この記事は、2023年12月25日に三菱UFJアセットマネジメントで公開された投資環境ウィークリーを一部編集し、転載したものです。全体をご覧になりたい方は、こちらをご覧ください。加えて、デイリーレポートについては、mattoco lifeをご覧ください。

日銀は現状の金融政策を維持、為替市場は円安にふれ株価は上昇
(画像=SKfoto/stock.adobe.com)

目次

  1. 貿易収支は2カ月連続で赤字
  2. 消費者物価コアコア前年比は高い伸び
  3. 日銀の金融緩和維持を受け株価は上昇

貿易収支は2カ月連続で赤字

11月の貿易統計(原系列)によると、輸出額は前年比▲ 0.2% ( 10 月 +1.6% ) 、 輸入額は同 ▲ 11.9% ( 同▲12.5%)、貿易収支は▲7,769億円(同▲6,610億円)となり、2カ月連続で貿易赤字となりました。世界経済減速によって、輸出金額が減少したことが要因となりました。

なお、季節調整値で貿易収支は▲4,089億円(同▲5,013億円)となり、貿易赤字は縮小。また、輸出数量(季節調整値)は前月比▲5.6%(同▲1.1%)と2カ月連続で減少しました(図1)。

輸出数量指数はアジア向けを中心に低調
(画像=三菱UFJアセットマネジメント)

主要地域すべてで減少し、米国向けが同▲9.0%、EU向けが同▲9.0%、アジア向けが同▲4.9%と大きく減少しました。20日にダイハツの品質不正問題が報じられたことから、今後自動車の輸出鈍化に伴う鉱工業生産の下振れの可能性に注意が必要です。

消費者物価コアコア前年比は高い伸び

11月の全国消費者物価コア(生鮮食品を除く総合)は前年比+2.5%と10月の同+2.9%から鈍化しました(図2)。

消費者物価コア前年比は鈍化も高水準
(画像=三菱UFJアセットマネジメント)

内訳を見ると、政府の電気・ガス激変緩和対策事業による値引き効果により、電気代が同18.1%、ガス代が同▲11.6%と下落幅が拡大したことがインフレ率の押し下げに寄与しました。一方、コアコア(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)は同+3.8%(10月同+4.0%)と前月から伸び率が縮小したものの、高水準を維持しています。

12月の日銀金融政策決定会合では金融緩和策の維持が全員一致で決定されました。物価の高止まりが日銀の金融政策正常化を後押しし、2024年前半にはマイナス金利が解除される可能性があると見ています。

日銀の金融緩和維持を受け株価は上昇

先週の日経平均株価は週末比で+0.6%と上昇。業種別に見ると電気・ガスが軟調だった一方、海運、パルプ・紙が好調でした。日銀が金融緩和政策維持を決定したことを受けて為替市場では円安が進行し、輸出企業を中心に株価を押し上げました。

2023年の株式相場は円安や堅調な企業業績を背景に上昇し、バブル崩壊後の戻り高値を更新しました(図3)。

株価は堅調に推移したが足元の円高がブレーキ
(画像=三菱UFJアセットマネジメント)

12月の日銀短観では、2023年度下期企業の収益計画は下方修正されたもののTOPIXの予想EPSは拡大しており、リビジョン・インデックスはプラスです。2024年もバブル崩壊後の戻り高値の更新が期待されます。為替市場では足元円高が進行し、株価は上値の重い展開となりました。

2024年においても日銀による金融緩和政策正常化の観測が高まる中で円高トレンドが継続した場合、株価の重しになる可能性に注意が必要です。

三菱UFJアセットマネジメント株式会社
戦略運用部 経済調査室 本江志帆