CAM/CADとは?CAEとの違いや製造業での活用方法を解説
(画像=Gorodenkoff/stock.adobe.com)

製品を作る際には、CADで図面を作り、工作機械で製品を作ります。では、製造において欠かせないと言われているCAMは、どこで利用されているのでしょうか。

目次

  1. CAM・CAD・CAEとは
  2. CAM/CADを導入するメリット
  3. CAM/CADの活用事例
  4. CAM/CADの選び方
  5. CAM/CADはDXやFAの第一歩となる

CAM・CAD・CAEとは

CAM・CAD・CAEとは

CAMとCAD、CAEは、製造や設計、加工に用いられるコンピュータ支援ツールです。一般的に、CADを用いて図面を書き、CAEでシミュレーションや試験を行い、CAMで工作機器に指示する流れで製品が作られます。

CAM(Computer Aided Manufacturing)

CAMは、製品の生産準備全般をコンピュータ上で行うシステムです。基本的に製品の設計はCADを用いますが、工作機械はCADのデータを読み込むことができません。これを解決するのがCAMの重要な役割です。CAMはCADデータを、工作機械が理解できる「NCプログラム」に変換します。

CAMでの処理は、大きく分けて4段階に分けられます。

1. 形状入力・確認
2. 加工条件設定
3. 工具経路作成
4. ポスト処理(NCデータへの変換)

まず、CADデータをCAMで確認します。次に、原点や素材などの加工条件を設定し、工具と経路を設定します。これらが確定すれば、CAMデータを工作機械が読み取り可能なNCデータに変換します。

基本的にはCADで図面を設計し、CAMでNCデータに変換して工作機械に読み込ませます。ただし、その手間を無くすために、CADとCAMが一体化したソフトも販売されています。これを一般的に、CAD/CAMやCAM/CADと呼びます。

CAD(Computer Aided Design)

CADは、コンピュータ上で設計や製図を行うツールです。スマホやパソコンなどの工業製品から、ビルやトンネルなどの建築物まで設計できます。幅広い用途に利用できる汎用CADに加え、住宅や水道などの特定の用途に特化した専用CADがあります。

CADには2D CADと3D CADがあります。2D CADは図面を2次元上に表したもので、主に点と線、寸法で製品の形状を表します。どのソフトで設計してもほぼ同じ図面になるため、異なるソフト間の変換が容易です。

3D CADは、図面を3次元上に表したもので、形状をさまざまな角度から見ることができます。2D CADよりも視認性が高く、図面をイメージしやすい点が最大の特徴です。しかし、3次元データは品質が不安定になりやすいため、運用には注意しなくてはなりません。

CAE(Computer Aided Engineering)

CAEは、コンピュータ上でシミュレーションや解析を行うツールです。CADで設計した図面をコンピュータ上で再現し、その中で剛性や強度の計算などを実行できます。CAEは、身近な製品のシミュレーションから、宇宙機器の開発にまで活用されています。

CAEのメリットは大きく分けて3つあります。1つ目は、不具合の原因究明が容易にできる点です。CAEでは、大きさや形状の制限なく物体を動作できるうえ、応力や温度なども調節できます。これを活用すれば、疲労試験や引張り試験をコンピュータ上で実施できます。

2つ目のメリットは、PDCAサイクルを素早く回せることです。CAEを活用すれば、実際に製品を作製しなくても、強度や寿命などを予測できます。設計後、試作品を作って試験するより、CAEでシミュレーションしたほうが早く検証できるため、素早い製品開発が可能です。

3つ目のメリットは、作り出すことが困難な環境で検証できることです。先述のように、宇宙開発にはCAEが用いられています。これは、現実には難しい宇宙環境を簡単に作り出すことができるためです。また、応力や温度、電磁場などの通常は見えないものも可視化できます。

このようにCAEを使えば、コンピュータ上で簡単かつ迅速に、通常では難しい環境でのシミュレーションや解析が行えます。

CAM/CADを導入するメリット

CAM/CADとは?CAEとの違いや製造業での活用方法を解説
(画像=Chaosamran_Studio/stock.adobe.com)

CAM/CADを導入すると、以下のようなメリットを享受できます。

・作業の効率化・生産性の向上
・複雑な加工に対応できる
・エラーの低減・品質の向上
・自動化への第一歩となる

作業の効率化・生産性の向上

CAM/CADを導入すると、作業の効率化や生産性の向上が実現し、製品設計から製造までにかかる時間を大幅に短縮できます。CADは手作業よりも、速度や正確性の点で優れています。複雑な形状の製品も短時間で設計できるようになり、図面の作成が楽になるでしょう。

コンピュータで作図するメリットとして、調整や修正が簡単という点が挙げられます。手作業で作図する場合、全体的な微調整をするには全ての図面を描き直さなければなりません。コンピュータの場合は、数値をいくつか変えるだけで修正が完了するため、大きな時短効果が得られます。

また、CAMとCADが一体化されていれば、CADで作成したデータをスムーズにCAMにインポートできます。必要な条件が搭載されていれば、CAMとCADが一体化したソフトの利用がおすすめです。

複雑な加工に対応できる

CAM/CADを利用すれば、複雑な加工に対応できます。自由曲面や多軸加工など、人手によるプログラミングが難しい場合でも、コンピュータを利用すれば迅速かつ正確に計算してくれます。

従来だとプログラミングや計算に時間のかかる図面でも、CAM/CADにそれらの大部分を任せることができるため、対応できる業務も増えるでしょう。さらに、計算やプログラミングにかかる残り時間を正確に算出してくれるため、納期調整も容易になります。

また、CAM/CADを活用すれば、製品のクオリティが均一になります。品質のバラツキが小さくなるため、高い技能を持つ従業員に負担が集中する事態を防げます。

エラーの低減・品質の向上

CAM/CADを利用すると、人が行う計算が減るため、人的ミスのリスクを低減できます。ミスの多さが問題となっている場合は、CAM/CADを導入することで一気に解決するかもしれません。

またCAM/CADには、エラーを通知してくれる機能があります。製作段階でエラーを発見できるため、早期対処が可能です。原因がわからない複数のミスを直すよりも、原因が明確なミスをその都度直すほうが労力を要しないため、作業時間短縮の効果も期待できるでしょう。

作業時間の短縮で浮いた時間を見直しなどに活用すれば、さらにミスを減らし、納品時の品質を高めることが可能です。このようにCAM/CADを導入すると、人的ミスの削減によりエラーを低減し、品質を向上できます。

自動化への第一歩となる

CAM/CADの導入は、自動化の第一歩となります。現段階では、CAM/CADの自動化は実現していませんが、今後の技術の発展で、設計段階からある程度の自動化ができるかもしれません。

しかし、自動化が実現した段階でデジタル化が進んでいないと、自動化に乗り遅れる可能性があります。なぜなら、自動化するためにはデータが必要であるため、早期からCAM/CADなどのシステムを利用していなければ、必要なデータ数に届かない可能性があるためです。

自動化のほか、DXやスマートファクトリーなどのデジタル化にはデータが欠かせません。デジタル化が進む社会で収益を向上させるには、早期からCAM/CADなどのデジタル技術を取り入れることが重要です。

CAM/CADの活用事例

既に、CAM/CADを活用してメリットを享受している企業は多くあります。ここでは、2つの活用事例から、解決できた課題や導入効果を解説します。

プレス金型の導入事例

国内の鋳造所では、業務効率化を図るために2次元の図面を用いずに、CAM/CADの3次元データのみを利用して金型を製造しています。同所では、2次元の図面データが支給された場合でも、CAM/CADで3次元データを作成し、精度の高い製品作りに徹しているようです。

CAM/CADを導入した理由は、ものづくりの最新技術を使い続け、常に最高品質を顧客に提供するためです。そのために、近年支給されることの増えた3次元データを扱えるようにしました。

3次元データは視認性が良いため、CAM/CADの導入後に加入したメンバーの習得が早いと言います。初めはCAM/CAD提供元の教育を受けていましたが、現在は社内にノウハウが蓄積しており、業務の中で教育できる仕組みができています。

同所はCAM/CADをさらに使いこなすため、互換性の低いデータ形式で提供された図面をエラーなく処理する方法や、エラー箇所を自動ヒーリングできる方法を試しているようです。

生産性向上(無人加工)の導入事例

国内の自動車関連メーカーは、完全無人加工を目指し、CAM/CADを活用しています。CAM/CADの導入で業務中の無人加工が占める割合が拡大し、人が実施する作業量を低減できていると言います。

同社は従来、独自の製造過程を現場に伝えるため、加工指示書に手作業で書き込まなければなりませんでした。しかしCAM/CADのカスタマイズ機能を使うことにより独自の製造過程を自動で入力できるようになりました。

その結果、加工指示書の作成にかかる時間を10分の1以下に削減することができ、業務効率化が図れました。このように、CAM/CADなどを導入してデジタル化すれば、これまで手作業でしか処理できなかった作業が自動化できるようになります。

同社は今後、シミュレーション機能やカスタマイズ機能を活用して作業性を向上し、最終的には「手作業をゼロ」にすることを目指してCAM/CADを活用していくようです。

CAM/CADの選び方

以下の点に注意してCAM/CADを選ぶと、導入効果を向上できます。

・価格・コスト
・データの型
・軸数や得意分野

価格・コスト

必要な精度や機能によって、購入すべきCAM/CADの価格は変化します。もちろん、高額なCAM/CADは高性能で多機能ですが、機器によっては価格が数倍から数十倍になることもあるため、必要な性能や機能、人材のスキルに応じて検討しましょう。

CAM/CADの料金形態は、年間ライセンスまたは永久ライセンスの2つが一般的です。中には、年間ライセンスしか販売していないソフトもあれば、永久ライセンスしか販売していないソフトもあります。

一般的に、500万円を超える製品は、CAM/CADのハイエンド製品と言えます。資金に余裕があり、多機能のCAM/CADが必要な企業におすすめです。多くのCAM/CADは、100~300万円で購入できます。一般的な使いかたをするのであれば十分な性能が搭載されています。

安価なモデルだと、数十万円で購入できます。3次元モデルが必要ない場合や、CADを完璧に使いこなせる人材がいない場合は、このクラスでも十分な可能性があります。自社の状況から、どの価格帯のCAM/CADが必要かを判断しましょう。

データの型

どのようなデータの型を扱うかによって、精度や計算速度に差が生じます。CAM/CADのデータの型の代表例は、以下の3つです。

・フィーチャ型
・サーフェス型
・ポリゴン型

フィーチャ型は、ソフトで用意されている部品を組み合わせて作成したデータです。球や直方体などを組み合わせてデータを作成します。主に2D加工に用いられ、さまざまな形状を取り入れられるため、複雑なデータが作成できるのです。

サーフェス型は、厚みを持たない平面で構成される立体モデルです。サーフェスに厚みを持たせたり、単純な形状のソリッドを複雑な形状をしたサーフェスで切り取ったりすることができます。主に3D加工に用いられます。

ポリゴン型は、多角形を貼り合わせて作成したデータです。細かい平面を集めて曲面に近似する手法が取られるため、サーフェス型に比べると精度は劣ります。しかし、情報量が少なくて済むため、高速処理できるという利点があります。

自社に適したデータ型があれば、購入予定のCAM/CADに含まれているかを確認してから導入するようにしてみてください。

軸数や得意分野

CAM/CADによって得意分野が異なります。例えば、2Dに特化したソフトもあれば、3Dに特化したソフトもあります。3Dデータを活用したいのにもかかわらず、安価だからという理由で2Dに特化したソフトを購入してしまっては、かえってコストパフォーマンスが悪くなってしまいます。

また、複雑な製品の設計をするのにもかかわらず、軸数の少ないソフトを導入してしまっては、頻繁に固定角度を変えなければならないため、精度が低くなる可能性があります。自社に必要な精度をしっかりと確認してから、CAM/CADを導入するようにしてみてください。

CAM/CADはDXやFAの第一歩となる

CAM/CADを活用すると、業務効率化や品質向上、対応可能な業務の拡大など、さまざまなメリットを享受できます。しかしながら、CAM/CAD活用の最も大きなメリットは、自動化への第一歩となることではないでしょうか。

CAM/CADの導入は、DXやファクトリーオートメーションの推進につながります。近年の急速な技術革新に対応するには、最近の技術を使い続けていく必要があります。DX推進に後れを取っていると感じている方は、CAM/CADを通して、DXやFA推進の一歩目を踏み出してみてはいかがでしょうか。

(提供:Koto Online