ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「12月の円高進む。ただ3兆ドルロングの日本には円高はデメリットが大きい」

ドル円=142-147、ユーロ円=154-159、ユーロドル=1.05-1.10

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨10位(11位)、株価4位(4位)、12月の円高進む。ただ3兆ドルロングの日本には円高はデメリットが大きい」
 例年のように12月の円高(特に12月初旬)で、円は先週は最強通貨、12月もここまで最強通貨、年間でも南アランドを抜いて11位から10位へ浮上している。11月の外国債償還・利払いの円転から続く、年末の国内支払いが毎年影響している。そういう動きは、欧米にはない。円以外の通貨は対ドルで大きく動いていない12月だ(12月中旬には特に傾向はなく、下旬は円高が進むデータがある)

 日銀のゼロ金利解除思惑で先週は146円から141円へ下落、日経平均株価も先週は3.36%下落となり、今後は政府日銀は発言により慎重となろう。リーク記事のようなものも飛び交うだろう。預金900兆円に対し、貸し出しが500兆円、マイナス金利は個人消費を減退させるデメリットがあると、これまでも述べてきたが、慣れ切ったマイナス金利からの撤退は円高株安も誘導し悪影響も大きい。
 日本は国全体で3兆ドルのロングなので、円高のデメリットは先週の現象から見て明らかだ。
日本は7-9月期がマイナス成長、マイナス賃金が続く。日銀が注目する6つの物価指標もすべて2%超えだが。3つが上昇、3つが下落傾向で判断が難しい。金利の正常化でのマイナス金利解除はありうるが、それを市場や国民に納得させるのは難しく、手法を間違えると、円高株安ショックが訪れる。また海外で利下げ観測が出てきただけに日銀の舵取りは難しい。
 尚、日本の今年の貿易赤字は昨年の半分になりそうだ。昨年は9兆円介入で半分埋めあわせた。原油動向で赤字・円相場は左右される。

*米ドル「通貨5位(6位)、株価(NYダウ)112位(12位)、利下げ観測も出てきた市場、パウエル議長は慎重を維持か。政府は圧」
 米ドルは年間で12通貨中5位と強くはなく弱くもない。利上げでリセッション観測もあったが、回避できそうだ。株価も高金利にかかわらず快調だ。国内問題だけではなく外交負担も大きいが、経済のダイナミズムは揺るがない。米国が自国第一主義になれば、世界はどうなるかの不安は残る。

 さてアトランタ連銀の4Q・GDPナウは1.2%で3Qの4.9%からは減速する。クリーブランド連銀のCPIナウは12月が3.34%、コアが3.98%、4Qが2.63%だ。サプライチェーンインデックスも落ち着いている。一部のFRBからは利下げ観測も出ているが、2%の目標まで距離があるため、パウエル議長は慎重な姿勢を崩さないだろう。今週のFOMCではFF金利誘導目標は据え置きと見られる。12日に発表される11月消費者物価は10月の3.2%から3.1%へ低下する予想だ。バイデン大統領はやや強い11月の雇用統計は、FRBが利上げを再開することを奨励するものではないと、珍しく圧力をかけている。

 イエレン財務長官は、トレーダーの間で今広がっている米利下げ見通しを支持することを控えた一方で、「市場は入ってくるデータに基づき、将来のFOMCの動きを予想している。それはある意味で健全な反応であり、市場がデータを読む際に思慮深ければ、金融政策を補完するものとして役に立ち得る」と述べた。
 ドルは対極にあるユーロが弱く、米ドルが指標以上に押し上げられている部分もある。

*ユーロ「通貨4位(4位)、株価6位(6位)DAX)、12月はここまで最弱、24年の利下げ予想強まる」
 12月のユーロはここまで最弱だ。対ドルでは2週連続陰線。今年も弱い円に対しても2週連続陰線、12月月足もここまで陰線だ。ユーロ圏経済のリセッション懸念やECBの利下げ観測がある。域内各国の10年国債利回りは年初来で低下している。11月ユーロ圏消費者物価(HICP)上昇率は前年比2.4%に低下し、3カ月連続で市場予想を大幅に下回った。ドイツ11月の消費者物価(HICP)は前年同月比2.3%上昇と伸びが鈍化し、ユーロ圏の金利がピークに達したとの見方が強まった。

ドイツ銀行はECBが2024年に1.5%の利下げを行うとの見方を示した。インフレが鈍化し、中銀当局者がタカ派的なトーンを弱める中、利下げ幅の予想を従来より0.5%拡大した。
タカ派とされるシュナーベル専務理事は、追加利上げを選択肢から外すことが可能だとの認識を示した。ビルロワドガロー・フランス中央銀行総裁は、利下げに関する議題は2024年に浮上する可能性があるという認識を示した。経済指標は概ね弱いが、直近では、ドイツの10月の鉱工業生産指数は前月比0.4%低下と、5カ月連続の低下となった。

*ポンド「通貨3位(3位)、株価16位(16位)、利下げはFRB、ECBの後」
 ユーロ程弱くはないが、12月はやや弱い。年間では3位を維持している。ユーロ圏より金利がやや高く、経済指標も若干強いからだ。
主要中央銀行は今週の会合で政策金利の据え置きを決めると見られている。市場はFRBとECBが来年の早い時期に利下げを開始し、それらの後に英中銀も利下げを始めると予想している。
さてベイリー英中銀総裁は、英国の金利はしばらくの間、現在の水準にとどめる必要があり、英中銀はそれによって生じるかもしれない金融の安定を巡るリスクに警戒していると述べた。
「インフレ率を持続的に目標に戻すためには、金利を長期にわたってこの水準にとどめる必要がありそうだ。金利上昇の完全な効果はまだ現れていない。そのため、金融安定リスクに引き続き警戒している」とした。 中銀は報告書で、英企業や家計が今のところ金利上昇に対応しているとしつつも、調整のプロセスは終わっていないと指摘。予想を上回る賃金・所得増加が家計への圧迫を幾分和らげたものの、生活費高騰や金利上昇によって家計は厳しい状況が続いているとした。英国国民の来年のインフレ期待は3.3%(8月調査は3.6%)、今後5年間の英国国民のインフレ期待は3.2%(8月調査は2.9%)となっている。

*豪ドル「通貨7位(7位)、株価15位(17位)、利上げで上昇、据え置きで下落、高金利でマイナス成長懸念あり」
 今月は豪ドルが弱い。ただ豪ドルが下がれば豪株価は上昇した。豪ドルは11月の利上げで上昇、12月の据え置きで下落した。
RBAは政策金利を年4.35%に据え置いた。据え置きは10月の会合以来、2会合ぶり。11月は0.25%引き上げていた。

ブロック総裁は声明で「今後の経済見通しやこれまでの金利上昇による影響を精査する。インフレ率は緩やかで、目標と一致している」と述べた。中銀はインフレ率を2-3%に抑える目標を掲げている。10月の消費者物価上昇率は前年同月比4.9%だった。前月の5.6%から鈍化していた。家賃や旅行関連費用の上昇幅が縮まった。チャーマーズ財務相も「世界情勢は予断を許さないが、豪のインフレ率は緩やかになっており、賃金も上昇している」とした。ブロック総裁は「海外ではサービス価格のインフレが続いており、豪でも同様のことが起こる可能性がある。さらなる金融引き締めが必要かは今後のデータとリスク評価の進展次第だ」とした。

 一方、3Q・GDPは、前期比0.2%増と1年ぶりの低い伸びにとどまり、予想の0.4%増を下回った。輸出が軟調だったほか、家計が支出を控え、利上げが需要を抑制していることを示唆した。高インフレ、急激な金利上昇、税負担の増加といった強い逆風が大きく影響し、家計の実質可処分所得が激減した。
4Qに実質GDPがマイナス成長に転じるリスクがあると指摘されている。金利はピークに達し、緩和サイクルが来年3Qに始まると予想されている。

*NZドル「通貨8位(9位)、株価18位(19位)、11月最強通貨が円高で下落。中銀の役割縮小」
 11月は最強通貨となったが12月は弱い。12月は円高が進み、円キャリートレードの巻き戻しが高金利通貨のNZドルを下げている要因もある。豪が政策金利を据え置き、豪ドルが下落して連れ安ともなっている。ホークスビー中銀副総裁は、移民が依然としてインフレの主な要因になっていると指摘。移民は労働市場の逼迫を緩和する一方、特に賃貸住宅に対する需要サイドの圧力も強めていると述べた。

一方、インフレ率の低下の兆しも見え始めている。3Qの消費者物価上昇率は5.6%増と2Qの6.0%から低下した。中銀は水準的に高いとしている。また中銀が外貨準備を強化し下落時のNZドル介入の備えを行っている。今週は3Q・GDPの発表がある。2Qから減速の予想だ。

 NZ新政権は政府支出削減や所得税負担軽減の方針を表明したほか、中銀の政策枠組みを物価安定だけを目標とする形に修正することなどを提案した。
中銀は物価安定と雇用促進という2つの使命を課せられているが、政権は金融政策の目的を物価安定達成に絞る手続きを100日以内に行うという。政策金利が2008年以来の高水準に達し、多くの住宅ローン利用者や企業に重圧を与えている一方、中銀に2つの使命を与える仕組みは、インフレ抑制に効果を発揮してこなかったと指摘した。