ベネッセホールディングス<9783>がMBO(経営陣による買収)で上場を廃止し、経営を立て直すことになった。買収金額は約2700億円の見通しで、国内のMBOとしては過去最大規模となる。このMBOを支援するのが、スウェーデンのプライベートエクイティー(PE)ファンド「EQT」。日本では初めての投資案件となるだけに、あまり知られていないファンドだ。

世界第3位のPEファンド、日本には2年前に進出したばかり

EQTは北欧最大のPEファンド。1944年に同国のウォーレンバーグ(ヴァレンベリ)家の投資会社インベストールと同社傘下のスカンジナビア・エンスキルダ銀行、米PEファンドのAEAインベスターズの共同出資で、1994年に「EQTパートナーズ」として発足した。6月末時点の運用資産残高は2240億ユーロ(約36兆3000億円)で、世界第3位のPEファンドだ。

ウォーレンバーグ家は1990年代には同国GNPの3分の1の経済活動に関わり、現在も大きな影響力を持つ大富豪一族として知られる。

2005年に香港に拠点を開設し、アジアにも進出した。2022年3月には英ベアリングス銀行系のベアリング・プライベート・エクイティー・インターナショナルの子会社で、パイオニアや武州製薬など9件の対日投資実績がある香港のベアリング・プライベート・エクイティー・アジア(BPEA)を買収。BPEA EQTとして、アジア・太平洋地域での投資を本格化している。

日本では2021年1月にEQTパートナーズジャパン(東京都港区)を設立。国内では日本産業パートナーズと連携し、社内事業を分離後に完全独立させるカーブアウトやオーナー系企業の買収を主な業務としている。ベネッセは創業者一族の福武家が強い影響力を持っており、MBOも同家の意向に添ったものと考えられる。

2023年3月末に東京証券取引所が株価純資産倍率(PBR)の低い上場企業に改善策の開示を要請。資本効率や株価を意識した経営への転換を求める機運が高まり、事業売却や株主還元強化などの圧力がかってないほど高まっている。

報道によると、EQTはこれをPEファンドにとって絶好の追い風と見ており、日本で今後2〜3年以内に30億ドル(約4500億円)規模の未公開株(PE)投資を実施する方針とされている。

文:M&A Online