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(画像=ブルーイノベーション株式会社)
熊田 貴之(くまだ たかゆき)
ブルーイノベーション株式会社 代表取締役社長 最高執行役員
2001年、大学院在学中に、専門の海岸防災コンサルタントサービス事業を開始。
2008年より、ドローン事業を開始。災害の原因を究明するために、ドローンを活用した海岸モニタリングシステムを東京大学と開発。
その後、ドローンを活用した数々のソリューション開発、産官学のドローンのコンソーシアム(JUIDA)の立上げに参画し、ドローンパイロット育成等、ドローン産業拡大に貢献しながら事業を拡大。2023年12月東証グロース市場に上場。
ブルーイノベーション株式会社
複数のドローン・ロボットを遠隔で制御し、統合管理するためのベースプラットフォームであるBlue Earth Platform(BEP)を軸に、以下ソリューションを開発・提供しています。
・点検ソリューション(プラント・工場・公共インフラなどのスマート点検、3D モデル化など)
・教育ソリューション(法人の人材育成、パイロット管理システム提供など)
・物流ソリューション(ドローンポートシステム提供など)
・ネクストソリューション(監視、清掃システム提供など)

目次

  1. 社長のこれまでの変遷について教えてください。
  2. 一番感銘を受けた書籍とその理由は?
  3. 読書はどのように仕事に活かせたでしょうか。
  4. 経営において重要としている考え方を教えてください。
  5. 最後に、御社の未来構想や従業員への期待について教えてください。

社長のこれまでの変遷について教えてください。

当社の創業は、私の父がサラリーマンを辞めて立ち上げた会社から始まりました。父は以前、香港で働いており、私も小学校6年生から中学3年生まで香港に滞在していました。帰国後、日本の企業が中国で工場を設立しようというニーズが多くなり、父はそれらの支援を行うことを目的に会社を立ち上げました。

私自身は、環境問題に関心があったので、大学院で海岸環境や海岸防災対策の研究を行っていました。研究を進めていく中で、苦学生だったこともあり、生活費工面のために研究に関連する仕事を大学院など好きな場所で行いたいと考えていました。先輩OBに相談したところ、一個人に仕事を発注するのは難しいため、会社という受皿があるなら仕事を発注しても良いかもしれないという話が出ました。そのため父の会社を活用して、海岸防災に関するコンサルティング事業を受託することになりました。これが弊社の前身になります。

最初のうちは大学発のベンチャーとして、建設コンサルタント会社に調査や解析結果を提供するようなことをやっていました。当時は、災害直後の空撮写真がなかなか入手できず、凧やラジコンで写真を撮っていました。そんな中、当時、東京大学航空宇宙工学科の鈴木教授が、無人の飛行機を研究開発していました。私たちはその技術を自社の海岸線のモニタリングに活用できないかと考え、東京大学と共同で研究開発を行うようになりました。これが現在の当社のドローン事業の走りです。

このように最初は海岸防災が主な事業でしたが、必要に駆られ徐々にドローンの研究も行っていくようになりました。また、最初は数名のメンバーで開始しましたが、アマゾンのドローンによる配送のプロモーションビデオが世界的に注目されたことや、無人機が法律上航空機の扱いに変わったことなどが、ドローン事業のニーズを高め、その後徐々に事業が拡大していき、今では80人の規模になり、ドローンを活用したソリューション事業をメインで展開しています。

一番感銘を受けた書籍とその理由は?

私が特に印象に残っているのは、『ビジョナリーカンパニー』です。学生時代に読んだときはあまりピンとこなかったのですが、現在改めて読み返すと、本当に素晴らしい本だと感じます。当時の学生の感性と経営者の今では全然違うので、改めてその価値を理解できるようになりました。この本との出会いは父の勧めでした。

私の父は本をよく読む人で、私が大学時代にビジョナリーカンパニーやエクセレントカンパニーなど様々な本を勧めてくれました。最近、私も経営者として様々な問題に直面しており、いろいろな研修を受けたり学んでいるなかで、必要性を感じ改めて読み返してもやはり名著であると感じたため今回挙げました。

読書はどのように仕事に活かせたでしょうか。

この本は、当社の方針でもある自律分散という考え方において役に立ちました。現在、社会やビジネスのトレンドとして、中央集権型のシステムから、ブロックチェーンのような自律分散化したシステムへと移行していると感じます。私たちの会社は、ドローンやロボティクス関係のソリューションを提供する会社として、ハードウェアメーカーではなく、ソフトウェアを中心としており、特にドローンやロボットのシステムの基盤部分を作り、お客様に広く使っていただくことを目指しています。その中で私たちのシステムも、この自律分散化に沿って進めていきたいと考えています。

この自律分散化の考え方は組織運営にも反映されており、トップダウンで物事を進めないという「ビジョナリーカンパニー」の考え方を活かしていると考えています。

経営において重要としている考え方を教えてください。

トップダウンで考察・判断をするのではなく、社員に考えてもらうということを大切にしています。私は、一人ひとりが自ら考えて自ら行動する自律分散型の最強の組織を目指しています。大きなマインドが共有されつつ、やり方やメソッドは各自が自分たちで見つけていくような形の組織が理想で、「ビジョナリーカンパニー」を通して改めて大切だと感じました。

創業期には、トップダウンで考察・判断・指示を出すことが多かったですが、経営者としては、自分ですべてやって新しい商品やサービスを生み出すのではなく、社員自ら自走できる強靭な組織を作ることが大切だと実感しています。

確かに自律分散型の組織を目指すうえで、課題や難しさはありますが、新しい取り組みを積極的に取り入れています。具体的には、朝会で「今日のお題はこれです」と、私が一番考えてもらいたいことや聞きたいことを、社員に質問するようにしています。以前は、ついついソリューション提供をしてしまうことが多かったのですが、最近は社員に考える機会を提供することで、彼らが自立して物事に取り組む力や思考力を身につけることができると考えています。

また、思考力やマインド共有の一環で現在、役員から毎週月曜日に、ビデオやテキストでメッセージを配信しています。私は3年間社長メッセージを行っていましたが、最近は役員4人でローテーション組んで、それぞれ専門分野でメッセージを配信しています。その中で、私は過去に読んだ本のエッセンスを紹介したり、他の役員もいい本やコンテンツをシェアするようにしています。自分で学んだことを自分の言葉でアウトプットをしていく、これが経営者や組織運営において重要だと感じています。

最後に、御社の未来構想や従業員への期待について教えてください。

ブルーイノベーション株式会社
「物流用ドローンポートの設備要件に関する国際標準規格(ISO5491)」に準拠したドローンポート
(画像=ブルーイノベーション株式会社)

今後世界では、社会の発展や都市のデジタル化によってさらにドローンやロボティクスの普及が進んでいくと考えています。私が思う未来の一つは、スマートシティやスーパーシティ、デジタル田園都市国家構想で言われている地域ごとに自律分散化したまちづくりがどんどん加速していくと予想しています。その中の、都市を構成する都市OSというシステムにおいて私たちのドローン、ロボティクスを繋ぐ基盤システムが、広く貢献をしていくことが期待しています。

また、私たちが開発してきたドローンポート(ドローンの離発着場)システムは、2023年6月に国際標準の規格化に成功しました。これはドローン業界でも画期的なことです。今後、スマートシティやスーパーシティにおいて、ドローンポートシステムが空のインフラとして整備され、ドローン物流などで貢献していくことが期待されます。加えて、現在はアプリを使って人がドローンやロボットを操作する世界ですが、近い将来いずれ、脳波などで指示を出すことで、人とドローンやロボットがつながる世界が実現できることをイメージしています。

社員に対しては、どんどん技術や経営を 学んで独立していってほしいと考えています。社員が学び合いながら育成していくことが重要だと考えており、現在は社内大学という仕組みを作り、会社の中で勉強会を開いており、いずれ社員が経営者になり、会社内で起業していく形を目指しています。M&Aというかたちではなく、会社から独立して事業会社として成長し、経営者やエンジニアが育っていくような組織形態を目指し、いつでも マインドはつながっている組織でありたいと考えています。

氏名
熊田 貴之(くまだ たかゆき)
会社名
ブルーイノベーション株式会社
役職
代表取締役社長 最高執行役員