総括
FX「日本の消費者物価とPMI。ドルは弱いが、内外の課題をこなす強さあり」
ドル円=146-151、ユーロ円=161-166、ユーロドル=1.07-1.12
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(11位)、株価4位(4位)、先週の外債利払いのドル下げの余韻。消費者物価とPMIに注意」
ドル円は年初来高値(151.91)更新後、反落した。先週は11月15日の米債などの償還利払いがあり、その円転が出た。今週は、その需給はなく、11月下旬ではここ5年でも、一概に大きな相場のトレンドはない(大きく動かないことではない)が、151.80の旺盛な売りが消化できずチャートもボリバン下位で推移しているのでドルベアリッシュな空気は残る。日足で言えば11月16日-17日の下降ラインを上抜けるかどうかだ。月足もここまで陰線。
今週の指標では10月消費者物価と製造業・サービス業PMIがある。世界は消費者物価低下傾向にあるが、日本の10月消費者物価は上振れ予想なので気をつけたい。日本の景気は7-9月期マイナス成長、18か月連続実質賃金低下など冴えないが10月製造業・サービス業PMIは若干改善の予想だ。連休明けゴトビの金曜に同時に発表されるので波乱は想定しておきたい。
介入については円安けん制発言が続いているが、事実としては今年は介入を行っていない。赤沢財務副大臣は先週「為替介入については特定の水準を念頭に置いて介入しているということではない。為替介入はあくまでも為替相場の過度な変動に対応するもので、必ずしも円安が進んでいるから介入するという立場をとっていない」と語った。ただドル円が下落していれば影響のない発言となる。
10月貿易統計は6625億円の赤字。年間赤字はほぼ去年の半分くらいの赤字ペースだが、まだ水準は大きく、円安相場に影響している。ボリバン下位に落ちてきただけにセンチメントではドル安も実需の需給は変わらず。ボリバン3σ近辺での追っかけ売りは注意したい。
*米ドル「通貨5位(4位)、株価(NYダウ)12位(12位)、ドルは弱いが、内外の課題を多く抱えるも論争を経て前に進む強さあり」
「通貨5位(4位)、株価(NYダウ)12位(12位)、ドルは弱いが、内外の課題を多く抱えるも論争を経て前に進む強さあり」
米中首脳会談が終わった。具体的な経済政策は打ち出されなかったが、ウクライナやパレスチナ紛争のような修復不可能な危機を避けるため、対話を続けるということとなった。習近平国家主席は、いつもの中国の声明を繰り返した。「相互尊重、平和共存、協力・ウィンウィン」だが具体性はない。また中国はトランプ前米大統領から課された高関税の経済制裁は今も残っている。
さてパウエル議長始めFRB当局者は市場の利上げ終了観測に警鐘を鳴らしていたが、10月の消費者物価は前年同月比で3.2%上昇で前月の3.7%から縮小、予想の3.3%も下回った。クリーブランド連銀のCPIナウは4QのCPIが2.63%まで低下すると予想している。4QGDPのアトランタ連銀ナウは2.0%と3Qの4.9%から大幅低下している。リセッションではないが、望ましい景気減速となっている。これ以上、金融引き締めを続ければ、再びデフレ経済へ向かう危うさはある。米国の長期金利は低下、フェッドウオッチでは12月だけでなく1月も政策金利据え置きの見方が圧倒的だ。
さて懸案の政府機関閉鎖は、つなぎ予算が可決され、再び不安定ながら前に進んだ。決裂するよりはマシだ。株価は以上を勘案し、先週はダウ、ナスダック、S&Pともに上昇した。米国は内外の課題を多く抱えているが、論争を経て前に進む強さがある。ただ今月のドルは弱い。
*ユーロ「通貨4位(5位)、株価7位(8位)DAX)、経済指標に望み。経済弱いがユーロはドルより強いのは」
経済は弱いが、今年のユーロは常に上位に位置している。今月はドルよりも強い。米国の物価低下でドルが下落、対価としてユーロが上昇、自力でのユーロ上昇ではない。1年を通じては昨年ほどの資源価格の上昇がなく、リスク回避の流れに戻り、貿易黒字を反映したユーロ高が続いている。弱い経済指標が続いていたが、11月ZEW景況感指数はユーロ圏、独でも大幅改善し望みを持たせた。貿易・経常黒字も定着してきている。今週は11月製造業・サービス業PMIが発表されるが、ユーロ圏、独ともに改善する予想だ。
ユーロ圏消費者物価は10月で2.9%まで低下しているが、タカ派のナーゲル独連銀総裁やラガルドECB総裁は金融緩和に慎重で再度の利上げも示唆しているが、ビルロアドガロー仏中銀総裁は「利上げサイクルの一時停止は完全に合理的な」行動だと述べている。ロイター調査ではECBは来年半ばまで政策金利を現行水準で据え置く見通しでユーロ圏のリセッション入りが見込まれているが、利下げは来年7月以降になるというのが引き続き大勢の見方だとしている。 欧州長期金利は既に年初の水準まで低下している。市場の見方はより緩和的だ。
週末の朗報としては、ムーディーズが、財政の不安があるイタリアの格付けについて、経済、債務、銀行部門が安定化しているとして、見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げたことだ。格付けは「Baa3」に据え置いた。「ジャンク」級の1段階上となる。ただ「中期的な成長見通しとムーディーズの財政収支の見通しを合わせると、イタリアの債務水準は極めて高い水準にとどまる」との見方も示した。
*ポンド「通貨3位(3位)、株価15位(15位)、3位堅持。消費者物価低下、今週の政府の財政政策期待あり」
年初来ポンドは3位、株価は高金利で低迷(20市場中で15位、年初来0.7%高)という状況が続く。先週は5位、今月は6位と強くも弱くもない。英経済も強くはないが、米消費者物価が低下し、政策金利がピークを打ったとの観測でドルが下落、ポンドが上昇した。英国の10月消費者物価上昇率は前年比4.6%と、9月の6.7%から鈍化し、予想を下回った。 2021年10月以降で最低の上昇率となった。
中銀はFRBやECBと同じく、「インフレ率を目標の2%水準に回復させるためには、金融政策を十分厳格にし、十分な期間にわたって継続する必要がある」としている。 一方、先物市場によると、トレーダーは現在5.25%の政策金利が2024年末までに約0.8%低下すると予想している。
現政権は財政健全策だが、 ハント財務相は22日の予算演説を控え、「インフレとの戦いに勝利し始めた今、われわれは経済政策の次の段階に移ることができる。つまり経済の長期的な成長だ」と述べた。
スナク首相は「1月、私は今年インフレ率を半分にするのを最優先課題に掲げた。その約束を果たした」と述べた。10月小売売上高は前月比0.3%減と予想外に減少した。生活費の高騰が引き続き響いた。
*豪ドル「通貨8位(8位)、株価16位(14位)、雇用賃金堅調、ブロックRBA総裁会見あり。中国も焦点」
豪ドル円は年初来高値圏にあるが、やはり円の弱さによるもので、全体では12通貨中8位と強くはない。カギは貿易において輸出の39%、輸入の28%を占める中国が焦点となる。外交では前向きに進んでいる。豪中首脳会談が行われ両国は貿易、気候変動、農業の分野で協力することで合意した。さらにはAPEC首脳会議で、具体策は出なかったものの、中国が「開放と協力を堅持し、発展を共に図ることを核心とする提案」を行った。何もないよりマシだろう。中国も西側諸国からデカップリングされることには不安があるのだろう。ファレル貿易相は、中国が来月にも残る全ての貿易障壁を取り除く可能性があるとの見方を示した。
10月の雇用統計は、就業者数の伸びが力強く回復した。ただ、求職者が増加したため失業率は小幅に上昇した。3Qの賃金価格指数は前年同期比で4.0%上昇、2Qの3.6%上昇から加速し、2009年初め以来の高水準だった。
消費者物価の下げ止まり、雇用、賃金の堅調さで豪ドルもこっじかりしている。ただ株価が示すように、国民の購買力の低下もあり、利上げ継続は難しいところもある。ゴールドマン・サックスは、2024年4Qまで金利を据え置き、その後は段階的に政策を緩和すると予想している。消費者物価は、2024年4Qまでに「3%をわずかに下回る」水準にまで低下すると予想している。
今週はブロックRBA総裁の会見や11月製造業・サービス業PMIの発表がある。
*NZドル「通貨9位(9位)、株価19位(19位)、弱い指標続く。国民経済にも高金利が影響」
年初来9位。8位の豪ドルとパラレルに動く。農業国NZよりも資源国の面もある豪が少し強い。豪は貿易黒字国、NZは貿易赤字国。このところの経済指標は弱い。10月製造業PMIは9月の45.3から42.5へ低下。3Q失業率は2Qの3.6%から3.9%へ悪化した。インフレでは4Q企業インフレ期待は1年後は3.60%で、2Qの4.17%から低下。2年後は2.76%で、3Qの2.83%から低下。インフレ期待の低下は、中銀が政策金利を引き上げる可能性が低いことを意味している。次回政策金利決定は11月29日で5.5%に据えかれる予想だ。
さてNZ中銀の金融安定性に関する報告書は、高額の債務を抱える家計に対する圧力が高まっていると警告した。 中銀がインフレ抑制に取り組む中、金利が15年ぶりの高水準となる5.5%に上昇しており、住宅ローンの滞納が増えている。
中銀は報告書で「高額債務を抱える家計が債務負担の増大に試され続ける中、中期的にストレスが高まる公算が大きい」と指摘。「これまでのところ、大部分の借り手はこうした負担の増大に対処できているが、一部の借り手は苦戦を余儀なくされ、対応できていない」とした。 報告書はまた、中国の景気減速に伴うコモディティー価格のリスクにも言及、中東情勢を注視すると表明した。
中銀によると、農家は世界的な牛乳価格の低迷で圧迫されており、長期の価格低迷が銀行の融資損失拡大につながる可能性がある。ただ銀行の流動性は潤沢であり、自己資本比率は改善していると指摘した。
テクニカル分析
*ドル円「先週は外債償還・利払いでサポートライン下抜く。5日線。20日線下向く」
日足、外債の償還、利払いで下落。11月15日-16日の上昇ラインを下抜き、一時ボリバン下限近くまで下落。10月3日-11月17日の上昇ラインがサポート。11月16日-17日の下降ラインが上値抵抗。5日線。20日線下向く。
週足、先週は年初来高値更新も陰線となる。10月2日週-11月13日週の上昇ラインがサポート。22年10月17日週-11月13日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、11月は9月-10月の上昇ラインを下抜く。5月-7月の上昇ラインがサポート。22年10月-23年11月の下降ラインが上値抵抗。5か月線、20か月線は上向き。
年足、2023年はここまで大陽線。2022年の長い上ヒゲを駆け上る。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「ボリバン2σへ上昇」
日足、ボリバン2σ上限へ上昇。5日線。20日線上向き。11月14日-17日の上昇ラインがサポート。7月18日-11月130日の下降ラインが上値抵抗。
週足、10月2日週以降は右肩上がり。雲の上。10月30日週-11月13日週の上昇ラインがサポート。8月28日週-11月13日週の下降ラインが上値抵抗。5週線上向き、20週線下向き。
月足、11月は9月-10月の下降ラインを上抜いてスタート。22年11月-23年10月の上昇ラインがサポート。21年6月-23年7月の下降ラインが上値抵抗。5か月線、20か月線下向き。
年足、陽転。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し長い下ヒゲでサポ―ト。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインを上抜くも元に戻る。
*ユーロ円「ボリバン2σ上限から小反落」
日足、2σ上限から小反落。先週末は下ヒゲ長い。雲の上。11月13日-17日の上昇ラインがサポート。11月16日-17日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、ボリバン3σ上限。上ヒゲ出る。11月6日週-13日週の上昇ラインがサポート。5週線上向き、20週線上向き。
月足、年初来高値圏維持。7月-10月の上昇ラインがサポート。2008年8月-2023年10月の下降ラインが上値抵抗。5か月、20か月線は上向き。
年足、3年連続陽線。今年はさらに大陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインを上抜く。