この記事は2023年10月27日に「第一生命経済研究所」で公開された「都区部版・日銀基調的インフレ率の試算(2023/10) 」を一部編集し、転載したものです。
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(画像=sommart/stock.adobe.com)
3指標の伸び率はピークアウト
以前のレポートで試算した東京都区部版の基調的インフレ率3指標について、本日公表の10月都区部CPIを用いて計算した。刈込平均値(全国ウェイト換算)は9月:+3.4%→10月:+2.9%、加重中央値(全国ウェイト換算)は9月:+1.3%→10月:+1.1%、最頻値は9月:3.6%→10月:+2.9%となった(いずれも前年比)。3指標の伸び率は揃って低下した。
24日に日銀が公表した9月全国CPIを用いた3指標は、刈込平均値が+3.4%、加重中央値が+2.0%、最頻値が+2.8%となった。最頻値の伸び率が低下の一方、刈込平均・加重中央値が上昇し、3指標の伸び率がいずれも2%に到達した。ただし、今回の10月都区部CPIの試算値はいずれの値もピークアウトを示唆。10月の全国CPIの試算値も低下に向かう可能性が高い。
筆者は輸入物価影響の剥落や値上げ疲れによる家計消費の鈍化で本稿試算の基調的なインフレ率も低下に向かうとみてきたが、今回の結果はそれと整合的なものだ。次の焦点はこれらの指標の落ち着きどころとなる。市場ではマイナス金利の早期解除観測も浮上しているが、先日公表のさくらレポート等でも示されているように、大幅な賃上げ継続に対する企業の姿勢はまだまちまちの状態とみられる。次回春闘賃上げ率がさらに高まっていくかどうかはまだ予断を許さない状況である。
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(画像=第一生命経済研究所)
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(画像=第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 星野 卓也