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11月17日、東レ <3402> が米ボーイングから航空機向けの炭素繊維を今後10年間にわたり1兆円分の独占供給することを発表した。また、19日にはトヨタ <7203> の燃料電池車『MIRAI(ミライ)』に東レの炭素繊維が採用されたことも発表している。

1兆円という金額にも驚かされるが、"炭素繊維"が航空機や自動車など広く使われていることにも驚きではないだろうか。


炭素繊維が航空機に使われるメリット

炭素繊維とは鉄に比べ4分の1の軽さながら、10倍以上の強度があるという特徴があり、ただの"繊維"ではない。そのため近年では、航空機、自動車、宇宙産業、スポーツ、医療機器、機械など、その用途は拡大の一途だ。

航空機に関しては機体が高ければ高いほど燃費が向上するため、金属であるアルミから炭素繊維へとシフトが進んでいるのである。

そんな炭素繊維だが、実は市場に投入されてから既に40年近い年月を経ているのである。ようやく航空機等に採用が進み、風車・圧力容器での使用増加も見込まれ、高級自動車の用途での展開も期待されるなど、市場の拡大期を迎えている。

市場が拡大するにあたり、多く年月がかかった理由として、炭素繊維は高度な技術力に加え、製造するための多額の設備投資・研究開発費が必要なため、参入障壁が非常に高いということがあげられる。現に、90年代に世界各国の企業が参入を図ったが、多額の開発費用、さらに顧客からの要求水準の高さに撤退を余儀なくされている。

しかしそんな中、日本の大手繊維企業は経営方針にブレがなく、また日本政府も20年以上も開発費用の支援を行う等の支援により、世界での存在感は強い。日本の主要プレーヤーは東レ、東邦テナックス(帝人 <3401> の子会社)、三菱レイヨン(三菱ケミカルホールディングス <4188> の子会社)、この3社で実に世界シェア6割以上を占めるほどだ。素材供給である川上では日本企業が市場シェアを拡大し、成形・加工段階では欧米や韓国、台湾企業が占めている構図となったのである。


東レはなぜ1兆円分の炭素繊維を受注できたのか

軍需産業の発展に伴う航空機需要がほとんどない日本においては、衣料向けアクリル繊維の生産により、低コストで高い品質の生産技術を磨いてきた歴史がある。東レがユニクロ <9983> と共同開発を行った大ヒット商品ヒートテックが良い例だろう。これは東レに限らず東邦テナックスや三菱レイヨンも同様だ。

東レはさらに圧力容器等、産業用途の研究開発にも地道に取り組み、これら衣料用と産業用の技術があわさって航空宇宙向けの炭素繊維を世に出すことに成功した。71年に炭素繊維の量産に成功してから実に40年近くも経過し、ようやく粘り強く研究開発を実施してきた東レの夢がかないさらなる拡大の時期に入ったといえよう。市場シェアをみても2012年度東レは2位の東邦テナックスの1.5倍の生産を行っている。

それに加えて、米ボーイングのライバルである米エアバスが東邦テナックスから炭素繊維の供給を受けている。供給能力に加え、ライバルである米エアバスが東邦テナックスに発注しているという事実が、米ボーイングが東レに炭素繊維の発注を行なった理由ではないかとも考えられる。


炭素繊維業界の拡大に自動車産業が鍵となる

炭素繊維は、鉄が約100円/kg、アルミが約500円/kgと比べ、数万円/kgと、価格がネックとなりなかなか自動車向けに採用が行われなかった。それがここに来て、トヨタの燃料電池車MIRAI、レクサスLFA、さらにはランボルギーニのアヴェンタドールLP700-4など、高級車がメインではあるが採用され始めている。また、富士重工業 <7270> のインプレッサWRX STIts、BMWのi3など価格を抑えた量産車にも採用されている。

このように今後は自動車向けに炭素繊維が普及していけば、炭素繊維市場のさらなる拡大が期待できよう。

(ZUU online)

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