この記事は2023年11月30日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「アイ・エス・ビー【9702・プライム】モバイル・車載・医療・金融の独立系SIer 」を一部編集し、転載したものです。

設計から運用・保守まで一気通貫
DX需要背景にエンジニア数は2000人超

アイ・エス・ビーは、システムの設計、開発、運用・保守を手掛ける独立系システムインテグレーター(SIer)だ。上場するSIer・ソフトウェア企業約250社のうち、同社の業績規模は100位前後で、モバイル・車載・医療・金融など幅広い分野の国内大手企業や自治体を顧客に持つ。組込み系ソフトを得意とし、一気通貫で請け負うことができる。

▼若尾一史 社長

アイ・エス・ビー【9702・プライム】モバイル・車載・医療・金融の独立系SIer
(画像=株主手帳)

組込み系ソフト強みに
顧客の業務改善を後押し

SIerと呼ばれる企業のなかでも、同社の強みは顧客の業務課題の改善に向けて、システムに関わる一連のサービスを提供できることだ。特に、機器内の制御システムや近年のIoTで機器同士を接続する組込み系を得意としている。

「アプリケーションだけ、クラウドだけ、と請け負う分野を限定している企業さんは多い。組込み系業務も含めてワンストップで請け負える、当社のような企業は実は少ないと思います」(若尾一史社長)

セグメントは4分野に分かれる。自動車に搭載される車載システムやスマホ、基地局のシステムを扱う①モビリティーソリューション。企業の業務システム、医療・産業機器の組込みシステム、POSシステムを扱う②ビジネスインダストリーソリューション。官公庁・自治体の住民サービスシステムや銀行・証券の金融システム、インフラに関わるシステムを扱う③エンタープライズソリューション。入退室管理やモバイルデバイス管理を扱う④プロダクトソリューションがある。2023年12月期第2四半期の売上高構成比は①が18%、②が34%、③が32%、④が16%だ。

最近は端末組込みだけの案件であっても、その先のクラウドを活用したシステムを導入するなど、業界を問わずDX需要が高い。そうした需要を全面的に取り込めるよう、21年1月には組織を再編した。組込み、アプリケーションなど業務内容によって独立していた部署を分野ごとに統括し、それぞれに営業本部を設置。またセグメント間での情報共有・連携をとることができる体制にした。

2Qで通期の50%超達成
全セグメントで業績伸長

23年12月期第2四半期は、重点戦略(P29参照)が奏功し、全セグメントにおいて前年同期を上回る業績だった。上半期までの全売上高は前年同期比12%増の159億1900万円、営業利益が同19%増の13億1500万円。第2四半期時点で売上高・営業利益ともに通期目標の半分超の数字を達成している。

「4月までの受注が多く、DX需要の波に乗れていると認識しています。また半導体不足が緩和され、昨年苦戦していたネットワーク構築やサーバー交換の依頼も徐々に回復しました」(同氏)

構成比率の高いエンタープライズソリューションでは、官公庁向け案件の安定的な推移と証券系の顧客からの受注増加により、前年同期比20%増となった。増収寄与率が48%と増収の牽引役になっている。

またコロナ禍で浸透したモバイルワークに向けた製品もいち早くリリースした。入退室管理に加え、勤怠管理と連携できる「ALLIGATE」、社用モバイルデバイスを遠隔で管理できる「VECTANT SDM」、建設現場向け入退場管理「Easy Pass」は、サービス利用料を顧客が継続的に支払う「リカーリング」の形態をとる。3製品は安定的な収益となっており、リカーリングビジネスは19年から毎期、30%を超える伸びで好調だ。

同社は1970年に設立。当初はコンピュータ室の運用管理を行う派遣業務から始まり、IT機器の運用保守業務を行っていた。転機は80年代に自動車電話の開発を主導する大手電機メーカーに誘われ、その移動体無線電話のシステム開発に携わったことだ。以来、大手電機メーカーからの依頼案件を精力的に手掛け、自動車電話事業はやがて折りたたみ型携帯、スマートフォンの携帯電話事業へと繋がる。これとほぼ同時期に、別の事業所では金融系や医療系など、扱う事業分野を80年初頭から増やしていった。

03年にはオフショア開発の目的でベトナム・ホーチミンに100%出資の子会社を設立。また安定的に業績拡大する目的で10年代からM&Aを行っており、現在10社の連結子会社を有する。

グループ経営強化重点に
最先端の技術者集団へ

若尾氏が社長に就任した21年から、中期経営計画2023が3カ年でスタート。①顧客開拓・有望分野の拡大、②ソリューション事業の創出、③グループ経営強化の3つの重点戦略を掲げている。①では、従来のような顧客からの受託開発型から提案型営業のスタイルを強化し、有望分野の車載、モビリティーサービス、医療、業務サービスに注力。また②では、外部のソリューションパートナーとの連携、共同開発により、高付加価値ソリューションを提供し、プライム案件を獲得している。プライム案件比率は目標の20%に達した。あわせて③では、首都圏での受注案件に対しグループ会社の地域拠点でリモート開発を推進し、採用や社員育成を強化している。連結エンジニア数は19年12月期から20%増加し、23年6月時点で2000人超となった。今後もDX需要を中心とするシステム開発の需要が高く、リカーリングビジネスの引き合いが多いことから、成長を見込んでいる。

「最終年度となる23年12月期は、第1四半期時点で通期予想を上方修正し、売上高310億円、営業利益26億円、営業利益率8・4%を計画しています。今後も国内外を問わず、高い技術を有する企業のM&Aを積極的に行いつつ、自社で優秀な人材の確保・育成もしていきたい。ITの知識があまりない企業さんから『こんなシステムがほしい』という大まかな依頼を受けても、コンサルティングも含め、的確に提案・製品化できるような『最先端の技術者集団』にしたいと思っています」(同氏)

▼同社開発の「ALLIGATE」はクラウド対応の入退出管理システム

アイ・エス・ビー【9702・プライム】モバイル・車載・医療・金融の独立系SIer
(画像=株主手帳)

2022年12月期 連結業績

売上高289億5,200万円10.6%増
営業利益23億1,900万円24.0%増
経常利益24億100万円23.7%増
当期純利益14億2,300万円28.3%増

2023年12月期 連結業績予想

売上高310億円7.1%増
営業利益26億円12.1%増
経常利益26億4,500万円10.2%増
当期純利益15億9,000万円11.7%増

※株主手帳23年12月号発売日時点

若尾一史 社長
Profile◉若尾一史 社長(わかお・かずふみ)
1972年生まれ。99年に有限会社若尾商事に入社。2002年、ソフトウエアメインテナンス会社(現エス・エム・シー)に入社し、02年にアイ・エス・ビーに転籍。08年にビジネスパートナー部長、16年に取締役、20年に専務取締役を経て、21年に代表取締役社長に就任(現任)