起業前の専業主婦時代に、5年かけて国土交通省の点検要領のデータベースを作成し高評価をうける。
その後、2018年3月にオングリット株式会社(現・オングリットホールディングス株式会社)を設立。
現在は「テクノロジーを活用し世界中の人へ働く機会と豊かさを提供する」というミッションを達成するため奮闘中。
自社システムを使用し専門の業界業務を未経験者が行なえるようにした、
就職弱者の雇用創出を目的とするアウトソーシング事業を展開しています。
弊社の強みは、実際に現場での点検業務と開発を行っているからところであり、
現場に寄り添った製品を生み出せます。現在拠点は5カ所で、
今後も活動の拠点を増やせるよう精進して参ります。
創業の経緯について教えてください。
専業主婦時代に、シングルマザーの友人から子育てをしながら働ける場所が少ないと相談をうけた一方、建設業界に務めている夫からは土木業界の深刻な人不足について聞きました。そこで、「働きたくても働けない人」と「人手不足」をマッチングすることで、お互いの課題を解決できないかと考えたことが起業のきっかけです。起業前に数年かけて、国交省や自治体の点検要領をデータベース化し、土木業界の未経験者でも操作が可能な図面化のソフトを開発しました。その図面化ソフトを使用し、2017年に留学生5名で福岡市の橋梁130橋を試験的に図面化したところ、そのクオリティの高さに自治体から高評価を頂くことができました。そして2018年に起業に至りました。
様々なビジネスコンテストに出場し、SDGsの項目である、雇用促進による「貧困をなくそう」やインフラの維持管理による「住み続けられるまちづくり」への取組みを公開し、多くの賞を受賞することができました。
一番感銘を受けた書籍とその理由は?
一番の本を選ぶのは難しかったのですが、「やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける」という本は、私がインスピレーションを受けて社名に「グリット」を採用するほど影響を受けました。この本に出会ったのは、起業前に本屋さんでたまたま手に取ったのがきっかけでした。グリットの要素である情熱や粘り強さは、今でも当社が大切にしている部分です。
特に創業期には、知り合いもいない福岡で起業したということもあり、さまざまなビジネスプランコンテストに出場しながら、取引先とのご縁を作ってきました。また、初年度から二名のスタッフを採用していたので、資金を回すためにも創業期は融資が必要でした。ただ、実績がない中で銀行から融資を受けるのはハードルが高く、とても苦労しました。
そんな中、ビジコンで弊社の取組みを熱心に聞いて下さった銀行OBの方と出会うことができ、融資窓口を御紹介頂きました。毎日銀行に粘り強く通ってプレゼンし続け融資を受けることができました。そういった苦難を乗り越えたことで、初年度から黒字の着地となりました。これらは本書から得た情熱と粘り強さがあったからこそ為せたことだと考えています。
読書はどのように仕事に生かせたでしょうか。
この本には、意図的に毎日3時間から5時間ほど学習していけば、その分野で一流の人になれると記載がありました。これを読んだ私は、3時間程で良いのであれば、学習を積みることで自分にもできるのではと感じました。起業当初から現在に至るまで、常に新しい情報や技術を取り入れ学んでいきたいという考えを大事にするようになりました。新しい開発品を作っていく際も、固定概念を捨てて新しい情報や技術を取り入れ、新たな価値を創造していきたいという活力に繋がっており、今の当社があるのは、本書が導いてくれているように感じています。
本書が当社の社名の由来になっていることを社員にも共有しており、事務所の中にもこの本を置いています。当社の社員数が約15名の時に、ミッション・バリューにあたる業務方針を定めたのですが、実は私が全て決めたわけではなく、社員と一緒にワークショップを行い、ポストイットで貼り出して決めました。その後、プロのライターさんに言葉を整理してもらい、「失敗してもかまわない、『逃げないこと』『諦めないこと』『やり遂げること』『真摯に向き合うこと』が、社名の由来【GRIT】に繋がる」として、ミッション・バリューを決定いたしました。このように本書は当社の由来だけではなく、企業文化の一部となりました。
経営において重要としている考え方を教えてください。
当社はロボットやAIを開発している会社のため、技術やテクノロジーに視線が集中しがちですが、重要なのは、なぜその技術が必要なのかという背景部分にまで目を向けることだと考えています。現代はたくさんの社会課題や環境問題が存在する時代です。その中で我々が解決しようとしている課題は何なのか、それを解決してどのような未来を作りたいのかという部分は常に頭に置いておく必要があります。それでも、開発を進めていくにつれてたまに根本の課題からそれてしまうこともあるので、社員にも何が一番重要かはたびたび落とし込むようにしています。
最後に、御社の未来構想や従業員への期待について教えてください。
現在当社は国内のインフラ業界の課題と地域における雇用の問題を解決しようとしています。特に九州地方を中心に拠点を設け、鹿児島や熊本では立地協定を締結することで官民連携しながら展開を行っています。またインフラ業界のDX支援も行っており、インフラ業界と雇用問題への取り組みを弊社の開発品を武器に、全国に進出していきたいと考えています。最終的には、海外展開もしていきたいと考えているので、途上国のインフラ構築や雇用の創出はもちろんのこと、先進国でもインフラ設備の老朽化は問題になっているので、支援できるよう今後も事業拡大していきます。
社員に対しては、一人一人の強みをさらに伸ばしてもらいたいと思います。当社はダイバーシティ経営にも力を入れており、さまざまな人に働いてもらっています。障がい者の方、外国籍の方、大企業を引退されたシニア層の方など、それぞれが異なる強みを持っています。例えば、若手社員がシニア層の方にパソコンを教えて、シニア層の方が若手社員に専門領域の知識を教えるという光景もよく見られます。このように個人が得意な部分を伸ばして存分に力を発揮し、それを社内でも活かしてもらえればと思います。
- 氏名
- 森川 春菜(もりかわ はるな)
- 会社名
- オングリットホールディングス株式会社
- 役職
- 代表取締役