不動産投資でREITはおすすめ?他の不動産投資と比較
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目次

  1. REITとは不動産投資信託のこと
  2. REITの仕組み
  3. REIT投資のメリットと注意点(リスク)について
  4. REITの主な投資方法3つ
  5. 新NISAを活用したREIT投資
  6. REIT以外の不動産投資の方法
  7. まとめ

REIT(リート:不動産投資信託)は不動産(賃貸物件)に投資し、その収益(賃料・売却益)を投資家に分配する投資商品です。

投資方法によっては数千円から投資できるので、これから不動産投資を始める人におすすめです。

本記事では、REITの仕組みやメリット・デメリット、REITへの投資方法、REITと他の不動産投資の違いついて、わかりやすく説明します。不動産投資に興味のある人は、ぜひご一読ください。

REITとは不動産投資信託のこと

REIT(リート)は「Real Estate Investment Trust」の略で、「不動産投資信託」と訳されます。

REITは、不動産投資法人が多くの投資家から資金を集めて、その資金でオフィスビルやマンション、商業施設など複数の不動産を購入し、そこから得られる賃貸収入や保有不動産の売却益を投資家に分配する投資商品です。

1960年に米国で始まり、日本では2001年に東京証券取引所にJ-REIT市場が開設されました。2024年1月時点で58銘柄が上場しています。

J-REITには投資対象をオフィスビルや倉庫などセクターに絞った銘柄や、セクターを絞らない総合型などがあります。

REITの仕組み

REITは投資信託の一種です。投資家は不動産投資法人が発行する「投資証券」を購入することで、REITが保有している不動産の賃貸収入や売却益を分配金として受け取ることができます。

下の図は、REITの仕組みを簡単に表したものです。

REITは多くの投資家から資金を集め、その資金を使って不動産(オフィスビル、マンション、商業施設など)を購入し、運用します。

不動産を購入するための資金は投資家からの資金の他、銀行などの金融機関からの借入や投資法人債(企業が発行する社債のようなもの)を発行して調達します。

REITが保有する不動産の運用・管理は投資法人(REIT)が委託した会社が行うため、投資家が賃料の回収や不動産のメンテナンスなどを行う必要はありません。

投資家は、REITが保有・運用する不動産からの賃料収入や不動産の売却で得た利益を分配金として定期的に受け取ります(運用状況によっては分配金が出ない場合もあります)。

以上がREITの大まかな仕組みです。

REIT投資のメリットと注意点(リスク)について

REITへ投資する前に、メリットと注意点(リスク)を理解しておくことが大切です。それぞれ解説していきますので最後までご覧ください。

REIT投資4つのメリット

まずはREIT投資のメリットから解説していきます。REIT投資のメリットは以下に4つになります。

1.少額から不動産投資ができる
1つ目のメリットは、少額から不動産投資ができることです。一般的な投資信託(公募型投資信託)を利用した場合は、ワンコイン(500円)で始めることもできます。

2.複数の不動産に分散投資ができる
2つ目は、REITに投資をすることで複数の不動産に分散して投資できることです。

3.換金性(流動性)が高い
3つ目は、換金性(流動性)の高さです。J-REITの銘柄は東京証券取引所に上場されているので、株式のように売買ができます。

4.REIT税制により高い分配金利回りが期待できる
4つ目のメリットは、REIT税制により高い分配金利回りが期待できることです。

REIT税制では、利益の大部分を分配金として支払う場合、法人税が免除されます(J-REITの場合は利益の90%以上)。

そのため、投資家は比較的高い分配金利回りを期待できます。ちなみに、J-REIT全体の予想分配金利回りは4.43%(2024年1月現在)です。

REIT投資の注意点(リスク)3つ

続いてはREIT投資の注意点(リスク)を見ていきましょう。REIT投資の注意点は以下の3つです。

1. 空室リスクがある
1つ目の注意点は、REITの主な収入は賃料収入なので、空室率が高くなると利益が減り、分配金も減るリスクがあることです。

2. 火災や地震などの災害リスクがある
2つ目は、火災や地震などで保有している不動産が使用できなくなり、賃料収入を得られなくなるリスクです。それにより、分配金が減ることがあります。

3.金利変動リスクがある
3つ目は、金利変動(金利上昇)のリスクです。

REITは銀行からの借入や投資法人債を発行して資金を集めるため、金利上昇により資金調達コストが上がると利益が圧迫されます。それにより、分配金が減るリスクがあります。

また、REITの分配金利回りは長期金利と比較されるため、長期金利が上昇してREITの分配金利回REITのスプレッド(利回り差)が縮小すると、REITより安全な国債などの債券に資金が移動し、REITの価格が下がるリスクもあります。

REITの主な投資方法3つ

REITの主な投資方法を解説します。投資方法は以下の3つになります。それぞれの投資方法の特徴やメリット・デメリットも解説します。

1.個別のJ-REIT(不動投資信託)を利用した投資

個別のJ-REITへの投資では、東京証券取引所に上場されている銘柄を選ぶことになります。

J-REITの銘柄は、投資するセクター(オフィスビルやマンション、倉庫など)別に分かれているものや、いくつかのセクターを組み合わせたものなどがあります。

多くのREITは数十件の物件(不動産)を保有していますので、1つの銘柄への投資でも分散投資ができます。投資単位は1口からで、価格は数万~数10万円と銘柄によって異なります。

銘柄選びでは、分配金利回りやNAV倍率など参考にします。

NVA倍率は「1口あたりの純資産(NAV)÷投資口価格」で計算し、株式のPBRと同じように1倍以下は割安と判断されます。

株式と同じよう市場価格で売買ができ、指値注文や成行注文も可能です。指値注文は、価格を指定する注文方法です。

買い注文の場合の指値は上限価格、売り注文の場合の指値は下限価格になります。成行注文は価格を指定しない注文方法です。

個別J-REITへ投資するメリット

個別J-REITへ投資するメリットは以下の3つです。

1.自分で銘柄を選んで投資できる
1つ目のメリットは、株式と同様に投資したい銘柄を自分で選べることです。なお、ETFや投資信託の銘柄選びはファンドマネージャーが行います。

2.少額で分散投資ができる
2つ目は、少額で複数の不動産に分散投資ができることです。

3.市場取引なので流動性が高い
3つ目は、多くの投資家が売買する市場取引なので流動性や換金性が高いことです。

個別REITへ投資するデメリット

個別REITへ投資するデメリットは以下の2つです。

1. 投資家自身が銘柄を選ぶ必要がある
1つ目のデメリットは、銘柄選択を投資家自身が行うため、目論見書や運用報告書などを参考にして個々のREITを調べる手間がかかることです。

2. 1つセクターに集中投資する場合はリスクがある
2つ目は、1つセクター(オフィスビルやマンション、商業施設など)に集中投資を行うREITは、そのセクターの業績や市況が悪くなるとREITの価格も下落することです。

2.ETF(上場投資信託)を利用したREIT投資

ETF(上場投資信託)を利用してREITに投資することができます。ETFは、東京証券市場などの市場に上場されている投資信託です。

公募型投資信託と違い、株式のように市場価格での取引が可能で、指値注文や成行注文もできます。

REITで運用するETFは27銘柄(2024年3月1日現在)あり、多いのは東証REIT指数に連動する運用を目指すファンドです。

それ以外に、S&P先進国REIT指数など海外の指数に連動するものや、東証REIT Core指数や東証REITオフィスフォーカス指数など東証REIT指数よりも銘柄を絞り込んだものがあります。

ETFを利用したREITへの投資のメリット3つ

ETFを利用したREITへの投資のメリットは、以下の3つです。

1.東証REIT全体へ投資できる
1つ目のメリットは、東証REIT指数に連動する運用ができるため分散効果が高いことです。

2.東証REITのセクターを絞った投資ができる
2つ目は、東証REIT指数以外の個々のセクターにフォーカスした指数に連動するファンドを選択できることです。

3.海外REITへの投資ができる
3つ目は、海外REITの指数に連動するファンドに投資できることです。

ETFを利用したREITへの投資のデメリット

ETFを利用したREITへの投資のデメリットは、以下の4つです。

ただし、2つ目以降はREIT投資でのデメリットではなく、ETFと公募型投資信託を比較した場合のデメリットです。

1.自分で銘柄を選べない
1つ目にデメリットは、自分で銘柄を選べないことです。銘柄選びは、ETFを運用するファンドマネージャーが行います。

2. 積立投資がやりにくい
2つ目は、公募型投資信託が口数指定・金額指定で積立ができるのに対して、ETFは口数指定での積立になるため、毎月同額の投資ができないことです。

3. 自動的に再投資ができない

3つ目は、公募型投資信託のように自動的に分配金を投資することができないため、投資家が手動で再投資を行わなければならないことです。

4.購入できる金融機関が限られる
4つ目は、ETFの購入先が証券会社に限られることです。

3.公募投資信託を利用したREIT投資

公募投資信託は、証券会社以外の銀行などでも購入できる一般的な投資信託です。

一般的な投資信託と同じように、1万円以下から投資できます。金融機関によってはワンコイン(500円)で投資できるところもあるため、少額からREIT投資を始められます。

決算(分配)頻度はファンドによって異なり、年1回、年2回、隔月(年6回)、毎月(年12回)などがあります。

購入時や換金時の価格(基準価額)はブラインド方式で算出されるため、個別REITやETFのように市場の値動きを見ながら売買を行うことはできません。

REITを投資対象にした投資信託にはREITのみに投資するものと、他の資産(株式や債券など)と組み合わせたバランス型があります。

投資対象をREITに絞った投資信託

投資対象をREITに絞った投資信託では、先進国という大きな括り以外に国別(日本、米国、オーストラリアなど)や地域別(北米、欧州、アジアなど)を投資対象としたファンドを選ぶこともできます。

個別REITのようにセクターを絞った運用はせず、さまざまなセクター(オフィスビル、マンション、商業施設、工場、倉庫など)のREITを組み入れた運用を行います。  

株式や債券と一緒にREITへ投資

投資信託でREITへ投資する方法の一つに、バランスファンドを利用するものがあります。

バランスファンドは、株式や債券、REITなど複数の資産に分散して投資するファンドです。国内外の資産に投資するバランスファンドの多くは、REITも組み入れています。

バランスファンドの主な特徴は、資産(株式・債券・REIT)や国・地域、通貨を分散することで価格変動リスクを抑えた運用を目指す点と、定期的に資産配分のリバランスを行う点です。

リバランスとは、運用によって変化した資産配分を当初の資産配分へ戻すことです。価格の上昇により増えた資産を売り、その資金で他の資産を購入して当初の資産配分へ戻します。

公募型投資信託を利用した場合のメリット

公募型投資信託を利用した場合のメリットは以下の3つです。

1.銘柄の選択を運用のプロ(ファンドマネージャー)に任せられる
1つ目のメリットは、ファンドマネージャーが銘柄を選択するため、投資家はその手間が省けることです。

個別のREIT投資では、目論見書や運用報告書など参考にして投資家自身が銘柄を選ぶ必要があります。

2.複数のREITへの分散投資ができる
2つ目は、投資信託が複数のREITへ分散投資を行うことです。そのため多くの不動産に投資でき、分散効果を高められます。

3. 海外REITへの投資が容易
3つ目は、米国や先進国など海外REITを投資対象としたファンドが多いことです。そのため、容易に海外REITへ投資できます。

公募型投資信託を利用した場合のデメリット

公募型投資信託を利用した場合のデメリットは以下の3つです。

1.業種を絞った運用がしづらい
1つ目のデメリットは、日本、米国、先進国などの地域を対象にして運用するファンドが多いため、セクター(オフィスビル、マンション、倉庫など)を絞った投資しづらいことです。

2.海外REITには為替変動リスクがある
2つ目は、海外REITを投資対象としたファンドには為替変動リスクがあることです。

円高になった場合は、基準価額を下げる要因になります。ただし、為替ヘッジ「あり」のファンドを選ぶことで、このデメリットを軽減することは可能です。

3. 投資比率の高い国・地域の影響を受ける
3つ目は、海外REITを投資対象としたファンドで投資比率の高い国(米国)の値動きの影響が大きいことです。

新NISAを活用したREIT投資

2024年1月にスタートした新NISAでは、これまでの「つみたてNISA」「一般NISA」のどちらかを選ぶ仕組みが「つみたて投資枠」「成長投資枠」に変わり、併用できるようになりました。

ただし、「つみたて投資枠」の「つみたて投資枠対象商品」は株を組み入れたファンドに限定されているため、バランス型ファンドから選択することになります。

「成長投資枠」にはそのような制限がないため、個別REIT、ETF、REITに投資対象を絞ったファンドへの投資も可能です。新NISAでのREIT投資は、選択肢が多い「成長投資枠」で行うのがおすすめです。

NISAを活用するメリットは、分配金や売却益にかかる税金(約20%)が非課税になることです。分配金利回りの高いREITでは、このメリットはかなり大きいといえるでしょう。

デメリットは、NISAでは損失が出ても課税口座(特定口座・一般口座)との損益通算や繰越控除ができないことです。

メリットとデメリットを比べると、分配金や売却益にかかる税金が非課税になるメリットのほうが勝っているといえるでしょう。

REIT以外の不動産投資の方法

REIT以外の不動産投資の方法に、「不動産小口化商品」と「ワンルームマンション投資」があります。

ここでは、不動産小口化商品とワンルームマンション投資の仕組み・特徴、REIT投資との違いについて解説します。

1.不動産小口化商品とは

不動産小口化商品は、1つの物件(不動産)を小口に分割して複数の投資家へ販売する投資商品です。

不動産の運営は「不動産特定事業法」に基づいて行われ、「匿名組合型」「任意組合型」「賃貸型」の3種類があります。

1口の投資金額は匿名組合型が数万円~、任意組合型と賃貸型が100万円~と、匿名組合型は少額から投資ができます。

物件は不動産のプロが選び、管理・運営は事業者が行いますので、投資家は手間がかかりません。投資家は、賃料や売却益から分配金を受け取ります。

また、任意組合型では投資家が所有権を持つため、相続対策にも利用されています。

2.REITと不動産小口化商品の違い3つ

REITと不動産小口化商品の主な違いは、以下の3つです。

1. REITは不動産1つの銘柄に投資|不動産小口化商品は1つの物件への投資
1つ目は、REITは1つの銘柄に投資することで複数の物件に分散投資が行われるのに対して、不動産小口化商品は1つの物件への投資になることです。

2.REITは投資する物件を不動産投資法人が決定|不動産小口化商品は投資家が契約
2つ目は、REITは投資する物件を不動産投資法人が決めるのに対して、不動産小口化商品は投資家が物件を確認して契約できることです。

3. REIT市場で行われるため換金性が高い|不動産小口化商品は換金性が低い
3つ目は、REITの売買はREIT市場で行われるため換金性が高いことに対して、取引市場がない不動産小口化商品は換金性が低いことです。

3.ワンルームマンション投資

ワンルームマンション投資は、物件を購入して賃貸することで収益を得る投資方法です。

投資金額が数千万円と高額になりますので、投資用不動産ローンを利用するのが一般的です。そのため、初期投資(自己資金)を抑えて投資を始められます。

ワンルームマンション投資の魅力は、毎月の家賃収入によって安定的な収益を期待できることです。ただし、家賃収入=収益とはならない点に注意が必要です。

ワンルームマンション投資の収益は、家賃収入から諸経費(管理費や修繕積立金、固定資産税、ローンの返済)を差し引いた金額になります。

主なリスクは、空室リスクや家賃滞納リスク、災害(火災、地震など)リスクです。

4.REITとワンルームマンション投資の違い4つ

REITとワンルームマンション投資の主な違いは、以下の4つです。

1. REITは投資証券を購入|ワンルームマンション投資は物件を所有
1つ目は、REITへの投資は「投資証券」を購入して行うのに対して、ワンルームマンション投資は投資家が物件(ワンルーム)を所有することです。

2. REITは複数の物件へ分散投資|ワンルームマンション投資は1つの物件に投資
2つ目は、REITは複数の物件へ分散投資を行いますが、ワンルームマンション投資は1つの物件に投資することです。

3. REITは自己資金で投資|ワンルームマンション投資はローンを利用し投資
3つ目は、REITは自己資金で投資するのに対し、ワンルームマンション投資はローンを利用できるためレバレッジをかけられることです。

4. REITは換金性が高い|ワンルームマンションの換金性は低い
4つ目は、REITの売買はREIT市場で行われるため換金性が高いのに対して、取引市場がないワンルームマンションの換金性は低いことです。

まとめ

REITは、手間をかけずに不動産投資ができる投資商品です。J-REITは株式と同じように売買ができ、また投資信託を利用した投資もできます。

これから不動産投資を始めたい人が取り組みやすい投資方法といえます。この記事を参考にして、REITの各投資方法のメリット・デメリットを比較し、ご自身に最適な投資方法を選んでください。

(提供:ACNコラム