この記事は2024年2月4日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「GENDA【9166・グロース】」を一部編集し、転載したものです。


創業5年目の2023年7月に上場
M&Aを中心とした戦略で業績拡大

GENDAは、アミューズメント施設の運営や、クレーンゲーム等マシンのレンタルなどを行なっている。2020年、「SEGA」ブランドで、ゲームセンターを展開してきたセガ社を買収。M&Aを積極的に行ない、2024年第2四半期の業績は、全てにおいて過去最高を更新している。同社が目指す、「世界一のエンターテイメント企業」になるための成長戦略などに迫る。

▼申 真衣 社長

GENDA【9166・グロース】
(画像=株主手帳)

「プライズゲーム」に着目
資本取引やM&Aで事業を拡大

GENDA(9166)は、2018年創業のアミューズメントを中心としたエンタメ企業群を傘下に収める、純粋持株会社である。

クレーンゲームなどを総称して「プライズゲーム」と呼ぶが、同社は創業時これに着目した。ゲームセンター市場は、06年の約7000億円をピークに一時落ち込み、14年以降、市場の回復とともにプライズゲームも伸長。20年、21年はコロナ禍で市場全体は再び縮小したものの、21年のプライズゲーム売上高は過去最高を更新した。これには日本のアニメ人気や、商品獲得後の中古市場サービスへの出品、SNSへの投稿などで、プライズゲームに対する意識の変化が影響している。国内アニメ配信市場は、14年以降7年間で4・4倍という急成長だ。ゲームセンター市場はアニメ需要と親和性を持ち、成長を継続することができる市場だ。同社が目指すところは、アニメコンテンツとアニメファンを結ぶオフラインプラットフォーマーである。

23年1月期第2四半期連結業績の売上高は、461億円。売上高の9割以上を占めるのが、アミューズメント施設の運営である。「GiGO(ギーゴ)」の屋号で、ゲーム機やUFOキャッチャー、プリクラなどを設置。商業施設内をはじめ、都市型・ロードサイドに250施設以上を運営する。

ゲームセンターの運営を主軸としているように見えるが、実際はゲームセンター関連企業などのM&Aを専門とした企業だ。23年10月までに、15社とM&Aおよび資本取引。またプロダクト開発に携わるプロフェッショナルが多数在籍しており、アナログなゲームセンター市場のDXを推進しているテクノロジーカンパニーでもある。

GENDA【9166・グロース】
(画像=株主手帳)

18年5月に創業
1期目から上場意識

社長の申真衣氏は東京大学経済学部を卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。11年勤めた頃、産休中に書籍『LIFE SHIFT』を読破して、〝人生100年時代の行動戦略〟について考える。その時に当時のイオンファンタジー(4343)社長でGENDA共同創業者の片岡尚氏に出会う。

「全く違うキャリアの人と仕事を始めた方が広がりもあると思い、出会ったその日から、世界一の会社を作ろう!と盛り上がって意気投合しました」(申真衣社長)

18年3月に出会い、その年の5月には創業というスピードだった。

まずはゲームセンターに置くゲーム機を購入して、ゲームセンターにレンタルするビジネスからスタートした。

「設備投資になるので、銀行の融資がつきやすい。少額ですが、少しずつ黒字化をしていけばいつかはIPOもできると思って始めました」(同氏)

1期目から監査法人を入れ、上場を目指していたという同社。創業翌月18年6月には、エンタメ企業に対するセールスプロモーションを支援する、エスピーエスエス社の株式を100%取得。その翌年にはラウンドワン(4680)と共に、米国に合弁会社を設立した。22年1月に、セガ エンタテインメント社を完全子会社化した件は記憶に新しいだろう。

「片岡がイオンファンタジーの代表をしていた頃からセガサミーHD(6460)の里見氏と面識がありました。片岡が同社を退職する際に、セガをお売りになることがあればお声がけください、と話していたところ本当に連絡をいただいたのです」(同氏)

そもそも斜陽産業に見られがちなゲームセンター事業。しかし同社は創業時にプライズゲームの成長点に着眼した点が大きい。資金調達は、申氏の人脈やスポンサー、投資家などの協力、投資会社ミダスキャピタル社が優秀な人材のネットワークを広げていった。

1年目はわずか4、5人でスタート。現在グループ全体では約4000人の従業員がいるが、ホールディングスとしては、半分がエンジニア、半分がM&Aなどの実務を行なう管理チームの約40人体制だ。M&Aにて既存モデルを自分たちの仕様に変え、独自の販売戦略を展開している。

業界のDXを加速
今後は海外にも拡大予定

2024年1月期第2四半期時点では、M&Aソーシング件数が51件。既に年度目標の50件を達成している。ゲームセンター関連企業は1970年代から80年代にかけて創業をした企業が多く、事業承継のタイミングでもある。M&Aをして目指すところは何か。

「業界は未だファックスやコピー機を使用して印刷するなど、アナログな世界観です。そこを業務用アプリなどを開発して、生産性を向上させ業界のDXを加速していきます」(同氏)

今後は自社のネットワークを海外にも拡大して、グループ全体の収益を上げていく予定だ。今は創業5年目で成長フェーズにあり、企業価値の最大化を優先して配当はないが、株主の観点からも見て都度判断していく方針だ。


2023年1月期 連結業績

売上高460億9,100万円20.9%増
営業利益42億4,400万円5.5%増
経常利益40億1,100万円1.8%増
当期純利益34億9,400万円28.1%増

2024年1月期 連結業績予想

売上高530億円15.0%増
営業利益50億円17.8%増
経常利益50億円24.6%増
当期純利益40億円14.5%増

※株主手帳24年2月号発売日時点

申 真衣 社長
Profile◉申 真衣 社長(しん・まい)
1984年7月生まれ。大阪府出身。2007年、ゴールドマンサックス証券入社。2018年、ミダスエンターテインメント(現GENDA)を創業。19年、同社代表取締役社長就任(現任)