総括
FX「ドルは弱い、円も全体では強くはない」
ドル円=146-151、ユーロ円=161-166、ユーロドル=1.07-1.12
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(11位)、株価4位(4位)、年末、12月はドル円下落傾向か、一方クロス円は上昇か」
11月15日の米債などの償還利払いをきっかけに、行き過ぎのボリバン3σ下限で反発、11月21日は長い下ヒゲで買い圧力を示したが、元々ドル売り圧力のあった、また月足ボリバン2σ上限、150円までは届かず。12月初旬、また12月全体でも年末だからか、ややドル売りの傾向があるので貿易赤字は継続していると雖も短期的にはドル下げに注意したい。11月最終日の30日は過去には特に目立つ傾向はない。5日線の向きはまだ下向きだ(一方クロス円は概ね5日線が上向きに転じる)。
日本の景気は月例経済報告での景気判断引き下げ、やや弱い11月製造業・サービス業PMIなどから不冴えだが、10月消費者物価の小幅上昇、大企業中心の3%以上の春闘へ向けた賃上げ観測があり、来春にはマイナス金利解除への空気が高まってくるだろう。米国の景気減速・物価低下傾向もドル円を押し下げる要因だ。ただ中長期的な要因である貿易収支は、まだ赤字傾向が続くので、ドル下げには押し目買いが入る。貿易赤字だが去年と比べれば赤字幅が縮小しているので円安のペースも落ちてくるだろう。原油安が続く限り。
介入については前回も触れたが、赤沢財務副大臣の「為替介入については特定の水準を念頭に置いて介入しているということではない。為替介入はあくまでも為替相場の過度な変動に対応するもので、必ずしも円安が進んでいるから介入するという立場をとっていない」と語った。IMFの介入3原則とも一致しており、これが正論だろう。
*米ドル「通貨5位(4位)、株価(NYダウ)12位(12位)、ドルは弱い。FRBも慎重」
11月のドルは弱い。先週は12通貨中10位、11月はここまで10位(円はいずれも9位)。4Q・GDPナウは2.1%、CPIナウは3.07%(4Qは2.81%)で心地よい景気減速だ。米金利も幾分低下しているので、市場はリスク選好のムードとなり、恐怖と欲望指数は68で、1か月前の33から急上昇している。80まで行けばまた過熱感が出てくるが。FRBにとっても心地よい展開ではないか。
11月の総合PMIは50.7と横ばいだったが雇用指数が3年半ぶりに50割れとなり、4Qの景気減速予想と一致した。10月の耐久財受注は前月より5.4%減り、減少率は予想の3.1%より大きかった。ミシガン大11月の1年先の期待インフレ率の伸びが2カ月連続で加速ししたことは、金利を上昇させた。ただフェッドウオッチでは来年2月まで金利を据え置く予想が90%程度となっている。
FOMC議事要旨(11月1日)では「今後の利上げについて慎重なアプローチを取ることが可能であり、インフレ低下の進展が不十分であることを示す情報が入ってきた場合にのみ、金利を引き上げる必要があるとの見解で全ての参加者が一致した」となっている。9月会合では依然として「大半の参加者」があと1回の利上げが必要との見方を示していた。フェッドウオッチの来年5月の利下げ確率は50-60%。
*ユーロ「通貨4位(4位)、株価7位(7位)DAX)、経済指標に望み。ドルより強い」
今月も円とドルよりも強い展開だ。月間、年間ともに5位。ECBは全会一致で利上げ停止を決定したが、今後の舵取りには慎重な意見が多い。 ラガルドECB総裁は、「われわれは既に多くを行った。これまでに使用した弾薬の規模を踏まえ、どれだけ長くこの水準にとどまるのか、ここから上がるのか下がるのか、どのような決断をしなければならないかを判断する上で、弾薬がわれわれの経済生活にどう影響していくのか。そのような観点から、給与や利益、財政、地政学的な動向など市民生活の要素を注意深く見守ることができる」と論じた。
ユーロ圏のインフレ率は10月に2.9%となり、11月も低下する公算が大きい。だが、統計上の要因により近いうちに再び上昇する可能性もあると当局者は警戒し、インフレ目標の達成は2025年7-12月(下期)になると予想されている。ラガルド総裁は「闘いは終わっていない。勝利を宣言する状態にないのは明らかだ」と述べ、インフレ率を目標値に戻すと約束した。
一方、ユーロ圏の各国の長期金利は年初と比べるとほぼ同程度かやや下げている。ECBの金融引き締めにフォローせず、景気が弱くなるという見込みで推移してきた。ミュラー・エストニア中銀総裁は、「恐らくECBはもはや利上げの必要がない」と語った。
経済指標は強くはないが改善している。11月のユーロ圏総合PMIや独IFO景況感指数にそれが見られた。エネルギー価格の低下で貿易黒字が定着したこともユーロを支えるだろう。
*ポンド「通貨3位(3位)、株価16位(15位)、3位堅持。減税案も市場は混乱せず。PMI改善」
先週は2位、11月はここまで4位、年間でも3位と強い。一方、株価はポンド高、高金利、資源価格低下で安く年初来0.49%高だ。
英政府は、企業向けの投資減税など合計203億ポンドの減税を実施すると発表した。トラス前政権が打ちだし金融市場が混乱した447億ポンドの減税の半分以下の規模とした。今回は市場の大きな反応はみられない。保守党の支持率は22年10月のスナク政権発足以来最低の21%となった。最大野党・労働党の44%の半分以下に沈む。英経済は停滞しており、減税などが支持率の回復にどれだけつながるかは見通せない。
英国の10月消費者物価上昇率は前年比4.6%と、9月の6.7%から鈍化したが、英中銀のチーフエコノミスト、ピル氏は断固とした姿勢でインフレとの戦いを継続する必要があると主張、金融政策を緩和する余裕はないと述べた。エネルギー、食品、国際商品価格が安定したため、総合インフレは低下したが、主に「外生的」な要因によるものであり、引き続き国内発のインフレの抑制を重視する必要があると述べた。
それでも11月の総合PMIは50.1と、4カ月ぶりに好不況の分かれ目となる50を上回った。高金利ということもありポンド買いは続く。
*豪ドル「通貨8位(8位)、株価17位(16位)、ブロックRBA総裁がタカ派発言。CPI待ち」
先週は3位、今月もここまで3位と堅調だ。円より強いのはいつもながらだが、対ドルでは週足が2週連続陽線、11月の月足も4か月ぶりに陽線となりそうだ。日足では豪ドルは対米ドルで200日移動平均を上回り、8月10日以来の新高値となる0.6591ドルをつけた。欧米とは異なり、RBAが引き締め姿勢であることも豪ドルを支えた。
ブロックRBA総裁は、一時的なサプライチェーンの圧力よりも内需が物価を押し上げつつあると述べ、金利による一段と大幅な対応が必要になっているとの見解を示した。「このような国内発の需要主導の要因がインフレに及ぼす重要な意味は、インフレ率を目標に戻すには時間がかかるということだ。金融政策で目指しているのは、雇用の伸びを維持しながら需要の伸びを鈍化させ、インフレ率を目標に戻すことだ」と説明した。 金利上昇が多くの家計を圧迫していることは承知しているとした上で、唯一の政策手段は金利であり切れ味の悪いものだと語った。11月製造業・サービス業PMIは悪化した。
12月のRBA理事会で据え置きか政策金利が据え置かれるか、追加利上げかは、10月の小売売上高と消費者物価を注視したい。
*NZドル「通貨9位(9位)、株価19位(19位)、政策金利は据え置きか。中銀がNZドル安に備えて外貨準備増強計画」
先週のNZドルは最強、11月も最強のメキシコペソに次いで2位と好調だ。ただ株価は年初来2.28%安と苦しい。今週の政策金利決定では5.5%に据え置かれる予想だ。
物価上昇率は3Qに前年比5.6%と2Qの6.0%から低下したが、目標(1-3%)を依然大幅に上回っており、金融引き締めの継続を迫られる見通し。中銀は政策金利を少なくとも2024年半ばまで5.5%で維持すると見込まれている。
政治では選挙で勝利した国民党が連立政権成立に交渉が難航していたが漸く成立した。新政権はNZ中銀の物価と雇用に関する2つの責務を廃止し、物価安定のみに絞る予定だ。所得減税を実施する。ルクソン首相は減税について、政府の経済再建計画の一環だと強調。「生活コスト高を和らげ、無駄な支出を減らし、経済成長率を押し上げて全ての国民により多くの機会と繁栄をもたらす」と表明した。
気になるのは中銀が外貨準備を強化するとしたことだ。シルク総裁補は「市場が機能不全に陥った時や為替レートの水準が経済のファンダメンタルズに比べて極端で不当な水準にある場合に介入することが含まれる可能性がある」と述べた。NZドルの下落に備える姿勢を示した。