1987年、旧 東京リース(現 東京センチュリー)へ入社。システム開発や経営企画、人事に携わる。
2012年人事部長、2019年執行役員に就任。
2021年4月より現職。従業員一人ひとりの声を受け止め、職場環境の整備や制度の改善を進めることにより、働くことに誇りと幸せを感じられるような会社を目指す。
目次
人的資本経営に対する基本方針とこれまでの取り組み
当社のサステナビリティ経営は、SDGsに対応する5つのマテリアリティ(重要課題)の推進であり、その一つが「人材力強化につながる職場環境整備」です。目まぐるしく変化する時代の中で、当社が進化を続け、持続的な成長を実現するために、従業員一人ひとりがいきいきと働ける職場環境の整備に取り組んでいます。
これまでの取り組みを振り返ってみますと、多様な人材が活躍できる組織風土の醸成を図るため、2015年に「ダイバーシティ基本方針」を策定し、多様な人材が一人ひとりの個性や価値観といった多様性を公平に受け入れ、認め、尊重し合う、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進しています。
また、2019年にはキャリアデザイン室を設置し、職業人生を通じたキャリアを自らが主体となって構想・設計し、実現していくことを積極的に支援しています。人材育成においては、階層別研修などの指名研修に加え、ビジネススキルだけにとらわれないさまざまな学びを自らが選択して学んでいくオンライン学習や事業分野ごとに実施している実践的かつ専門的な研修など、多様な研修機会を設け、さまざまな角度からスキルアップの機会を提供することにより、当社の成長を支え、次世代の経営を担う人材の育成を推進しています。採用においては、キャリアデザイン室の発足以前は新卒採用が主体でありましたが、当社も世の中の変化に応じてさまざまな事業を展開するため、多様な経験を積んだ方々を採用するようになりました。これにより、従業員の多様性が増し、お客様のニーズに対応できるようになりました。
さらに、2019年から「従業員意識調査」を開始し、結果の課題分析と今後の取り組みについて、役員研修会や経営会議、取締役会で討議を重ね、重要な経営課題として対応を進めてきています。 一例として、「TC Biz Challenge」 (新規事業提案制度)や自らの意思でキャリア形成にチャレンジできる「キャリアチャレンジ制度」(社内公募制度)の導入、働き方改革としてのオフィス環境の整備、時間休制度・時差勤務制度・在宅勤務制度の導入、出産・育児、介護に携わる従業員への積極的な支援による両立支援制度の充実、2021年に策定した健康経営基本方針にもとづく役職員とその家族の健康保持・増進への取り組みなど、エンゲージメントの向上につながるさまざまな施策を進めてきています。
人的資本経営の取り組みで苦労した点と、乗り越えるための施策
人的資本経営の主役は従業員であると考えています。経営の意思が従業員に伝わり、従業員の考えや思いをきちんと受け止められる風土と経営陣と従業員が相互に理解・信頼したうえでの対話やコミュニケーションが重要であると考えています。ただ、事業領域が拡大し、それぞれの事業の専門性が高まるにつれ、縦割り組織の課題でもある組織間のコミュニケーション不足や横のつながりの希薄化などが社内で指摘されるようになってきました。
そこで、2022年度からは従業員同士や経営トップと従業員がコミュニケーションを活性化する交流の場として「TC-Mee+(ミータス)」を開始しました。TC-Mee+(ミータス)では、年間を通じて様々なテーマにてディスカッションが行われており、参加者からは「他の事業分野の理解が進んだ、新たな人間関係ができた、キャリア形成の新しいアイディアが得られた」など、参加してよかったという声が多くあがっています。また、社長と従業員が直接コミュニケーションを図る機会も設け、例えば「10年後の東京センチュリーをどのような会社にしていきたいか」などをテーマに自由に討議を行っています。従業員の声は経営陣にとっての宝であり、地道な取り組みですが、今後も継続していく考えです。また、営業現場発のメンタープログラムや若手意見交換会「Rookie Hub」など、従業員同士も積極的にコミュニケーションを活性化させ、ウェルビーイングな職場づくりが進んできています。
取り組みを行う前後の変化や取り組み後の反響
これまでの様々な取り組みについて、2022年度に実施した従業員意識調査の結果は肯定的回答率が63%となっています。また、ダイバーシティ推進アンケートや各種研修アンケートの結果および人事面談等における意見等を見ていますと、従業員からは一定の評価は得られていると考えています。
また、外部からの評価として、健康経営優良法人のホワイト500や準なでしこ銘柄、プラチナくるみんといった認定をいただきました。もちろん、これらの認定のためだけに意図的に人的資本経営に取り組んでいたわけではありませんが、女性活躍や従業員一人ひとりの働き方に真剣に向き合い、働きやすさを推進したからこそ得られたものだと思います。
しかしながら、価値観が多様化する中においては、会社に求めるものも多様化してきています。すべての従業員が満足する制度や仕組みづくりは難しくなってきているのも事実ですが、これからも、従業員が安心・安全に働くことのできる職場環境づくりやウェルビーイング向上に資する施策や制度の改善を進めていきます。そして、一人でも多くの従業員が当社で働くことに誇りと幸せを感じられるような会社にしていきたいと考えています。
今後の展望と従業員に対して期待すること
2023年度からスタートした「中期経営計画2027」のテーマは、「自らを変革し、変化を創造する」(TC Transformation and Sustainable Growth)です。当社グループが社会に必要な存在であり続けるためには、持続的な価値創造を続けていくことが重要であり、そのためには、変化に対応するだけではなく自らが変革し、積極的に変化の創造に向けて挑戦していくことが必要です。
当社の未来を背負う若い世代や高い専門性をもつ人材など、多様な人材に入社いただき、従業員一人ひとりが自ら求める知識・スキルを身に着けさらに専門性を高めてもらえるよう、中計では、人材確保・育成に向けた投資額をこれまでの2倍以上(2022年度約4億円、2027年度8億円以上)にすることを表明し、積極的に人的資本への投資を行っていきます。
また、能力・スキルを向上させることに加え、これまで以上に現場力を高めていく必要があります。2009年4月以降、当社の経営理念や事業の方向性に共感する200人を超えるキャリア採用の方々に入社いただいています。これにより、各現場においてコミュニケーションが活発化し、キャリア採用の方々の持つ多様な知識・スキル・ノウハウなどが融合され、組織や職場の一体感が高まることによって、これまでにない新しい商品やサービスが生まれていくと考えています。
ステークホルダーの皆様へのメッセージ
「中期経営計画2027」においては、「TCX=TC Transformation」というビジョンを打ち出し、「ポートフォリオ」・「グリーン」「デジタル」「人材・組織」という4つの「X(Transformation)」に果敢に取り組み、稼ぐ力の強化とESGの推進を図ることで、持続的な成長に繋げていくことを目指しています。
10年、20年先を考えた場合には、「人材・組織(HRX)」を一つ一つ実現していくことが当社の持続的成長と中長期の企業価値向上に不可欠と認識しており、特に重要なポイントになると考えています。従業員一人ひとりが変化の創造に向けて挑戦し、お客様の課題解決に資する人材に成長するよう、会社として必要な投資を惜しまず、学びと活躍の機会を提供し、企業価値の向上につなげていきたいと考えています。
当社グループは今後とも、ステークホルダーの皆様に信頼されるサービス・事業パートナーとして、経営理念である循環型経済社会の実現に貢献するとともに、お客様の課題解決に向けた挑戦を続けていきます。今後とも引き続き変わらぬご支援をよろしくお願い申し上げます。
- 氏名
- 乙部 俊幸(おとべ としゆき)
- 会社名
- 東京センチュリー株式会社
- 役職
- 執行役員 人事部門長 兼 総務部門長