1993年入社。生産技術部門にて材料研究や国内・海外工場の生産技術開発を担当。木材改質技術で平成23年度全国発明表彰特別賞を受賞。2009年に自ら志願し環境・CSR部門へ異動。2015年よりCSR推進室長。サステナビリティを経営・事業の根幹に据えるという経営方針のもと2021年に経営企画部へ異動し現職。ヤマハグループのサステナビリティを推進・統括し、企業ミッション「世界中の人々のこころ豊かなくらし」の実現を目指す。
ヤマハグループは「感動を・ともに・創る」を企業理念として共有し、音・音楽を通じて世界中の人々のこころ豊かなくらしに貢献することを目指しています。
ESGにおけるこれまでのお取り組みについてお聞かせください
ヤマハではESGの取り組みにおいて、長年にわたり、音楽文化の普及発展など、事業そのものを通じて社会に貢献することを重視してきました。
弊社は、楽器、音響機器、部品・装置等の3つの事業をグローバルに展開しています。2021年に、全社を横断する形で、サステナビリティ委員会(および下部組織として5つの専門部会)を設置しました。同委員会は、取締役会の監督のもと、代表執行役社長が委員長となり、全社的な意識の共有と取り組みのモニタリングを行っています。
※参照:ヤマハ株式会社「サステナビリティ」(https://www.yamaha.com/ja/csr/)
委員会において全社のサステナビリティの大きな方向性を定め、それに基づいて各部門で具体的な施策を進めることで、全体の一貫性を保ちながらも各部門の特性を活かした取り組みが実施できています。特に楽器材料として欠かせない木材の持続可能な利用と音楽文化の普及・発展の2つの取り組みに力を入れてきました。
持続可能な木材利用では、調達する木材のトレサビリティ・持続可能性に関するリスク評価(木材デューディリジェンス)や原産地コミュニティと連携した高品質な木材の育成等に取り組み、森林・生態系の持続可能性と楽器製造の持続可能性を同時に追求しています。具体的には、環境団体監修のもと制定した厳しい基準による「持続可能性に配慮された木材」の使用率を中期経営計画最終年である2025年3月期までに75%にすることを目標に掲げており、これまでの取り組みにより使用率は53%まで高まっています。
※参照:ヤマハ「木材資源への取り組み」(https://www.yamaha.com/ja/csr/activity_report/environment/biodiversity/#02)
2つ目の音楽文化の普及・発展では、新興国を中心に公教育の中で器楽教育をサポートする「スクールプロジェクト」を展開しています。世界には学校の授業に器楽教育が導入されていない国が多くあります。弊社では現地政府や教育機関と連携し、教員の育成や教材の提供等を通じて、子供たちが質の高い音楽教育を受けられる環境づくりを支援しています。こちらも2025年3月期までに、10カ国230万人の子供たちに器楽演奏の機会を提供する目標を掲げており、実績は既に7カ国202万人を超えています。
※参照:ヤマハ「学校音楽教育への支援」(https://www.yamaha.com/ja/csr/activity_report/social/community_support/#05)
また、私たちの強みの一つとして、遠隔コミュニケーション技術の開発・提供が挙げられます。遠隔会議システムや遠隔レッスン・合奏など、音とネットワークの技術を応用した製品・サービスを拡充し、様々なニーズに応えてきました。これらは製品・サービスそのものを通じて社会課題を解決する、弊社らしい、弊社ならではの取り組みとしてウェブサイトの「サステナビリティ」ページ等で広くステークホルダーに発信しています。
※参照:ヤマハ「ヤマハ独自の「音」と「ネットワーク」技術で多様な働き方の実現をサポート」(https://www.yamaha.com/ja/csr/feature/feature_11/)
GPIFが採用する6本の日本株ESG指数の全てに選定されるなど、ESGにおいて社外から非常に高く評価されていらっしゃいますが、その要因、具体的な取り組みをお聞かせください。
私たちの最終的な目標は「世界中の人々のこころ豊かなくらし」を実現することです。このミッションを達成するためには、サステナビリティの視点から社会と人と自然環境の持続的な発展を目指すことが欠かせません。
そのためにはESGを経営の根幹に位置づけることが重要だと考えています。私たちは経営全体のマテリアリティ(重要課題)の中にサステナビリティのマテリアリティを統合しています。マテリアリティの取り組みを、各部門の計画にブレークダウンし、事業そのものを通じて実行することでヤマハらしい活動ができていると考えています。
また、株主、投資家をはじめとしたさまざまなステークホルダーの皆さまからのご要望はもちろん、ESG評価機関から問われていることも社会からの要請そのものであると考えています。その内容・本質をしっかり理解し、マテリアリティ特定の一つの根拠とし、事業・取り組みに反映させるとともに、関連指標の開示拡充にも取り組んでいます。
加えて、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの会員として各分科会活動に参加するほか、経済人コー円卓会議(CRT)日本委員会のステークホルダー・エンゲージメントプログラムに参加するなど、外部のイニシアチブや活動に積極的に関わっています。
サステナビリティ報告書内にて「ヤマハグループは人材の多様性を新たな価値創造の源泉と考え、あらゆる人材に対し、能力開発およびキャリアアップの機会を公平に差別なく提供することに努めています。」とございますが、取り組みの背景と具体的な施策の部分をお聞かせください。
中期経営計画の方針でも掲げていますが、弊社では「ともに働く仲間の活力」は、事業活動を行う上で最も重要な要素であり、社会価値創造と企業価値向上の原動力だと考えています。これを最大化するために、多様性や自律性を尊重し、一人一人が感性や創造性をいかんなく発揮して自己実現を図りながらプロフェッショナルへ成長できる環境を整備したいと考えています。
また、中期経営計画では人的投資額を2倍にするという目標を掲げ、人的資本の強化にさらに注力する方針を固めました。具体的には、機能別専門教育研修や自律的なキャリア開発支援等さまざまな施策により、人材教育の質向上や、保有スキル・希望キャリアを踏まえた適所適材配置等を促進していきます。
働き方においてもテレワークの推進や副業の制度化など、多様なワークスタイルを可能とする環境整備を進めています。また、従業員の声を経営に反映させるために従業員サーベイを実施したり、社長自ら現場に赴き従業員と対話するなど、風通しの良い組織風土づくりにも取り組んでいます。
今後の上場企業の意義や投資家ユーザーへのメッセージ
私たちは持続可能な社会への取り組みと株主価値の最大化は両立できるものと信じています。
これからもヤマハらしい、ヤマハならではの方法で、音楽文化の普及・発展に貢献し、世界中の人々のこころ豊かなくらしを目指します。音楽には国や民族、言葉を超えて人を共感させる力、心を潤す力があり、それは必ず社会のサステナビリティを実現する力になると信じています。これからの社会では、人々の関心は経済的繁栄を超えた本質的な心の豊かさに向かうでしょう。音・音楽を原点に“技術×感性”で新たな感動と豊かな文化を追求する弊社にとっては大きな機会となります。
私たちが進めているESGの取り組みをご評価いただくことで、投資家の皆さまにとっては価値ある投資先となり、お客さま・社会にとってはより良い商品・サービスを提供できる企業となりたいと考えています。
これからも社会とともに成長し続けるヤマハをご支援いただけますようお願い申し上げます。
- 氏名
- 阿部 裕康(あべ ひろやす)
- 会社名
- ヤマハ株式会社
- 役職
- 経営企画部サステナビリティ推進グループリーダー