◉就職活動において、採用側に立ってみて感じたこと

就活という事が以前に比べてより一層難しい、大掛かりで大変なイベントだと認識されるようになり、商売の種にもなっているようです。苦労されている学生の方も多いでしょうし、苦い思い出だとして捉えてらっしゃる若手ビジネスマン、ウーマンの方も多いのかもしれません。

しかし、お分かりの方も多いでしょうが、就活という短期間のプロセスだけを持って貴方の人生が少しでも否定された、認められなかったという認識をお持ちであるのならば、それはかなり意味のないものだと思います。
ここで私が申し上げたいことは、志望の会社に内定されたのであればそれは非常にめでたいことであると思う反面、もしも志望の会社に内定されなかったとしてもそれは文字通り縁がなかったというだけで、それ以上の意味合いはないということです。

いかに人を採用するということが難しいか、特に社会人としてのトラックレコードがない学生の方を採用することが難しいかについて端的に表すのが、リクルーター制度の成否についてではないでしょうか。
私自身、いわゆる上位私立大の体育会系の学生の方達に1位から10位くらいまで順位をつけて、某広告代理店さんや有力商社さん達ではなく、自社(大手証券会社)に来て頂けるようあの手この手を尽くして採用活動をさせて頂きました。しかし、その後の内定者の皆さんの入社後の活躍度合いを見ますと、いかに学生の時点で彼・彼女たちのポテンシャルを見抜くことが難しいかと痛感させられます。

◉採用に置ける学歴の価値

また、学歴というものについてはなおさら疑念を抱かざるにはいられなくなってきています。いわゆる高学歴の卒業者がほとんどを占める会社に当時は就職しましたが、その後10年以上を経て活躍している人たちの学歴について改めて注目してみましても、社会人として成功を収めている彼らのバックグラウンドとしての新たな情報として加えられるだけでそこに何らかの共通項が見つかることはありません。

私が大手企業の人事部の採用担当者だとしたら、有名大学の方を優先的に採用する理由は中成功型(失敗例ではない)社員を養成できる可能性を極力増やすという方針以上のものではないでしょう。本当に段違いで優秀な人を採用したいのであれば地方の国立、私立大で一番輝いている人を入社していただけるように口説いてくのが付加価値でないかと思います。

少し話はズレますが、このご時世で、学歴を全面に押し出してご自身を語られるのであれば、その大学で首席であったとかでない限りは、MBAだろうが何だろうがあまりその人のバリューを表すものとしては価値がないことは想像に難くないかもしれません。
何もむやみやたらに学歴を否定するものではなく、以前も書きましたようにお金が成功した方達の証としての価値を持ち合わすことが多い反面、お金自体がその方達の成功を表すものではないことが多いことと同じであると思います。

◉採用担当者の資質の問題

また採用者の資質、想いというものにも今となっては懐疑的になってしまいます。

就職活動の当時、某外資系証券さんの最終面接で突然「今株を勧めるとしたら1銘柄何を勧める?」という質問をされたことがありました。自身の不勉強を棚に上げるわけではないのですが、当然パニックに陥りました。
しかしながら、驚いたことに一緒に面接を受けていた東大生の方はさらりと「自分がスペイン留学の際にインターンをしていたVOLVOを勧めます。」という驚愕の返答とともに、いかにその留学が良い経験であり、VOLVOが良い会社であったかを話すではないですか!
考える時間があったものの自分自身の経験では全く気の利いた答えも出せず、苦し紛れに「吉本興業です。」と答え、さんざん突っ込まれ目も当てられない状況になったことを思い出します。

しかしながら、経験も知識もない1学生に対してプロがそのような質問をすることのバカバカしさと申しますか、学生のポテンシャルを図るものとしていかにズレていたかということは、今となってみれば明らかです。
そんな面接官に、自分自身の価値が適切に測られるはずがなかったいうことを切に思います。

何でこのようなことを今さら書くかと申しますと、就活のプロセスで悩んでいる方がいらっしゃれば、それは、あくまで長い人生のほんの些細な一部分であり、その後でどういう風に新しい環境や自分自身と向き合っていくかという事の方が遥かに重要だからです。
先ほども申し上げましたが、縁の有る無しという表現が最もピッタリと当てはまり、それ以上でも以下でもありません。

いわゆる日本の大手企業に就職したとしても、その会社が今後数十年に渡って順調に成長する可能性の方が低いでしょう。また、人事制度が劇的に変わらない限りは、どこかのタイミングで転職か独立する方が間違いなく金銭的成功は得られます。

若者の皆様、人生はここからが長いはずです。常に自己を律して前向きに努力し続けることの方が、短期的に就活で成功したように見えることよりも遥かに大事なことだと思いますよ。

BY N.S