この記事は2023年11月24日に「CAR and DRIVER」で公開された「【最新モデル試乗】ベーシックモデルでも光る完成度。SUBARUインプレッサの愛すべき個性と走り」を一部編集し、転載したものです。
新型は4WDだけでなくFFも販売好調
SUBARUのエントリーモデル、新型インプレッサで佐渡島をドライブした。インプレッサは、「行動的なライフスタイルへといざなうユーティリティ・スポーティーカー」が開発コンセプト。今回、その個性をあらためて追求した。
試乗車はSTグレードのFWD。STは、デビューした4月下旬から7月末までに販売されたインプレッサ5861台のうち、28.5%を占めるエントリーグレードである。
インプレッサの駆動方式はAWDが優勢で、56%の販売比率を占める。スバルというとAWDのイメージが強いが、FWDも長い歴史を誇る。実際、最近のインプレッサ販売はFWDがかなり巻き返しているという。新型はリーズナブルなFWDの販売に力を注ぐことで、若い世代や他メーカーからの買い替え層にアピールする戦略。スバル関係者の思いは、着実に浸透しているようだ。
今回試乗したFWDのSTの車両価格は229万9000円。AWD比で22万円安いが、アイサイトやLEDヘッドランプをはじめ、パドルシフトや17インチアルミなど基本的な装備はすべて標準で付いている。
スタイリングは適度にスポーティな印象、風光明媚な佐渡の景色にもしっくりとなじむ。ボディサイズは4475×1780×1450mm。このクラスとしては大柄で適度な存在感がある。シートに収まると、スバル車に共通する優れた居住性と全方位にわたる良好な視界を実感した。初めて走る道でも不安を感じずに済む点は、乗るたびに満足を感じる。中でもドアミラー周囲の死角が小さい点に感心した。
走りで印象的なのは、乗りやすく乗り心地がいいこと、そして軽量性だ。FWDでも操縦安定性は十分すぎるほどの高水準。しかも1380㎏の車重は、最上級のST-HのAWD比で実に200kgも軽い。身のこなしの軽やかさは際立っていた。
心地いい走り味には、フルインナーフレーム構造を採用した第2世代SGPの高いポテンシャルと、2ピニオン式の電動パワーステアリングも効いているに違いない。両者の相乗効果で、いたって軽快で、文字どおり意のままに操れるドライブフィールを実現している。
エンジンは2リッターの水平対向DOHC16V(154ps/193Nm)。クセもなく乗りやすいことは魅力だが、パワフルさやボクサーならではの味わいは希薄。欲をいうと、エンジンにはもう少し期待したい。
一方、医学的知見を取り入れたというシートの座り心地は絶妙。ルーフへの高減衰マスチックの施工も利いて、このクラスでは望外といえるほど車内の静粛性は高い。運転を交代して後席に座って、快適性が高いことにも感心した。このクラスでここまでの完成度を実現したクルマは珍しい。
広角単眼カメラを採用した新世代アイサイトによる高い安全性能もインプレッサの強みである。新型インプレッサはエントリーグレードのFWDという選択肢も大いにアリだと気づいた。貴重な試乗体験だった。
SUBARUインプレッサ主要諸元
グレード=ST(FF)
価格=8CVT 229万9000円
全長×全幅×全高=4475×1780×1450mm
ホイールベース=2670mm
トレッド=フロント:1540/リア:1545mm
車重=1380kg
エンジン=1995cc水平対向4DOHC16V
エンジン最高出力=113kW(154ps)/6000rpm
エンジン最大トルク=193Nm(19.7kgm)/4000rpm
WLTCモード燃費=14.0km/リッター(燃料タンク容量50リッター)
(市街地/郊外/高速道路:9.3/14.8/17.1)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=205/50R17+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.3m
(提供:CAR and DRIVER)