総括
FX「対円9年連続年足陰線か、今週の政策金利は2.5%引き上げ予想」トルコリラ見通し
(通貨最下位、株価首位)
予想レンジ トルコリラ/円4.3-5.3
*対円では9年連続年足陰線となりそうだ
*正統派経済政策は評価が高いがリラ上昇に繋がらず
*今週は政策金利が2.5%引き上げられる予想だ
*リラ安の最大要因は外貨預金が全預金の40%もあることだ
*トルコへの証券投資大幅買い越し、ただリラ買いに繋がらず
*物価が高すぎて中銀総裁もイスタンブールに住めない
*10月の経常収支は2か月連続の黒字
*失業率は8.5%に低下
*トルコのソブリン債取引を推奨=ドイツ銀など
*インフレは60%台
*OECDは2023年のトルコ経済の成長見通しを上方修正
*S&Pはソブリン格付け見通しを「安定的」から「ポジティブ」に修正
*政府は2026年にインフレが一桁となると主張
(今年も大幅安)
今年も大幅安で終わりそうだ(本リポートは今週が2023年最終号です。2024年は1月9日からです)。
リラは対ドルで29台のせ、年初来では54.7%安。対円では29.9%安となり、トルコ政府が自画自賛している正統派経済政策に反して弱く、インフレ高騰の大きな要因のままとなっている。対円では9年連続で年足が陰線となりそうだ。
(リラ安の最大要因は)
経常収支改善、外貨準備増加と好材料もあるが、問題は預金の40%が外貨であること、国民は政府の政策をまだ信頼していない。円も安いが、それでも日本の個人の外貨預金は全預金の0.6%程度だ。引き続き、預金の動きを注視したい。
(表は、リラ預金と外貨預金額)
(今週は政策金利決定)
トルコ中銀は先月、主要政策金利を40%に引き上げ、引き締めサイクルは間もなく完了するとの見通しを示した。今週は21日に金融政策決定会合がある。予想は2.5%利上げ。
アナリストらは先月も引き締めが縮小すると予想していた。しかし中銀は、2 桁のインフレに対処するために再び5.0%引き上げ40% とした。
今回、中銀は現在の政策水準はインフレ解消コースを確立するために必要な水準にかなり近づいている、金融引き締めのペースは減速し、このサイクルは間もなく完了すると見られている。
中銀は、インフレ率が先月の62%近くから5月には70-75%に上昇し、その後来年末までに約30%台に低下すると予想している。
(トルコへの証券投資大幅買い越し、ただリラ買いに繋がらず)
外国人投資家による12月8日までの週のトルコへの証券投資は14.5億ドルの買い越しで、2017年7月以降で最大に達したことが明らかになった。
トルコ政府債の買越額は8.9億ドルと、17年8月以来の高水準。トルコ株の買越額も5.6億ドルで、週間ベースでは20年11月以来の大きさだった。
トルコはエルドアン大統領が5月に再選を果たした後、インフレ下での低金利という経済学の主流に反する政策を撤回したことで、外国人投資家の信頼がある程度回復しつつある。
エルドアン氏が起用したエルカン総裁が率いる中央銀行は6月以降に政策金利を計31.5%引き上げ、過去3カ月はいずれも5%の利上げに動いた。
さらに、市場の評価が高いシムシェキ財務相がエルカン氏とともに海外で投資家向け説明会を開いて積極的な対話を進めている。
トルコのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のプレミアムは12月14日、約3年ぶりの低さになった。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
引き続き、ボリバン下位で推移
日足、ボリバン3σ下限から小反発、ボリバン下位で推移。12月15日-18日の上昇ラインがサポート、12月13日-18日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。
週足、2σ下限。一時3σ下限を下抜く。12月4日週-11日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線下向き。
月足、2σ下限近辺で推移。7月-8月の上昇ラインを下抜く。10月-11月の下降ラインが上値抵抗。
年足、8年連続陰線。その間52円から5円台へ沈む。今年は僅かに陽転していたが3月から陰転。
メルハバ
エルカン中銀総裁、イスタンブールでは家賃が高く住居探しに苦労
トルコ中銀のエルカン総裁は、イスタンブールの家賃が高いため母親と一緒に引っ越したと語った。「イスタンブールがマンハッタンよりも物価が高いはずがありません」と彼女は、米国で以前働いていた仕事場について言及した。
総裁は高級公務員として、追加手当を除いた総給与は16万1,000トルコリラ(5,555ドル)だが、同国の最低賃金は1万1,402リラ(393ドル)である。
エルカン氏は、住宅危機の解決策として公営住宅の数を増やすことを提案し、「1人が10軒の家を持つべきではなく、10人が10軒の別々の家を持つべきだ」と付け加えた。
シンクタンクBETAMの調査によると、トルコでは平均月額家賃価格が1年間で117パーセント上昇した。地震の被害を受けた一部の州では、家賃が3カ月前と比べて2倍以上に上昇した。