本記事は、内藤 誼人氏の著書『人間関係に悩まなくなるすごい心理術69』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

講演会のマイク
(画像=K+K / stock.adobe.com)

人前で話すのが苦手なのは、自分だけではない

みなさんは、どれくらい上手に人前でスピーチできるでしょうか。

グループのリーダーや、班長のようなものになると、他の人の前で朝礼をしたり、スピーチをしなければならなかったりする場面がいくらでも出てきますが、どれくらいうまくできると思いますか。

たいていの人は、「ものすごく苦手」だと答えるのではないかと思います。

なぜなら、人前でのスピーチは、だれにとっても苦痛だからです。ネブラスカ大学のカレン・ドワイヤーは、815名の人にさまざまな恐怖のリストを見せて、ランキングを作ってみたことがあります。その結果は、左の表のようになりました。

圧倒的に「人前のスピーチ」が恐怖の1位であることがわかりますね。3位の「死」よりもスピーチのほうが怖いというのも面白い結果です。

緊張しやすい人は、「人前で話すくらいなら、いっそ死んだほうがマシ」と冗談めいて言ったりすることもありますが、冗談でも何でもなく、本当にそう思っているのかもしれません。

私は、仕事で講演会やセミナー講師としてお話しすることもありますが、やはり何回やっても慣れません。講演会の前日には、たいてい緊張してよく眠れないのです。

人前でしゃべることが苦手だと悩んでいる人がいると思うのですが、それが正常な反応なのであって、だれでも苦手なのですよ。

「なんだ、悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」ということに気づくだけでも、少しだけ心の重荷が軽くなるのではないでしょうか。

人間関係に悩まなくなる心理術69
(画像=人間関係に悩まなくなる心理術69)

自分は「まったくダメだ」と思っても、周りの人は思っていない

人前で話すのが得意な人などいません。

たいていの人は、スピーチが終わった後で、「うまく話せなかった」と気分が落ち込むのではないかと思います。

けれども、それは本人の思い込みであって、実際にはそれなりにうまくできている場合が多いので、そんなに落ち込まないでください。

カナダにあるブリティッシュ・コロンビア大学のリン・アルデンは、50人の男女大学生にビデオの前でちょっとしたスピーチをしてもらいました。

スピーチが終わったところで、参加者たちに自己評価をしてもらうと、とてもネガティブな意見ばかりが出ました。「しどろもどろでまったくダメ」「声が震えていた」「支離滅裂で、私が何を言っているのか、全然伝わっていないだろう」のように。

次にアルデンは、撮影したビデオを他の判定者に見せて、発表者についての評価を求めてみました。すると、「自然に話せている」「不安も感じていないように見える」と、意外に好意的な意見が数多く返ってきたのです。

結局のところ、「うまくできなかった」というのは本人の否定的な思い込みにすぎず、実際にはだれでもそれなりにうまくスピーチできているのです。悪い評価をしているのは、自分だけ。自分で自分のことをイジメているのです。

この研究からわかるように、かりに自分では「まったくダメだ」と思っていても、周りの人はそんなふうに思っていないことのほうが多いということを知っておくとよいでしょう。

自分に厳しくすることは重要ですが、あまりに厳しく自分をイジメてはいけません。自分ではまだまだだと思うからこそ、人は自己成長できるのですが、あまりに自分をイジメすぎるのも考えものです。

自分では「これっぽっちもうまくできたとは思わない」と感じていても、周囲の人にはわりと評価が高いこともよくあることですので、かりに自分では失敗だと思っても、そんなに自責の念に駆られることもないと思いますよ。

人間関係に悩まなくなる心理術69
内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。 著書に『いちいち気にしない心が手に入る本:何があっても「受け流せる」心理学』(三笠書房)、『「人たらし」のブラック心理術』(大和書房)、『世界最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100』(総合法令出版)、『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版社)、『羨んだり、妬んだりしなくてよくなる アドラー心理の言葉』(ぱる出版)など多数。その数は250冊を超える。
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