「個の時代」に突入した今、一人ひとりが発信者となり、自分の声を世界に届けられる可能性が広がっています。そんな中、株式会社トリドリは、インフルエンサーマーケティングやマッチング事業を通じて、個人の力を引き出し、磨き上げる役割を果たしています。彼らの使命は、個々の声が社会を前進させる「未来の担い手」になること。そして、影響力のある個人と企業が出会える場を提供することです。今回は、そんな株式会社トリドリの代表である中山貴之氏に、会社のビジョンや戦略、そしてこれからの展望について話を伺います。
1990年生まれ。ブロガーとしてインフルエンサー活動を行う傍ら、2010年よりインフルエンサーマーケティング事業を始める。 12万人(2022年9月末時点)のチャンネル登録者を持つYouTuberとしても活動。 長い業界経験と自身のインフルエンサー経験を活かし、2016年6月に株式会社アップロント(現・株式会社トリドリ)設立。2022年12月に株式会社トリドリが東証グロース市場上場。
事業変遷について
冨田: それでは、株式会社トリドリの代表取締役社長CEO、中山貴之さんにお話を伺いたいと思います。まずは、中山さんが起業されてから現在に至るまでの事業の経緯について教えていただけますか?
中山: はい、株式会社トリドリは、「『個の時代』の担い手」となるインフルエンサーの支援をするビジネスを展開しています。インフルエンサーの影響力を通じて、消費者や企業、ファンなどの世界を広げることをミッションに掲げており、複数のビジネスを行っております。最初にスタートしたのは、成果報酬型のインフルエンサーマーケティングビジネスである「toridori ad(トリドリアド)」です。その後、インフルエンサーマーケティングの需要が広がり、企業の認知が拡大する中で、「toridori promotion(トリドリプロモーション)」というタイアップ型の広告をスタートしました。
その後、中小企業や個人向けにもインフルエンサーマーケティングを展開し、「toridori base/toridori marketing(トリドリベース・トリドリマーケティング)」というプロダクトを開始しました。これは、中小企業とインフルエンサーをマッチングするサービスで、代理店の担当者がアナログでキャスティングを行っていたものを、プラットフォーム化してより多くの人に使いやすくなるようにしたものです。企業向けのPR依頼サービスが『toridori marketing(トリドリマーケティング)』、インフルエンサー向け案件管理アプリが『toridori base(トリドリベース)』で、この2つが対面となってマッチングプラットフォームを形成しています。 この2サービスは、中小企業や個人のお店にも利用されており、インフルエンサーマーケットを広げています。
また、インフルエンサー向けのコンサルティングサービスやブランド・セレクトショップ立ち上げ支援など、インフルエンサーが必要とするもの、インフルエンサーの影響力を活用しやすいものを提供しています。
トリドリの強みとは
冨田: 最近、インフルエンサーのマーケットが拡大していますね。かつては、広く浅い影響力を持つインフルエンサーが中心でしたが、今はマイクロインフルエンサーもたくさんでてきて活躍しています。この状況で、株式会社トリドリの競争優位性はどこにあると思われますか?
中山: 弊社の競争優位性は、バランスよく構築された組織だと思います。具体的には、営業組織、開発組織、そしてインフルエンサー組織の3つがあります。営業組織では、中小企業に対する販売網を広く持ち、新規顧客を獲得しています。開発組織では、時代に合わせた新しいプロダクトを自社で開発しています。営業組織・インフルエンサー組織には、インフルエンサー出身の社員が10%以上おり、インフルエンサーの気持ちがわかるスタッフがプロダクト開発・サービス設計・販売に携わっています。
インフルエンサーがサービスの先にいるため、インフルエンサーに対する取り組みが重要です。通常の広告代理店とは異なり、弊社では、インフルエンサーの気持ちがわかる組織と、バリバリの営業組織、そして開発組織を持っており、これらの組織が事業を支える大きな強みとなっています。その上で、インフルエンサーのネットワークと顧客のネットワークが既にできていることが、事業の強みになり、ネットワーク効果を生んでいると思います。
冨田: 投資家的な視点で見ると、ネットワーク効果のビジネスモデルでは、インフルエンサーと顧客のどちらが希少資源でしょうか?どちらを抑えたら勝ちやすくなると思いますか?
中山: インフルエンサーも顧客も、非常に広い範囲に渡って、複数の会社と取引されることが想定されます。そのため、どちらを先に獲得するかというより、どちらを集めやすいかということが重要だと考えていますが、どちらを重要視して獲得するべきかというと、当社にとってはインフルエンサーだと思います。顧客ネットワークを持っている企業はたくさんいらっしゃいますが、インフルエンサーとの強固なネットワーク、取引実績や登録数などをもっていることは、他の会社にはないものだと思います。それが強みとして僕たちの特徴になっていると思います。
冨田: IPOしたときから、御社を拝見していましたが、中山さん自身もインフルエンサーをされていましたよね。
中山: そうです、僕自身もブログやYouTubeなどで発信活動を続けてきた人間です。だからこそ、インフルエンサー側のネットワークが強く、それが拡大できているという両輪ができていると思います。
経営に必要な観点とは
冨田: いままでもいろいろな経営判断をされてきたと思いますが、上場してからさらにたくさんの経営判断をされてきたのかと思います。その中で、どんなことを重視されているか、お聞かせいただけますか?
中山: スピードと客観性を重視しています。経営者全員がスピードを意識していると思うのですが、意思決定のミスを減らすために、客観性を持たせることが大事だと思っています。そのためには、人の意見を聞くことが重要だと思います。それらを両立させることが大事だと思っています。
冨田: 株式会社トリドリは2016年に設立され、インフルエンサーマーケティングの会社として成長してきましたね。その前にも、2020年から同じような業界で事業を展開していたとのことで、中山さん自身はインフルエンサーとしての活動経験が10年以上あるということになるでしょうか。それらの経験が、どのように会社の強みとして活かされているのか伺ってよろしいですか?
中山: そうですね。私自身がインフルエンサーとしての活動経験があることで、インフルエンサーの悩みや可能性を理解できる部分があり、それがサービス開発やインフルエンサーの必要とする機能の提供の一助となっていると考えています。また、インフルエンサーマーケティング事業自体の経験も長く、これらが私たちの強みになっていると思います。
将来のビジョン
冨田: それでは中山さんが思い描く未来のビジョンについて教えていただけますか?
中山: まず、インフルエンサーマーケティングの事業を複数展開しているものの、まだまだインフルエンサーの影響力を活用し、インフルエンサーの価値を最大化できる事業展開まではできていないと思います。例えば、SMBの領域においても、インフルエンサーマーケティングをもっと活用できる余地があると考えています。私たちは先駆者ですが、この領域の企業に対して当社が提供できる価値は、これからさらに広げていくべきだと思っています。
今後は、SNSを使った集客を誰でもできるようにすることを目指し、マーケティングの最適化を図りたいと考えています。また、インフルエンサーたちには、自身の価値を最大化する方法を提案し、さらに多くの分野で活躍できるようサポートしたいと思っています。今は美容や飲食が活躍している領域ですが、例えば、不動産や金融、学校など、まだまだインフルエンサーが活用されていないような分野への進出も視野に入れています。
私たちのミッションは、「『個の時代』の、担い手に。」つまり、個の影響力を最大化させるサポートを行うことです。このミッションに沿った世界を実現していきたいと考えています。
読者へのメッセージ
冨田: ありがとうございます。個の時代が広がっていくような未来を感じました。最後に、ZUUonlineのユーザー様や、色々な投資家の方たちに、中山さんから一言メッセージをいただいてもよろしいでしょうか。
中山: 今お話させていただいたように、まだまだインフルエンサーマーケティング市場には広い伸びしろがあり、SNS時代の変革が来ていると思っています。この機とインフルエンサーの影響力を活かし、お客様のビジネスチャンスを広げることができると考えています。私たちはインフルエンサーマーケティング市場の先駆者として、SNSやインフルエンサーの力を活かしたPRを検討している皆様に、どのような課題解決ができるかをご提案し、PR効果最大化のサポートをしていきたいと思っています。
今、広告はウェブからSNSに変わってきています。従前、多くの会社は、自社でSEO対策をするよりも、ポータルサイトを使うことで、検索への対策をしていました。しかし今は、ユーザーはウェブの検索だけで意思決定しているわけではなく、SNSでの個人の発信する情報を見て意思決定しています。それにも関わらず、SNSでの自社の発信や対応ができている企業はまだ非常に少ないです。
ユーザーの行動変容に合わせ、企業もSNS対策をしなければいけない変革が来ていると考えています。 今までウェブで対応していた企業の皆様も、SNS対策をしなければいけなくなるはずです。私たちは、個人のSNSでの発信が社会を動かす時代の先駆者としてSNS対策のトッププレイヤーになっていきたいと考えております。広大なインフルエンサーマーケティング市場・PR市場において、当社もこれからさらに成長していきたいと思っていますので、ご期待いただければと思います。よろしくお願いします。
- 氏名
- 中山 貴之(なかやま たかゆき)
- 会社名
- 株式会社トリドリ
- 役職
- 代表取締役社長CEO