ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「イエレン財務長官が利上げ不要論。12月のドル円は弱いか」


ドル円=143-148、ユーロ円=156-161、ユーロドル=1.05-1.10

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨11位(11位)、株価4位(4位)、例年通りの12月はドル円下落か」
例年通り、また前回も述べたが、11月半ばの円高、12月も早々に円高が進んでいる。米金利の低下、くすぶる日銀のマイナス金利解除の話もあるが、そういう話がなくても、また米国が利上げをしていた時でも12月は円高になりやすい。それが実需であり、実需のリーズ&ラグズ(為替予約を前倒し、先延ばしする行動)だ。ドル安基調でも朝の仲値決定前にドルが上昇するが、それと同じように、月別や月内でもドルが上がりやすかったり、下がりやすかったりする傾向は多い。

 今回は12月のドル安傾向に、米国の利上げ打ち止め感、米景気減速が加わっている。ドル円相場に大きな影響を与える貿易収支は去年の赤字の半分程度で円安要因だが、12月はいわゆる「リーズ&ラグズ」で輸出の勢いが勝るのだろう。

 日足、週足、月足も、年足が去年の高値を上抜けず、調整に入り陰線が多くなっている。日足では4月14日以来の雲の下へ下落した。今週は11月の東京消費者物価の発表があり、前月比低下の予想だ。日銀の「基調的な物価データ」も手放しでマイナス金利解除の引き金にはなっていない。日銀の動向よりFRBの利上げ打ち止め感が円相場に影響する。いつものように政治スキャンダルが出ているが相場にはいつものように影響はない。

*米ドル「通貨6位(5位)、株価(NYダウ)12位(12位)、ドルは弱い。イエレン財務長官が利上げ不要論」
 米ドルは弱い。11月は12通貨中10位、先週は9位、年間ではカナダドルに抜かれ5位から6位に後退した。もともと今年のドルは年初から強くはなかったが、円より強いので、国内報道ではスーパードルであったが、世界水準では平凡な展開。円から見れば、トルコ以外はすべてスーパー的に強い。ただ円は11月半ばから例年通りの意地の反発、いや需給からの反発を示している。

 経済データも弱い。アトランタ連銀の4Q・GDPナウは12月1日付けで前回の1.8%に対し1.2%へ下方修正された。13か月連続で50割れの11月ISM製造業PMIなどの弱い指標が反映された。景気減速で利上げは難しい。フェッドウオッチでは2024年の春以降の利下げ観測が高まっている。それでもパウエル議長は、高インフレを抑えるのに十分な水準まで政策金利を引き上げたかどうかは「結論付けるのは時期尚早だ」との考えを示した。昨年3月から始まった利上げ局面が終わったとの金融市場の見方をけん制した。それはクリーブランド連銀のCPIナウでは12月が3.45%で11月の3.04%より上昇しているからだろう。4Qでも前回の2.69%から2.78%へ上方修正された。一方、サプライチェーンインデックスはマイナス1.74でインフレ圧力は遠のいている。利下げにはまだ早いが、利上げの可能性はない。

イエレン財務長官は、米経済にはインフレ定着を防ぐためにこれ以上の大幅な金融政策の引き締めは必要なく、力強い雇用を伴う「ソフトランディング」を達成する軌道にあるとの考えを示した。
過去にはFRBが金融政策を大幅に引き締め、米経済がリセッションに陥ったこともあったと述べた。
今週は11月雇用統計が注目される。

*ユーロ「通貨4位(4位)、株価6位(7位)DAX)、ドルは弱いがユーロなお弱し、先週は最弱通貨」
 ドル安が話題となっているが、先週はユーロが最弱通貨であった。消費者物価の低下と、それにもかかわらず、ECBの金融政策の一体性のなさも不安材料だ。年間では4位を維持している。11月のユーロ圏消費者物価上昇率は前年比2.4%と、10月の2.9%から低下した。独の11月の消費者物価も前年同月比2.3%上昇と、前月の3%上昇から伸びが鈍化した。域内各国の長期金利は年初と比べても低下している。

 ゴールドマン・サックスは、ECBが来年2Qに初回の利下げに踏み切ると予想し、従来の見方(3Qに利下げ)から前倒しした。一方、ECB当局者の意見は不一致となっている。

 ドイツ連銀のナーゲル総裁は11月30日のデータ発表後に、インフレリスクは「上方に傾いている」と主張した。対照的に、イタリア中銀のパネッタ総裁は「ディスインフレが進行中だ。経済活動への不必要なダメージや金融の安定へのリスクを避ける必要がある」と論じた。仏中銀のルロワドガロー総裁は「なんらかの衝撃が起きない限り、利上げはもはや完了した。2024年のある時期が来れば、利下げの問題が出てくるかもしれない。だが、今ではない。対処法が有効であるなら、その期間は十分に我慢強く待つ必要がある」と述べた。ラガルドECB総裁は「闘いは終わっていない。勝利を宣言する状態にないのは明らかだ」と述べ、インフレ率を目標値に戻すと約束した。
 先週のユーロは対円、対ドル、対スイスで大幅下落した。

*ポンド「通貨3位(3位)、株価16位(16位)、3位堅持。ECBより金融引き締め維持の見通し」
 ユーロが4位でポンドが3位で順位は僅差だが、価格では差がついてポンドが強い。一方、高金利の英国株は、より金利が低い欧州株より弱い。
ユーロとの差は消費者物価がユーロ圏が2%台、英国が4%台にあることによる。政策金利も差が出てECBは4.5%、英中銀は5.25%だ。

  グリーン英中銀政策委員は、景気後退を示唆するデータよりも、インフレが高止まりする兆候の方を懸念しているとし、金利は長期にわたり高水準にとどまる可能性があると述べた。 労働市場がこれまでよりも大きくインフレに貢献している可能性があり、実質的な中立金利の水準も上昇している可能性があると指摘。「こうした変化は、中期的にインフレ率を2%に戻すために、制約的な政策を長期にわたり維持する必要がある可能性を示している」と語った。

 ハント財務大臣も理解を示し、中銀が利上げして英国の成長を抑制するのは合理的だと述べた。OECDは、英政府は新型コロナウイルスのパンデミックと昨年のエネルギー価格高騰への対応で緩んだ財政を引き締めるべきだとの見解を示した。OECDはは英国のGDP成長率について、来年の見通しを0.7%と前回の0.8%からわずかに下方修正し、
また、2025年まで政策金利を5.25%に据え置き、同年から利下げを開始し、年末に4%とするとの見通しを示した。

*豪ドル「通貨7位(8位)、株価17位(16位)、CPI低下で政策金利は据え置きか。経済指標は弱くはない」
 11月は2位と強かった。11月RBA理事会で政策金利を4.1%から4.35%へ引き上げてから強い。豪ドルドルは依然200日移動平均線を上回っている。さて今週の政策金利は4.35%で据え置くとの予想が強い。10月のインフレ率が9月の5.6%から4.9%に鈍化したこともある。一方10月の小売売上は前月比0.2%減少したが、11月はブラックフライデーの売上が押し上げられると予想されている。

  HSBCは予想を上回る人口急増を理由に、2023年と2024年のインフレとGDP成長率の予想を引き上げた。2023年のGDP成長率は前回予想の1.7%を上回る2.0%、2024年のGDP成長率は前回予想の1.2%を上回る1.5%になると予想している。2023年のインフレは5.5%から5.7%に上昇し、2024年には3.1%から3.5%に上昇すると予想。しかし、FRBやECBを含む他の主要中央銀行のほとんども再び利上げをしないことも一因で、RBAは追加利上げは予想されていないと述べた。

 豪の3Qの企業設備投資は8年ぶりの高水準を記録した。鉱業部門の設備投資が大幅に増えたことが寄与した。また、企業の年間の設備投資計画も上方修正された。
設備投資は前期比で実質0.6%増加。鉱業部門は5.6%増えた。

*NZドル「通貨8位(9位)、株価18位(19位)、政策金利は据え置き。NZドル安に備えて外貨準備増強へ」
 11月は最強通貨となった。年間では8位だ。株価指数は年初来0.92%安と弱い。高金利が株にとっては重荷か。NZ中銀は、政策金利を5.5%に据え置いた。中銀は「現在の政策金利により支出が抑制され、消費者物価の高まりは弱まっている。ただ物価上昇率は依然として非常に高い」との見方を示した。仮に想定以上の物価上昇圧力が今後生じる場合、「政策金利をさらに上げる必要がある」とも付け加えた。

 ホークスビー中銀副総裁は、コアインフレの高止まりが不確実性をもたらしており、政策を誤る余地はほとんどないという認識を示した。
ホークスビー副総裁は、移民が依然としてインフレの主な要因になっていると指摘。移民は労働市場の逼迫を緩和する一方、特に賃貸住宅に対する需要サイドの圧力も強めていると述べた。
一方、インフレ率の低下の兆しも見え始めている。3Qの消費者物価上昇率は5.6%増と2Qの6.0%から低下した。中銀は水準的に高いとしている。

 NZ中銀は為替水準については神経質だが、最近はまだ懸念を示していない。このところNZドルが強含み推移しているからだろう。ただNZドル下落でのインフレ上昇への準備はしている。中銀が外貨準備を強化している。シルク総裁補は「市場が機能不全に陥った時や為替レートの水準が経済のファンダメンタルズに比べて極端で不当な水準にある場合に介入することが含まれる可能性がある」と述べた。NZドルの下落に備える姿勢を示した。