の強みや成功事例について教えていただけますか?

我々の強みは、全国の製麺会社とは異なり、生産性重視ではなく、オーダーメイドの製麺に特化していることです。麺の味だけで500種類以上レシピがあります。御客様が望むラーメンと相性が良い『麺の太さ』『縮れ具合』『白や黄色の色調』『小麦の品種による香り』等を、御客様の好みを聞き、それに合わせて製麺を行います、このようなオーダーメイドの製麺は全国的にも非常に珍しく、我々の強みとしています。

―それは驚きですね。全ての製麺がそのような形で行われているとは思いませんでした。ありがとうございます。では次に、地域での取り組みはどんなことされてますか??

札幌ラーメンを通じて、北海道の農産物、地下水、食の歴史、流通やリサイクル、商品開発や輸出、等の学習を、札幌市教育委員会と連携し、小学3年生の工場見学を通じて行っています。

―それは素晴らしい取り組みですね。札幌の小学生全員が参加しているのでしょうか?

毎年、札幌市の約180校(ほぼ100%近く)の小学校から、約1万8000名の3年生が社会科見学の一貫で工場見学に訪れています。この授業は1987年から『わたしたちの札幌』という教科書で年間8時間ほど学んでいます。

―日本のラーメンの歴史について教えていただけますか?

日本の麺類の歴史は『うどん』や『そば』から始まります。ラーメンの歴史は中華麺として『経帯麺(けいたいめん)』が室町時代の書籍に記録されています。江戸時代の末期に出島からチャンポンや九州の白濁したスープが登場しました。 その後、明治開国により横浜や神戸などの港町で中国から入ってきた中華そば(中国式ラーメン)が、日本の食文化である醤油と出会い、現在の日本のラーメンに進化しました。

―それは驚きです。また、学校でラーメンの歴史を学ぶとは思いませんでした。

このような麺料理の歴史や文化が全国にあるのに、学校で積極的に学んでいるのは誕生して僅か70年ほどの『札幌ラーメン』だけなんです。

―それは興味深いですね。また、海峡線などの新規プロジェクトにも取り組んでいると伺いましたが、それについて詳しく教えていただけますか?

過去にアンテナショップとして、生パスタを使った飲食店を開いたことがありました。しかし、店舗運営については時期早々だった事もあり、飲食店経営のプロに譲渡しました。その為、現在は自社での飲食店経営は行わず、プロの飲食店が出店し成功できるようにサポートを行うようにしています。サポート方法として主に海外進出を望む御客様に対し、市場調査も兼ねた『イベント』『飲食店コラボ』等の情報を集め期間限定での出店できるように支援を行います。

―それは具体的にどのようなことを体験してもらうのですか?

例えば、現地で受け入れられる『味』『客層』『従業員の雇用』『行政の対応』などの違いを体験してもらう事です。現地で実体験し現実を知ってもらう事が重要だと考えています。

―行政からの具体的な指導やアドバイスは受けていないとのことですが、それでも事業を推進する上で何か困難はありましたか?

我々が行う海外進出を望んでいる御客様に対しての支援の内容は、行政やコンサルタントの指導を受けておりません。何故なら我々が考える成功するピジネスのポイントは、様々な選択肢から自らがジャッジする事が大切だと思っている為です。海外では思ってもいない理由から営業停止に追い込まれるケースが多く、最終判断は自己責任で行う必要があるからです。

―2019年に店舗を開設したとのことですが、その後の展開はどのように進んでいましたか?

2019年にシンガポールで店舗物件を用意し海外進出を目指す御客様に『期間限定の店舗』を貸し出す事業を計画しました。しかし、世界的なパンデミックの影響で出店希望の店舗が現れず、過去の生パスタを使った飲食店と同様に譲渡する事となりました。

―海外の取引先も多いということですが、具体的にはどのような国や地域の方々と取引をされているのですか?

現在、中東を含む世界35の国と地域にあるラーメン店と取引を行っています。

―最後に西山さんが思い描いている未来のビジョンについて教えていただけますか?

もちろんです。今、日本は少子高齢化と人口減少が進行しています。これにより、食事をする人口が減り、食事の量も減っています。これは人口減少と高齢化の影響で、食事をする人口が減っているという現象です。これを考慮すると、ラーメン業界は世界を見据えるべきだと思います。日本食全般においても、世界で利益を得る商品作りを進めていく必要があると感じています。 かつて、日本に中国からラーメンが入ってきて、日本の食文化である醤油や味噌と融合し新たなラーメンに進化したように、世界各地で現地の食文化と融合し新たなラーメンが生まれることでしょう。 私が以前、イタリアのローマにあるお客さんの店を訪れた時のことを思い出します。その店の一番の売れ筋はカルボナーラーメンだったのです。

イタリアにはパスタ文化があり、カルボナーラが日常的に食べられています。そのカルボナーラがラーメンと組み合わさった結果、カルボナーラーメンが生まれ、大変な人気を博していました。 現地の人々は、日本の動物系スープのラーメンに、地元のキノコソースをトッピングしたラーメンも人気でした。次いで味噌ラーメン、醤油ラーメンが人気でした。 これらの事例から、ラーメンが各国に入り込み、新たなラーメンが生まれることを期待しています。私は、ラーメンが寿司以上の市場を創出する可能性があると思っています。 現在、世界的にラーメンブームが起こっていますが、これはまだ始まったばかりです。このブームは、今後何百倍、何千倍にも成長する可能性があります。それだけではありません。日本食の中でも、ラーメンは地方の食文化と融合しやすく、新しいジャンルを生み出しやすいと考えています。これは寿司以上の進化を遂げる可能性があると思います。

―それは興味深いですね。他にも何かありますか?

はい、ハラールです。中東をはじめとする地域では多くの方がハラール食品を求めています。

―なるほど、それは大きな市場ですね。

また、健康を意識したグルテンフリー食品やオーガニック食品などもあります。海外では大きな市場を形成しています。これらの食材や調理方法に制限がある分野に対し、ラーメンは十分に対応できると考えています。

―ドバイ政府から認可を取得しているということは、ラーメンの普及が進んでいるということですね。これからの未来構想や目指す世界観について教えていただけますか?

我々は積極的に世界中にラーメンの食文化を広げて行きたいと考えています。ただし、焦って大きな市場を取り込むことは考えておらず、自社の強みを生かして事業を展開していきたいと思っています。

―市場の拡大は焦らず、自社の強みを活かすということですね。

はい、その通りです。まずは本物のラーメンを提供し現地の市場に進出することを考えています。その後から他の市場を狙っていくのも遅くはないと考えています。

―まずはブランド価値を高めることが重要ということですね。

そうです。安売りから市場を狙うと、ブランド価値が低下してしまいます。そのため、まずはブランド価値を高めてから広く市場を狙っていくのが良いと考えています。

―その戦略は、欧米でも有効だと思いますか?

はい、この戦略は全世界で有効だと思います。ラーメンの市場規模は、今後、さらに拡大するでしょう。

―ありがとうございます。それでは最後に、次世代の経営者へのメッセージをお願いします。

人口減少や少子高齢化により経済は縮小していくと言われていますが、環境は常に変化しています。その中で、日本国内だけでなく世界的にビジネスを展開することを考えるべきです。それは大企業も中小企業も同じです。それぞれの会社、あるいは個人が持っている強みを活かして事業を展開することが重要です。弱みを克服することも大切ですが、それよりも自分の強みを活かすことが一番だと思います。国内で活かせない場合は、海外で活かすのも一つの手段です。

また、中小企業の皆さんには、海外との結びつきを深めることをお勧めします。単なる労働力としての外国人雇用ではなく、スタッフとして海外の人材を採用することも大切です。特に飲食業界では、海外の人々の味覚を理解するためにも、海外の人材を採用することが有益です。 私たちのビジネスは、国内だけでなく、海外でも展開することが求められています。そのためには、自分たちの強みを活かすことが必要です。それが次世代の皆さんへのメッセージです。

氏名
西山 隆司(にしやま たかし)
会社名
西山製麺株式会社
役職
代表取締役社長