本記事は、堀大輔氏の著書『うまくいく人の睡眠の法則』(総合法令出版)から一部を抜粋・編集しています。

時間,時計
(画像=Andrii Yalanskyi / stock.adobe.com)

短時間睡眠の誤解とメリット

睡眠時の血中の酸素

「睡眠時無呼吸症候群」という病気を皆さんはご存知かと思います。寝ている間に息が何度も止まってしまう病気です。

起きているときは、20秒ほどでも息を止めているとストレスを感じるものです。しかし、睡眠中はなんと2分以上息を止めていても気づくことができません。また実は、睡眠時無呼吸症候群ではない健常者であっても、睡眠中は血中酸素濃度が下がっているのです。

起きているときの酸素飽和度は96%以上が正常値となりますが、睡眠中は健常者でも90%程度となり、これはチアノーゼ(血中の酸素が不足して皮膚が青く変色する状態)などが出るほどの息苦しい状態と同程度の酸素飽和度となります。

睡眠時無呼吸症候群の人は80%台になることも珍しくなく、これは溺死寸前の酸素飽和度に近い数値となっています。

重要なことは起きている間には、酸素飽和度は低下しないということです。このことからも、可能であれば、睡眠時無呼吸症候群の人は、短時間睡眠がオススメとなります。

睡眠は、とればとるほど体内の酸素量が低下し、合併症などの危険性も高まります。

具体的には、心血管疾患を患う人の40〜80%が睡眠時無呼吸症候群を患っているというデータもあり、心臓への負担がさらに睡眠時無呼吸症候群を悪化させるという負のスパイラルを発生させることにも繋がります。

また、長時間の睡眠中に酸素が不足していることによって、翌日の日中にも眠気も発症しやすくなります。

断眠療法

意外かもしれませんが、徹夜や短時間睡眠によって、うつ病が和らぐといった生理学的なエビデンスが2023年6月20日に発表されました。あまり知られていませんが、〝断眠療法〟という形でうつ病の治療を行う機関は、実は少なくありません。断眠療法の最もポジティブなことは、1日断眠を行うだけで、抗うつ作用が期待できるというものです。

では、なぜ断眠をすることで抗うつ作用が期待できるのか、エビデンスから抜粋して説明しますと、一晩完全徹夜をすることで、情動反応の処理や情動記憶に重要な役割を果たす脳の扁桃体へんとうたいと、情動反応や認知タスクの処理に関わっている脳の前帯状皮質ぜんたいじょうひしつの2つの脳の接続性が、徹夜後に気分が改善したと回答した人に共通して強化されていたためです。この2つの脳の接続が強化されている現象は、なんと徹夜の影響がほとんどなくなる日数が経過しても強いまま保持されていました。

断眠療法や短時間睡眠によるうつ病へのアプローチは、一過性のものではなく、脳の能力を向上させるという意味でも非常に効果的であると言えるのです。

ここでも短時間睡眠に抵抗がある方に向けて、気分を明るくしたいという方は、睡眠周辺以外の行動で扁桃体や前帯状皮質の2つを刺激することが重要となります。私はよく、私のセミナーの受講生の方に「布団から出て、人生を満喫しよう!」と伝えています。

今まで自分が経験していないような活動や挑戦は、感情が大きく動き、扁桃体を活性化することができます。新しいゲームや、習い事の体験、もっと身近な例でいうと、新しい料理に挑戦するだけでも感情は動きます。自分の行動+感情の変化というものを日常に取り入れることで、気分は晴れやかになると思います。

そんなことをする時間がない?

そんな方は短時間睡眠になって活動時間を増やすことを推奨させていただきますね。

短時間睡眠とお肌の関係

短時間睡眠は、お肌の状態も良くなります。なぜなら、覚醒時間が長いほうが、代謝が向上するためです。

覚醒時の代謝量の平均は前日の睡眠時間によって変化しますが、7時間未満、7〜9時間、9時間以上のグループに分けて代謝を測定したところ、睡眠時間が短いグループの方が優位に活動中の平均代謝量が向上しました。

代謝が低下してしまうと、ニキビや吹き出物といった肌荒れが起こりやすくなります。世の中では、睡眠不足だと代謝が落ちる、肌が荒れると言われていますが、冷静に観察していただければ、実際には全く逆の現象が発生しているのを確認できると思います。

睡眠前にスキンケアに時間をかける女性は数多くいらっしゃいますが、起きている間にスキンケアを行うのではなく、なぜ眠る前にスキンケアを行うのでしょうか? 眠る前にスキンケアをしなければ、肌のダメージ量が増えることを、実体験的にも理解しているからではないでしょうか。

睡眠中に痩せる、代謝が上がる……というのは甘美な言葉ではありますが、実際には真逆の現象が起こると考えていただいたほうが、むしろ活動中の自分の行動を改める、建設的な発想につながるのではないでしょうか。

全く別のベクトルで、睡眠中に肌が荒れる要因を挙げると、シーツや寝具の問題があります。皆さんは毎日使っている枕のカバーやシーツは、どのくらいの頻度で新しいものと交換していますか?

おそらく、毎日取り替えているという人は少ないかと思います。睡眠時は、寝汗をたっぷり含んだ枕を1日以上常温で放置して、その枕に顔をつけている時間……と考えると、睡眠時間が短いほうが、物理的にも肌にとっても有利と考えられます。

睡眠時間を短縮しない場合でも、お肌のためには、枕にタオルなどを巻いてタオルだけでも毎日交換することを推奨します。

睡眠時間が短いといわれる芸能人やアイドルの肌がキレイなのも、覚醒時間が長いことによって肌が活性化しているのではないかと考えています。

以上、さまざまな短時間睡眠のメリットや私が短時間睡眠を推奨する理由を簡潔に説明してきました。健康的に眠気をコントロールできるのであれば、短時間睡眠のほうが、身体や脳が活性化し、活動時間が増えることからも人生に余裕が生まれます

書いていることが正しいかどうかを考える前に、ぜひあなたが今まで見聞きした9割以上の日本人が悩んでいる睡眠の情報こそ正しいのかを、今一度冷静に考えていただければ、さまざまな気づきを得られると思います。

=うまくいく人の睡眠の法則
堀 大輔
1983年生まれ、兵庫県尼崎市出身。
GAHAKU株式会社代表取締役、社団法人日本ショートスリーパー育成協会代表理事。1日平均45分以下睡眠のショートスリーパー。
社会人1年目からさまざまな仕事や趣味に没頭し、1日8時間睡眠では活動時間が足りないことからショートスリーパーになることを決意。7年もの歳月をかけて独学で睡眠の研究をし、25歳のときに独自の短眠理論「Nature sleep」を構築し、カリキュラムを開発。このカリキュラムによってショートスリーパーになった受講生は1,000人以上、成功率は99%を超える。
現在では、短眠カリキュラムを伝えるスクールの代表のほか、トリリンガル幼稚園のカリキュラム顧問など、教育の現場でも幅広く活動している。

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