本記事は、内藤 誼人氏の著書『人間関係に悩まなくなるすごい心理術69』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
自分のせいでなくともお詫びしてしまう
相手に迷惑をかけてしまったときには、たとえその責任が自分にはなくとも、きちんと頭を下げてお詫びをしてしまったほうがいいですよ。自分に責任があるかどうかなどは、考えないほうがよいでしょう。
相手に迷惑をかけているのに、「だって…」「でも…」とすぐに言い訳をしたり、正当化しようとしたりする人がいますが(けっこう多いですが)、そういう人はものすごく嫌われるものです。
「だって電車が遅れたんですよ。それって、私のせいじゃないですよね?」
「『海外からの発注なので納期が遅れることもあります』って書面にちゃんと書いてあるんですよ? それで怒られるのって、理不尽じゃないですか?」
なるほど、気持ちはよくわかります。
ですが、それでも相手に迷惑がかかっていることは事実。気分を害していることは間違いないのですから、お詫びすべきなのです。
英語には、「アイム・ソーリー・アバウト・ザ・レイン」という面白い表現があります。
直訳すれば「雨でごめんなさい」。
意味がわかりにくいと思うので説明しておきましょう。雨が降っていることは、自然現象ですので、まったく自分の責任ではありませんが、それでもあいにくの雨であなたが不快な思いをしているかもしれないので、その点について申し訳ない気持ちです、といった
意味になるでしょうか。
ハーバード・ビジネス・スクールのアリソン・ブルックスは、コンピュータの動作不良で相手に迷惑をかけてしまったとき、自分には責任がなくとも、「本当にごめん」とお詫びしておいたほうが、お詫びをしなかったときよりも好意的に評価してもらえることを明らかにしています。
言い訳や正当化をしようとすると、相手はさらに気分が害されます。
怒っている人に対して、「だって…」と自分に責任がないことを説明しようとすると、余計に憤慨させてしまう可能性が大です。
もともとクレーマーになるつもりはなくとも、お客さまはクレーマーになってしまうことがあります。お店側の、あるいは店員の心ない対応によって腹が立ち、結果としてクレーマーになっていく、ということもあるのではないでしょうか。
怒っている人をさらに怒らせないためにも、自分に責任があるかどうかなどを考えず、さっさと「すみませんでした」と頭を下げるのです。たいていの問題はこちらがお詫びすればすぐに解決できるものです。
ムリに話そうとしなくてもいい
人と会話をするのが苦手なら、ムリに話そうとしなくてかまいません。どんな話題を切り出したらよいのか、どんな話をすれば相手が喜んでくれそうか、などと考えるからパニックになるのです。自分から話そうとしなくてもいいのです。
「それでは会話が成り立たないではないか」と思われるかもしれませんが、こちらから話題を提供しなければ、そのうち相手のほうが何か気を遣って話題を切り出してくるでしょうから、こちらは聞き役に徹していればいいのです。
「ふん、ふん」とうまく相づちを打ちながら、「ほう、ほう、面白いお話ですな」と水を向けてあげれば、たいていの人はずっとしゃべってくれます。それを聞いているだけでいいのです。
イリノイ州立大学のスーザン・スプレッシャーは、118人の大学生を集めて、面識のない2人をペアにして、ランダムに話し手と聞き手役に分けました。
話し手は、実験者が出したお題(「もしどこにでも旅行に行けるなら、行先は? その理由は?」など)について最大4分間ずっとおしゃべりするのです。聞き手は、一切話してはいけません。聞き手に許されているのは、相づちを打つこと、相手の目を見つめること、微笑み、の3つだけでした。
この作業が終わったところで、お互いにどれくらい好意を感じたのかを聞いてみると、話し手のほうが、聞き手の人に高得点をつけました。私たちは、他の人に自分の話を聞いてもらうと、その相手を好きになるのです。
というわけで、聞き役に徹していれば、勝手に相手が話してくれるばかりか、さらには好印象を与えることができるわけです。聞き役に徹したほうが、話題を考えずにすみますし、しかも相手には好かれる、という一石二鳥の効果があるのです。
では、どうして相手に話してもらうと、好かれるのでしょうか。
その理由は、私たちは自分の話をだれかに聞いてもらうことが大好きだからです。
ハーバード大学のダイアナ・タミールは、自分のことをしゃべっているときの脳みその活動を調べてみたことがあるのですが、中央辺縁系、側坐核、腹側被蓋野などが活性化していることがわかりました。これらの領域は、快感をつかさどる部位です。自分のことをおしゃべりしていると、私たちはとても気持ちがいいのです。
というわけで、自分はできるだけお話をしないほうがいいのです。
相手にたくさんお話をしてもらい、こちらは聞き役に徹したほうが、相手に好かれることが科学的に証明されているわけですから、ムリに話そうとするのをやめましょう。そのほうが疲れないというおまけもついてきます。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。 著書に『いちいち気にしない心が手に入る本:何があっても「受け流せる」心理学』(三笠書房)、『「人たらし」のブラック心理術』(大和書房)、『世界最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100』(総合法令出版)、『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版社)、『羨んだり、妬んだりしなくてよくなる アドラー心理の言葉』(ぱる出版)など多数。その数は250冊を超える。